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『心と身体――原一元論の構図』

坂本 百大 19860828 岩波書店,266p.


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■坂本 百大 19860828 『心と身体――原一元論の構図』,岩波書店,266p. ISBN-10:4000008021 ISBN-13:978-4000008020 [amazon][kinokuniya] ※ be

■内容(「紀伊国屋書店」より)
生命諸科学や情報科学の急速な進展は,心‐身関係をめぐる哲学に大きな衝撃を与えた.本書は,生命と意識にかかわる哲学的言説の変容を,他分野との対話をめざして明快に解説する.来るべき第三世代の生命哲学とは.

■目次

序 精神と身体のリズム

T 心と身体―心身問題の哲学と科学
心身問題の現在
意識の流れと因果性
内省の客観性
「私」とは誰か
脳と心
原一元論の構図
自由医師の虚構
注意の風景
意識において先立つもの
感情の対象と原因

U 意識と内観
歴史的背景
観測問題と実証的精神
意識とは何か―新しい定義への示唆
意識へ接近する化学的方法―内観の重要性
内観の構造
意識の「心理・哲学」的課題

V 生命の哲学―その第三世代
問題の源流
心身問題と生命現象―意識と還元
第三世代生命哲学の視点
生命科学の行く方

■引用

 私は「私の心」と「私の身体」とを所有している。そして私はこの両者を統合して巧みに操っている。
 誰もが疑いなく直観的に抱いているこの心―身関係のイメージはまことに良識的と言うべきである。しかし、この良識的な語り方は実は、「心身問題」という、哲学最大の迷路の出入口でもあるのである。
 心身問題は近世哲学の創生とともに現われ、そして、現在に至るまで哲学の中心的課題であり続けて来た。しかし、この問題は同時に、いまや心理学に対する重大な問いかけでもあるように思われる。むしろ、心理学は心身問題の重大さを知るが故にそれを回避するべく哲学から独立し、それから離れて行ったものと見るべきであるかもしれない。(pD)

 「心の働き」とか「心の作用」とかいう表現はごく卑近なものである。しかし、その最も典型的な具体例と見られていた「意志」というものが存在しないというのではない。ただこの場合「存在する」という表現の意味が甚だ微妙なものが存在しないというのではない。ただこの場合「存在する」という表現の意味が微妙なものとなるのである。仮に、それが心の働きとして存在するとしても、その働きはその存在が物理化学的に実証されるというような種類のものではない。意志とは全く別の目的(主として社会的目的)のために仮構された一種の構成概念である。ただ、自由選択の自覚の存在という、人間の心理の一つの特性がその仮構に重々しい実在感を与えているに過ぎない。この意味で、自由意志というものを「心の働き」として、科学的な因果系列の中に、行動を導く原因として含めることは所詮、無理なことであったのである。(p140)


*作成:櫻井 浩子
UP:20080901 REV:
monism|一元論 / dualism|二元論  ◇生命倫理  ◇身体×世界:関連書籍 1980'  ◇BOOK
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