HOME > BOOK >

『科学が作られているとき――人類学的考察』

ブルーノ・ラトゥール 〔Latour,Bruno〕) 1987 Science in Action,Harvard University Press,
=19990310 川崎 勝・高田 紀代志 訳 ,産業図書,473p

last update:20100201

このHP経由で購入すると寄付されます

■ブルーノ・ラトゥール 〔Latour,Bruno〕) 1987 Science in Action,Harvard University Press,
=19990310 川崎 勝・高田 紀代志 訳 ,『科学が作られているとき――人類学的考察』産業図書,473p ISBN-10:4782801211 \4515 [amazon][kinokuniya] ※ **

■目次

序章 パンドラのブラックボックスを開く
 (1)入り口を求めて
 (2)十分が決して十分ではないとき
 (3)方法の第一法則

第1部 弱いレトリックから強いレトリックへ

第1章 文献
 パートA 論争
  (1)肯定的様相と否定的様相
  (2)事実構築の集団的命運
 パートB 論争が燃え上がるとき、文献は専門的になる
  (1) 友人を取り込む
  (2) 以前のテクストに言及する
  (3) 後のテクストによって言及されている。
 パートC 敵対的な状況からの攻撃に耐えるテクストを書くこと
  (1) 論文は自らを強化する
  (2) 位置取りの戦術
    (a)積み重ね
    (b演出と構成
    (c詐欺
  (3) 方法の第二規則
 結論、数、もっと多くの数、

第2章 実験室
 パートA テクストから事物へ:対決
  (1) 銘刻
  (2) スポークパーソン
  (3) 強さの試験
 パートB 対抗-実験室を構築する
  (1) より多くのブラックボックスを借用する
  (2) アクターに代表者を裏切らせる
  (3) 新たな同盟相手を形作る
  (4) 実験室 対 実験室  パートC 自然を(に)訴える
  (1) 「われわれとともにある自然」
  (2) 双面のヤヌスのダブル・トーク
  (3) 方法の第三規則

第2部 弱い点から強い要塞へ
 
第3章 機械
 イントロダクション:事実構築者の困惑
 パートA 関心を翻訳する
  (1)翻訳1:私はあなたが欲することを欲する
  (2)翻訳2:私はそれを欲するが、あなたは?
  (3)翻訳3:あなたが短い迂回路を作ってくれさえすれば…
  (4)翻訳4:関心と目的を仕切り直す
   (A)戦術1:目的を置換する
   (B)戦術2:新しい目的を考案する
   (C)戦術3:新しい集団を考案する
   (D)戦術4:迂回路を見えないように実現する
   (E)戦術5:貢献度の審理に勝つ
  (5)翻訳5:必要不可欠なものになる
 パートB 関心を抱いた集団を列に保つ
  (1)鎖はその中の最も弱い環と同じだけしか強くない
  (2)新たな予期せぬ同盟相手を結びつける
  (3)力の策略
 パートC 拡散のモデル 対 翻訳のモデル
  (1)慣性力…
  (2)弱い連関と強い連関
  (3)方法の第四規則

第4章 インサイダーズ・アウト
 パートA 他者に実験室に関心を抱かせる
  (1)誰もが科学者や技術者抜きでやっていけるとき
   (A)科学者がまだ職業でなかったとき
   (B)必須ではない通過点
  (2)実験室を必要不可欠にする
  (3)テクノサイエンスは何からなるのか
   (A)「結局、誰が本当に科学を作っているのか?」
   (B) すべての者が協力するようになる
 パートB 同盟相手とリソースを算定する
  (1)科学者と技術者をあてにする
  (2)科学者や技術者をあてにしない
  (3)方法の第五法則

第3部 短いネットワークから長いネットワークへ

第5章 理性の法廷
 パートA 合理性の試験
  (1)世界は非合理的精神で満ちている
  (2)非合理性の裁判の結果を逆転する
  (3)歪められた信念をまっすぐにする
 パートB 社会論理学
  (1)他の人々の主張に反対し続ける
  (2)何と何が結びついているのか?
  (3)関連の地図を描く
 パートC 誰が固い事実を必要とするのか?
  (1)なぜやわらかい事実ではないのか?
  (2)事実を固くする
  (3)方法の第六法則:規模の問題にすぎない

第6章 計算の中心
 プロローグ 野生の思考の家畜化
 パートA 遠隔作用
  (1)蓄積のサイクル
  (2)世界の動員
  (3)時空間を構築する
 パートB 計算の中心
  (1)すべての同盟相手を固く結び付ける
   (A)兵站の問題を解決する
   (B)ついに計算する…
  (2)形式主義の何が問題なのか?
   (A)「抽象的理論」を一掃する
   (B) なぜ形式がそれほど問題なのか:方法の第七法則
 パートC 測定学
  (1)ネットワークをさらに拡大する
  (2)測定学の少数の連鎖によって結ばれて
  (3)他の少数の紙を並び替える人々について

