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『危険社会――新しい近代への道』

Beck, Ulrich 1986 RISIKOGESELLSCHAFT : Auf dem Weg in eine andere Moderne, Suhrkamp Verlag

19981020 東 廉・伊藤 美登里訳 法政大学出版局 492p.


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■Beck, Ulrich 1986 RISIKOGESELLSCHAFT : Auf dem Weg in eine andere Moderne, Suhrkamp Verlag=19981020 東 廉・伊藤 美登里訳『危険社会――新しい近代への道』,法政大学出版局 492p. ISBN-10: 4588006096 ISBN-13: 978-4588006098 5250  [amazon]

■内容(「BOOK」データベースより)
チェルノブイリ原発事故、ダイオキシン…、致命的な環境破壊を増殖させる社会のメカニズムを分析。エコロジー運動の展開にも多大に貢献した欧米でのベスト セラー。

内容(「MARC」データベースより)
チェルノブイリ原発事故やダイオキシンなど、致命的な環境破壊をもたらす可能性のある現代の危険とそれを生み出し増大させる社会の仕組みとかかわりを追 究。科学と政治のあり方から「危険」のメカニズムを分析する。改訳再刊。

■目次

はじめに
序論

第一部 文明という火山――危険社会の輪郭
 第一章 富の分配と危険の分配の論理について
  1 自然科学から見た有害物質の分配と社会の危険状況
  2 近代化に伴う危険は科学的知識に依存する
  3 階級に特有の危険
  4 文明に伴う危険が地球的規模で拡大する
  5 二つの時代と二つの文化――危険を知覚することと危険が発生することとの関連
  6 世界社会というユートピア
 第二章 危険社会における政治的知識論
  1 文明は貧困化するか
  2 科学の危険に対する誤り、まやかしおよび過失とそれらに対する真実――科学の合理性と社会の合理性の対立をめぐって
  3 社会が抱く危機意識――危険を間接的にも経験していない
  4 近代化に伴う危険が認知されると政治的原動力が発生する
  5 展望――二十世紀の自然と社会

第二部 社会的不平等の個人化――産業社会の生活形態の脱伝統化
 第三章 階級と階層の彼方
  1 生活形態の文化的進化
  2 個人化と階級形成――カール・マルクスとマックス・ウェーバー
  3 伝統的な大集団が終焉を迎えるか
  4 個人化、大量失業、そして新たなる貧困
  5 将来の展開についてのシナリオ
 第四章 わたしはわたし――家族の内と外における男女関係
  1 男性と女性の情況
  2 産業社会は、近代的な身分社会である
  3 女性役割と男性役割からの解放か
  4 不平等の意識化――選択可能性と選択の強要
  5 将来の展開のシナリオ
 第五章 生活情況と生き方のモデル――その個人化、制度化、標準化
  1 個人化の分析的諸次元
  2 ドイツ連邦共和国において個人化を推進する力の特殊性
  3 生き方のモデルの制度化
 第六章 職業労働の脱標準化――職業教育と仕事の未来
  1 標準化された完全就業システムから柔軟で多様な部分就業システムへ
  2 幽霊駅――職業につけない職業教育
  3 教育による機会の分配はなされているのか

第三部 自己内省的な近代化――科学と政治が普遍化している
 第一部と第二部の回顧と第三部の展望
 第七章 科学は真理と啓蒙から遠く離れてしまったか――自己内省化そして科学技術発展への批判
  1 単純な科学化と自己内省的な科学化
  2 科学による認識の独占が解体される
  3 応用上のタブーと理論上のタブー
  4 「副作用」の評価可能性について
 第八章 政治の枠がとり払われる――危険社会において政治的コントロールと技術―経済的変化とはいかなる関係に立つか
  1 近代化における政治とサブ政治
  2 政治システムの機能喪失を論難する
  3 政治を無力化する民主化
  4 政治文化と技術発展――進歩のコンセンサスの終焉か
  5 サブ政治としての医学――極端な例
  6 テクノロジー政策のジレンマ
  7 企業合理化というサブ政治
  8 要約と展望――三つのシナリオ

 訳者あとがき
 著者紹介
 主な邦語訳文献 巻末(19)
 参考文献 巻末(1)

