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『医薬品業界』(産業界シリーズ 429)

勝呂 敏彦 19850530 教育社,230p.

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last update: 20190531

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■勝呂 敏彦 19850530 『医薬品業界』(産業界シリーズ 429),教育社,230p. ISBN-10:4315500305 ISBN-13:978-4315500301 1200+ [amazon][kinokuniya]

■内容

本書:3-4より

まえがき

 わが国の医薬品産業のルーツをたどると、江戸時代に大阪道修町で栄えた薬種仲間に行きつく。二〇〇年、いや三〇〇年近くも昔の話で、実際、武田薬品、小野薬品などの有力メーカーも元をただせばここに端を発している。それ以後、近代に入り、明治、大正、昭和と時代は移りかわるが、形態は違うが、医薬品業は間断なく連綿と事業を営んできた。ただ、名実ともに近代的産業として脱皮、発展したのは戦後、しかもここ三〇間にすぎず、古くて新しい産業である。
 昭和三〇年代以降の国の福祉政策の相次ぐ拡充に伴って、産業規模は拡大を遂げ、現在では四兆円産業とまで称されるようになっている。二度にわたる石油ショックで他産業が青色吐息であえいでいる時でさえ、それを尻目に二桁の高度成長を成し遂げる勢いで、"不況知らず"のレッテルを貼られたりした。
 しかし、五〇年代後半、順風満帆に進んできたこの業界も、他業界が石油ショッ △3 クの悪夢からようやく立ち直り始めるなか、これに逆らうかのごとく暗雲がたれこめてきた。これは国の高福祉政策がその財政難から行き詰まり傾向となり、一転して抑制策がとられることになったためだ。好不況にはそう影響されない強みを持つものの、国の医療・福祉政策のサジ加減ひとつでその業容が大きく左右される弱みを持つのがこの医薬品業界の特徴である。
 医療費の抑制は、その三割を占めるとされる薬剤費の削減を強いることになり、大幅薬価引下げを招くことになる。このため昭和五八年の医薬品総生産額の伸び率はわずか一.三%と、統計を取り始めて以来の最低を記録する不振ぶりであった。さらに異業種、外資の参入攻勢と環境は厳しく、企業の存亡をかけた戦国時代の様相を呈してきた。しかし、老齢化の進展はもはや避けて通れない現象であり、医薬品需要は以前のような勢いはなくとも、ふえこそすれ減ることはなく、安定成長は望めそうだ。要はいかに有力な新薬を開発できるかが、安定成長下で製薬メーカーが生き残っていけるかのカギになるだろう。

 著者

■目次

総論 医薬品業界とは何か
 巨大産業に成長/再編成、淘汰の時代

第1章 業界の概要
 1 原理と機能
  自由世界第2位の市場/薬効分類別にみた生産額/薬価基準制度/基準体制に改革の声高まる
 2 医薬品の貿易
  一貫して輸入超過/増える技術輸出
 3 金融機関からみた系列
  住友が四分の一を制す
 4 業界の試練
  薬漬け批判

第2章 業界の現状
 1 業界の特色
  規模/財務/賃金水準と従業員/人材の確保/設備投資
 2 流通の仕組み
  卸売経由が大半/価格決定権を握るプロパー/卸はリベート漬け/業界のアウトサイダー「現金問屋」  /適正化で相次ぐ施策/大きい薬価差益収入
 3 国際化への道
  完全な内需依存型の産業/新薬の海外進出に意欲的/長く地道な努力が必要
 4 外資系メーカーの動向
  資本力で対日攻勢/外資系各社業容
 5 異業種の新規参入
  製・販一貫体制整える六大兼業メーカー/参入活発化の背景/クスリ九層倍の魅力/バイオ・医薬に重  傾斜/まだ弱い販売力/市場の勢力図変える周辺企業の参入
 6 課題と展望
  経営の多角化に取り組む/新薬の特許期間延長問題/医薬品の市場開放問題

第3章 新薬と研究開発
 1 時間とコストとの闘い
  平均五〇億円の投資/七〜八割は開発中止に
 2 各種新薬の現状と展望
  [攻勢物質]/[制ガン剤]/[循環器系薬剤]/[老人痴呆症治療剤]/[プロスタグラジン]/   [スマンクス]/[OH-I]
 3 注目される新薬剤技術
  製薬企業の死命を制する研究分野/実用化進む徐放性製剤/実用化迫るリポ化技術/ミサイル療法

第4章 バイオテクノロジーと医薬品業界の動き
 1 夢の産業
  技法のあらまし/熾烈な先陣争い
 2 実用化の段階へ移行
  官民一体で取り組む/ゆるぎそうにない米国の優位/ベンチャーに頼る時代は終わった/バイテクに有  利な日本/巨大市場狙う有力化学メーカー

第5章 上位一〇社の比較
 1 一〇社の特性
  武田薬品工業/三共/藤沢薬品工業/塩野義製薬/田辺製薬/エーザイ/山ノ内製薬/大正製薬/中外  製薬/第一製薬
 2 一〇社の経営比較
  規模・成長性/収益・財務/技術力/支配・株主/子会社

資料編
 資料1  90%バルク・オンライン方式(X薬品)
 資料2  81%バルク・オンライン方式(Y薬品)
 資料3  医療用医薬品の価格形成過程(モデル)
 資料4  新薬開発の主要プロセス
 資料5  日本・アメリカ・ヨーロッパ上位製薬企業の自己資本比率の対比
 資料6  売上高・利益・研究開発投資の各国別対比
 資料7  武田薬品工業の業績
 資料8  三井の業績
 資料9  藤沢薬品工業の業績
 資料10 塩野義製薬の業績
 資料11 田辺製薬の業績
 資料12 エーザイの業績
 資料13 山之内製薬の業績
 資料14 大正製薬の業績
 資料15 中外製薬の業績
 資料16 第一製薬の業績
 資料17 10社の資本金
 資料18 10社の総資産
 資料19 10社の売上
 資料20 10社の経常利益
 資料21 10社の純利益
 資料22 10社の自己資本比率
 資料23 10社の研究開発費
 資料24 主要各社概要一覧

■引用


■書評・紹介


■言及

*作成:岩ア 弘泰
UP:20190531 REV:
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