 付録1 方法の規則
 付録2 原理

訳者解説
訳者あとがき

■引用

「さて、一方には天気についての信念(beliefs)があり、他方には天気についての知識がある。本書においにおいてはじめてこの二つの言葉に注意を払うことになるが、なぜこれほど後になったのかを理解することが必要である。それは、強力なネットワークの内側にいる科学者がどのようにその外側を見ているのかを特徴付けるためにこそである。科学者の見解では、信念はより主観的であり、すなわち天気自体についてと同じくらい天気に関して考えていりることについて語っている。知識はそれとは逆に客観的であるか、あるいは少なくとも、いつもより客観的になろうとする傾向があり、天気がどうであるかについて語っているのであって、天気予報アナウンサーが誰であるの課については語っていない。たとえ何らかの信念が知識と一致することがあろうとも、それは偶然であり、信念を主観的でなくすものではない。ネットワークの内側の人々の目からすれば、天候とその変化について知る唯一の方法は気候学者の見出したことを学ぶことであり、天候についてのあれこれの信念をまだいたいている人は単に学識がないだけである。」312−313

「原因に対する問いはまず結果の存在が証明されなければ答えるに値しない。もしもこの非合理性というのが単にネットワークの内側から外側を――このネットワークの存在、維持、拡張に必要なリソースはすべてかっこに入れたあとで――見たことの結果に過ぎないのであれば、「なぜ」人々は非合理的な事柄を信じているのかという問いに対して発見すべき特別の要因は存在しないだろう。非科学的信念を説明しようとする知識社会学のような学問分野を有していることも、もし非合理性についてのすべての問いが、それで提起された場所で生み出された単なる「人工物」であるならば、なんら役に立たないであろう。 非対称性を避けるひとつの方法は、「非合理的信念」や「非合理的行動」というのは常に「告発」の結果である、という点を考慮することである。馬鹿馬鹿しい信念に対して馬鹿馬鹿しい説明を請求に見出す代わりに、こう問うつもりである。告発者は誰か、証人は誰か、陪審員はどう選ばれたのか、どのような証拠が正当なのか、等々。これらは非合理性の告発が行われる裁判の全枠組みを構成している。馬の前に馬車を置いたり、正当な手続きを欠いて人を告発する代わりに、われわれは非合理性の裁判の後を追うつもりである。」318

「他者の非合理性に関する多くの物語のひとつが語られたときに、なぜ人々が奇妙な信念を保持しているのかに関する説明を求める代わりに、まずなすべきことは、「結果を逆転するように試みる」ことである。これは以下の四つの手段凹地、少なくともひとつでいつでも実行である。」

(1)同じ構造をめぐって構築された別の物語、代わりに「物語の語り手の属する社会」に適用される物語を語る。すなわち話し手の社会に属する社会に適応する。(たとえば、アフリカにおけるイギリス人の人類学者から、イギリスにおけるアフリカ人の人類学者へと移行する。)

(2)推論に穴があると思われるときにはいつでも「文脈」を想起させるようにして同じ物語を再び物語、どのような種類のなじみのない話題に推論が適用されているのかを示す(たとえば、トロブリアンド諸島民のレトリックに、島の複雑な土地保有システムを付け加える)。

(3)同じ物語を、もっと長く続けることにより、異なった枠組みに入れて再び語る。こうして枠組みを改めることにより、通常、ほとんどの「説明」は使い物にならなくなる。なぜなら、ある特定の時間の長さをとれば、同じ説明が反対の事例にも与えられるからである。

(4)同じように論理規則が破られる別の物語、ただし信念に関してではなく、物語の語り手の抱いている知識に関して論理規則が破られる場合、を語る。そして聴衆たちは、塩分たちの判断が規則を破ったことにではなく、信念の「新奇さ」に基づいていることに気づく。」 326

「しばしば「言語構造」、「分類法」、「文化」、「パラダイム」、「社会」と呼ばれているものは、すべて互いを定義するのに用いることができる。これらは、論争において主張と結び付いて現われる要素の集合を酔う枠して用いられる。それらは常に非常にあいまいに定義される。なぜなら、「文化」、「パラダイム」、「社会」といった言葉は、論争が存在するときにのみ、論争が続く限りにおいて、反対者が行使する強さに依拠してのみ、正確な意味を手に入れるからである。…言い換えると、他の人々と衝突する前にある「文化」の中に生き、ある「パラダイム」を共有し、ある「社会」に属することがないのである。こうした言葉が現れるのは、長いネットワークを構築し、他の人々の道を横切ることのひとつの結果である。」344


■書評・紹介

■言及



*作成:近藤 宏
UP: 20110201 
身体×世界:関連書籍  ◇BOOK
TOP HOME (http://www.arsvi.com)