■引用

「(三)「階級と関連しない」社会的不平等が存在するという傾向は、大量失業がどのように、どのような人に分配されるかということにおいて、はっきりと示 される。一方で、長期失業者の数が増加するとともに、労働市場から何度も締め出されたかあるいはそもそも一度も労働市場に参入したことがない者の数が増加 する。他方で、失業者数は恒常的――二百万人をはるかに超える――であるのに対し、失業登録件数や失業に見舞われた人の数は一定ではない。一九七四年から 一九八三年の間に、約千二百五十万人(あるいは勤労者の三分の一)が、一回かそれ以上の失業を経験した。同時に、届け出られた失業と届け出られていない失 業(主婦、若者、早期退職者)との間の灰色領域(グレーゾーン)が、さらには勤務と部分就業〔第六章1の訳注二参照〕(勤務時間と勤務形態の弾力化)との 間の灰色領域が拡大した。長期的にせよ短期的にせよ一時的な失業が広範に分布している事実は、長期失業者の増大や失業と勤務との新たな混合形態と関連して いる。このような事態と階級文化の生活連関とは、まったく対応していない。社会的不平等の尖鋭化と社会的不平等の個人化とは、相互に密接に関係している。 この結果、システムの問題が、個人の機能不全へと変えられ、政治的には解消される。脱伝統化された生活形態においては、個人と社会とが新たにある種の直接 的連関をもつような事態が発生する。また、同時に個人の病と社会の危機が直接的連関をもつという状況が始まる。それは、社会の危機が個人的なものとしてあ らわれ、社会的なものとしては、ただ条件付きで間接的にしか知覚されえなくなるからである。」(p.140)

「(七)それに従って、ここでは、個人化は、歴史的に矛盾に満ちた社会化過程として、理解される。登場しつつある個人化された生存情況が、集団性をもつこ とと標準化されていることを概観することは困難である。しかしながら、それを概観することはまさにこの矛盾を際立たせ意識化することである。そうすること によって、新しい社会文化的な共同性を登場させることができるのである。例えば、近代化にともなう危険と危機的情況が深刻化するに従って、市民運動や社会 運動が形成されてくる。あるいは、個人化過程の進展にともなって、(物質的、空間的、時間的という意味でも、社会関係の形成という意味でも)「ほんの少し の自分の人生」に対する期待が系統立って呼び覚まされる。もっとも、その期待は、まさに個人化の展開過程において、社会的および政治的な制約や抵抗に出く わす。このようにして常に新しい探求運動が登場する。その運動は、一部には、さまざまなオルタナティブ・カルチャーや若者のサブカルチャーという形態で、 社会関係や自分の人生や身体とのつきあい方を実験している。共同性は、とりわけ、抗議という形態と抗議の経験において形造られる。この抗議は、私的なるも の、すなわち「自分自身の人生」への行政や産業による不当な干渉によって燃え上がり、これらの攻撃に対抗して発展する。この意味において、新しい社会運動 (環境運動、平和運動、女性運動)は、一方で危険社会における新しい危機的情況と、登場してきた男女間の矛盾の表現である。他方において、新しい社会運動 がどのような形態で政治化されるか、それが安定するかしないかは、脱伝統化され個人化された生活世界における社会的アイデンティティ形成過程に依存してい るのである。」(p.142-143)

「(…)福祉国家の規制とともに雇用労働が拡大し、社会階級が個人化されていった。この発展は、情け深い資本主義篤志家(労働者階級は、資本主義篤志家に よって没落させられたのだが)による、没落した労働者階級への贈り物ではない。この発展は、闘い取られたものであり、闘争の産物、激しい労働運動の産物で ある。もっとも、この労働運動は、それが成功することによって、運動自身のもつ諸条件をも変えてしまった。労働運動の(本来の)目標が貫徹されたことによ り、その成功の前提条件も変えられてしまった。そしてひょっとしたら、労働運動が少なくとも「労働者」の運動として存続することを危うくするかもしれな い。」(p.158)

「二 しかし、個人の情況の分化は、同時に、高度の標準化をともなう。より正確に言うならこうである。個人化を引き起こす媒体は、標準化をも引き起こす。 このことは、それぞれやり方は異なるものの、市場や貨幣や法や移動性や教育等にあてはまる。成立しつつある個人の情況は、ますます、(労働)市場に依存す るようになる。個人の情況は、細部に至るまで生存(保障)を完全に市場に依存するようになる。それは、福祉国家が大分進んでから後になって出現する現象で ある。このような個人の情況は、貫徹された市場社会および労働市場社会において登場してきている。この市場社会および労働市場社会は、伝統的な扶助制度を まったくかあるいはほとんど前提としていない。すでに、G・ジンメルがはっきりと指摘したように、貨幣は個人化すると同時に標準化するのである。このこと は、貨幣に依存した大量消費と「労働市場の自由化」にあてはまるだけではない。教育や法制化や学問化等という形での個人の解放と新たな組み込みにもあては まる。」(p.258-259)

■紹介・言及

橋口 昌治 200908 「格差・貧困に関する本の紹介」, 立岩 真也編『税を直す――付:税率変更歳入試算+格差貧困文献解説』,青土社


UP:20071003 REV: 20090811
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