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『着たかもしれない制服――わが子は脳死宣告。そのとき医師の私は…。』

杉本 健郎・杉本 裕好・杉本 千尋 19860325 波書房,205p.


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杉本 健郎・杉本 裕好・杉本 千尋  19860325 『着たかもしれない制服――わが子は脳死宣告。そのとき医師の私は…。』,波書房,205p. ISBN-10:4816411968 ISBN-13:978-4816411960 \1366 [amazon] [kinokuniya] ※

■内容

医師杉本健郎の長男剛亮は、交通事故で病院にかつぎ込まれ、「脳死」の宣告を受けた。数週間後には、小学校の入学式を控えていた。この時から、杉本一家は苦悩のドン底に追いやられた。医師杉本健郎はこれまで、自分の意思で治療行為を中断することはなかった。人工呼吸器を外すことを拒否、治療の続行を願った―。本書は、長男剛亮の「脳死」をめぐって、父健郎、母裕好、姉千尋の3人が自らの心の葛藤と愛の軌跡を綴った記録である。「脳死」に対する日本の医療体制の在り方にも問題を投げかけている。

■目次

小さな新聞記事

〔父より〕病室での78時間(杉本健郎)

プロローグ
絶望からの始まり
医師の目、父親の目
ドン底の中で見た光
自発呼吸よ戻ってくれ
小学校の制服
脳死の宣告
やさしい看護婦さん
点滴数を勝手に倍に
安らぎある病室
体の一部でも生きていて!
さようなら剛亮

〔母より〕息子よ静かに眠れ(杉本裕好)

プロローグ
一枚の百円玉
わが子の悲鳴が聞こえる
その時、朝は穏やかに明けたのに……
「死」をめぐって思い出されること
そして、死
通夜と葬儀
帰らざる日常
誕生・命名・生育をめぐって
ピンクのハンカチとぬいぐるみ
作るの大好き、食べるの大好き
大きくなったら何になる
絵本の世界
エピローグ

〔姉より〕大好きなごうすけへ(杉本千尋)

ごうすけ ぜったいに生きかえりや
けんか
うれしかったこと
お正月
ごう君が死んだなんて、信じられへん

〔医師として〕「脳死」を考える(杉本健郎)

経歴と専門
脳死とは
私達の経験から
臓器提供へ至った経緯
死の場面
家族の対応
判定の際のポイント
法制化の動きについて
新「脳死判定」基準について
終わりに

あとがき


■引用

 「ここで一つはっきりさせておきたいことがある。それは脳死について日本の医師のすべてが共通した認識を持っているとはかぎらない、ということである。とくに、一番よくそういった場面に遭遇する脳外科医と、そうでない一般の医師とのあいだにおいて認識の相違があるように思う。
 私達小児科医についていえば、およそ次のような意見に代表されると思う。
 昭和五十八年の日本小児神経学会において、夜間集会のかたちで「脳死」についての討論会が行われた。話題提供者としては、杏林大脳外科の牧教授それに朝日新聞の藤田氏が出席された。フロアの参加者は小児神経科を専門とする医師がすべてであった。
 三人の話題提供の基本的な討論姿勢は、脳死の存在を認め、それを具体的な医療行為に結びつけようとするものであった。つまり脳死の診断とともに人工呼吸器をとめて、できれば移植の方向へもっていこうとする考え方である。
 それに対して小児神経学の立場としては、小児に大人の基準を普遍化してあてはめるのは問題があること、かりに診断がついたとしても、それによって医療行為を変更する必要がないという考え方であり、討論は始めから噛み合わなかった。この集会はついに結論を見ることがなく終わってしまった。
 同じように「神経」の分野に携わる者のあいだでさえ、このように脳死に対する考え方や対応の仕方が違っているのである。これを医師全体に広げれば、もっと違いの出てくることが当然考えられる。」(pp170-1)


■書評・紹介

■言及



*作成:三野 宏治 
UP:20100112 REV:
杉本 健郎  ◇臓器移植 /脳死  ◇身体×世界:関連書籍  ◇BOOK
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