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『悪魔の精神病棟――報徳会宇都宮病院』

安井 健彦 19860915 三一書房,186p.


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安井 健彦 19860915 『悪魔の精神病棟――報徳会宇都宮病院』,三一書房,186p. ISBN-10: 4380862151 ISBN-13: 978-4380862151 1200 [amazon][kinokuniya] ※ m. m01h1984.

■目次

プロローグ やって来た救急車
第一章 ようこそ、北関東医療刑務所へ
 1 看護室での予感
 2 「奴等は地獄へも行かれないぜ」
 3 死んだ女性に襲いかかる
 4 別世界から来た宇宙人
 5 追いたてられ殴られる毎日
 6 「病気」でないのに拘禁されたまま
 7 院長様の「御回診」
第二章 「医療」という名の犯罪
 1 東大の医者は研究材料をほしがる
 2 ガンバコ退院
 3 これがデイスカッションか
 4 警察と親密な指定病院
 5 悪事の露見を恐れる
 6 ロボトミー患者に出会った
 7 バナナの皮を喰う根岸
 8 ウサギと言って二十日ネズミを喰わせる
第三章 地獄の看護人たち
 1 脱走の誘惑
 2 「金ノコの刃」が発見された
 3 血まみれの保護室
 4 「よく生きていたな」
 5 看護人にへつらう配膳
 6 禁書『ルポ精神病棟』
 7 モロが死んだ
 8 「宇病コレクション」の酸鼻
第四章 悪の巨塔の構造
 1 精神病院は儲かるそうだ
 2 温度差六〇度で働く「患者」
 3 三〇〇億を超える石川の資産
 4 石川一族の「財産」とは何か
 5 宇都宮南署次長の権力
第五章 ニセ医者の仮面を剥ぐ
 1 石川的特別待遇は床屋行き
 2 白木敦授の御来院
 3 病名はなんでもつく
 4 コンピユータで診断する偉れえ先生
 5 「報徳帝国」危機のおののき
 6 リンチ殺人の動かぬ証拠をつかむ
エピローグ 未診の診断の果てに

■引用

第四章 悪の巨塔の構造
 1 精神病院は儲かるそうだ
 「最初望んだほどには儲けの延びない現状を分沂して、ヒロオ、文之進は、患者さえ塘加すれば儲かるのだと結論づけた。
 四二、三年頃には、関東一円の福祉事務所や保健所に「アル中歓迎」と印刷されたビラが郵送されていた。「アルコール中毒で困っている患者さんがあれば、お電話下さい。車でお迎えにあがります。報徳会宇都宮病院」などとあった。世界でもこのようなビラは例が無かろう。しかし、各福祉事務所、保健所は嬉しがった。何処の病院でもアル中の入院などはあまり喜ばない。病院はニ、三力月で退院させなくてはならないし、又直ぐに飲みつぶれて、同じ保健所や福祉事務所の係員は、「またかあ。参ったなあ!」と、同じ患者を、頭を下げて病院へ連れて行かねばならない。そして、何処の病院でも、何回も入退院している者の入院などは歓迎されないのだ。下手すると、何カ所も、入院させて下さいと、頼んで回ることとなるのだ。その代りに、病院の方から来て下さり、迎えにまで行くというのだ。結果は、病院開設後五、六年で、もう入院患者四〇〇人の大病院にまで肥大化したのだった。
 しかし、この非常識なビラは、栃精協の元会長故森玄俊や現会長秋山医師達の手から県庁へ提出されたが反応は無かった。  日本精神病浣協会の理事会の各理事達から、栃精協の秋山達に手渡されたこのビラは、栃精協から栃木県庁へと提出されたが、他の訴えと同様に、栃木県庁ではもみ消されてしまったのだ。その上、やるだけやって自分達の責任は果したと、森、秋山の栃精協、中核メンバーも、これを彼等に呈示し、批難した日精協の理事である精神病院長達も、これ以上には約二〇年問、知りつつ何も手を出さなか<0131<ったのだ。」(安井健彦[1986:131-132])

■言及

◆立岩 真也 2013/12/10 『造反有理――精神医療現代史へ』,青土社,433p. ISBN-10: 4791767446 ISBN-13: 978-4791767441 2800+ [amazon][kinokuniya] ※ m.

 「本人による本はいろいろと出てはおり、それを集めて分析しようという試みもないではない(松原[2013])が、社会運動に関わる部分、とくにその過去がわかるものは多くない。「友の会」の本が二冊(友の会編[1974][1981])、吉田おさみの本は第5章で紹介する。他に例えば宇都宮病院に入院していた安井[1986]。聞き取りが可能ならそれを行なう必要があり、そうした記録も使い、私には記すことのできない病者側の生活・運動が記述・分析されるべきである。桐原[2013a][2013b][2013c]等、そろそろと始められている。」


UP: 20130811 REV:20131226
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