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『慢性分裂病と病院医療』

遠藤 康 編 19850501 悠久書房,235p.

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last update: 20180305

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■遠藤 康 編 19850501 『慢性分裂病と病院医療』,悠久書房,235p. 欠品 ASIN: B01LTIOC0U [amazon] ※:[広田氏蔵書] m.

■目次

はしがき
第一部慢性分裂病を問う
一 慢性分裂病とは何か 遠藤康
二 慢性分裂病と施設症 猪俣好正
三 慢性化と薬物療法 小泉潤
四 慢性病棟の開放化――上山病院の場合 白沢英勝
五 大学精神科病棟の開放化と慢性分裂病 浅野弘毅
第二部事例が教えるもの
六 自殺に追い込まれたある慢性分裂病者 猪俣好正
七 頻回に昏迷状態をくり返した事例 相澤宏邦
八 長期入院者Mをめぐって――治療の場への再生を求めて 白沢英勝
九 慢性分裂病者の「評価」(レッテル貼り)をめぐって 横川弘明
一〇 生活の場から切り離すことなく援助をしている事例
第三部 日本の精神医療と慢性分裂病
一一 都道府県別精神科病床較差要因に関する考察 猪俣好正
一二 日本の精神病院の開放率 浅野弘毅
一三 病院の治療構造と慢性化――まとめにかえて 浅野弘毅

■引用

◆はしがき     遠藤庸 3-4 全文

 日本精神神経学会理事会が、「精神病院に多発する不祥事件に関連して全会員に訴える」という声明文を発表したのは一九六九年のことである。当時の精神病床数は約二四万床であった。
 一九六〇年代から、アメリカでは複雑な問題を含みながらも精神病床の大幅な削減が行われ、イギリスでも地域精神衛生網の整備とともに着実に精神病床は減少してきた。
 厚生省監修の「我が国の精神衛生」によると、わが国では毎年確実に精神病床は増加しており、一九八三年六月末の在院患者数は三三万四〇〇〇人にいたっている。
 精神医療にかかわる者として、このような現象がどのような意味をもつのか、考えずに通りすぎることまできない大きな問題である。
 前記の学会の声明文が発表されて以来十数年が経過している。その間に各地で精神医療に対する激しい批判に答えるべく活発な改革運動がさまざまの形で展開されてきた。
 しかし現実に現われてきたのは精神病床の増床という現象であった。いろいろの原因が考えられるが、もう一度病院内に目を向ける必要も生じてきたように思われる。
 東北の比較的近接の地域で実践を通じて同じような問題をかかえる有志が集まり、医療のあり方<0003<について討論してきた結果が本稿である。
 年代的に批判をあびてきた者、批判者、その後の実践者が具体的な問題に的をしぽって討論してきたつもりである。
 リハビリテーションの技術的問題や地域医療、家族の問題にまで論議をすすめることはできなかったが、自己批判も含めて精神医療に対する今後の手がかりにしたいと願っている。
 一九八五年三月」

◆ 一一 都道府県別精神科病床較差要因に関する考察 猪俣好正

 精神病床供給パターンの分析に関連して、都道府県レべルの精神病床数較差の検討はすでに中山1)、宗像2)がその予備的分析を報告している。その中で、中山は主として人口流動並びに一部地域における炭坑崩壊の二つのファクターが増床カーブの特徴を決定している可能性が強いと指摘し、宗像は農業粗生産額並びに失業者数・被生活保護者数という地域の貧困要因との相関を認めている。
 本小論では、これら二人の報告の一部を追試するとともに、厚生省の発表している統計資料をもとに、いくつかの分析を試みたい。
 なお一九八一年六月三〇日現在、人口万対在院患者数が四〇を越える県は、鹿児島の五二・八を筆頭に長崎・高知・熊本・徳島・宮崎・福岡・佐賀の八県(以下A群とする)であり、ニ〇以下の県は、一六・三の神奈川をはじめ滋賀・埼玉・宮城・岐阜・愛知・静岡・奈良・兵庫の九県(以下B群とする)を数える。これは人口万対精神科病床数でみても同様である。鹿児島と神奈川では実に三倍強の差がみられるわけであるが、ここではこれら病床の多いA群と比較的病床が少ないB群の比較についてもふれてみたい。
 なお、ここでとりあげた資料の大部分は「我が国の精神衛生」昭和五七年版、並びに厚生省が年次報告書として刊行している「医療施設調査」「病院報告」「衛生行政業務報告」「保健所運営報告」「社会福祉行政業務報告」<0189<図1<0190<昭和五五〜五六年版、に基づくものである。

1 病床利用率

 「宗像2)は「現在の診療報酬構造のもとでは利用病床数の確保が病院の死活問題であり、一九六二年以降は精神病床の供給が需要をプルしている」とその構造を分析している。
 図1は、人口万対病床数と病床利用率について、一九八一年六月時点と一九六一年一一月時点を直線で結んだものである。むろんこの間、病床数・利用率ともに直線的に変化しているわけではなく、正確にはより複雑な曲線を描くことになる。両者間にはバラツキが多く、統計上の相関はえられないが、病床数が多くかつ直線が右上に傾斜している県(鹿児島・高知・福岡・山口など)に代表的にあらわされるように、病床整備が進んでも超過収容は一向に改善されないこと、すなわち、現在の保険一医療制度のもとで経営を維持するために病院による患者の過剰な「取り込み」現象が推察される。またこの図か<0191<図2・図3<0191<らは、病床数の多寡にかかわらず利用率が急上昇している県(山口・広島・山形など)は将来的になお病床が増加していく可能性を示している。」

2 公費入院率

3 一人あたり県民所得
 「全国平均との対比でみた一九七九年度の一人あたり県民所得4)と人口万対在院患者数の相関をみたのが図3である。個人所得指数が低い県では在院患者数が多いという比較的高い相関を認めることができる。」(195)

4 年度保護率(人口千対)

5 人口流動
 図5は、縦軸に人口万対在院患者数・横軸に1980.10.1/1960.10.1の人口比をプロットしたもので、両者の童、目関道の人口比をプロットしたもので両者に強い相関を見ることができる。この間人口は全国で一二五・二パーセントに増加している(最高は埼玉の一二六・八パーセ<0195<図4・図5<0196<ント、最低は島根の八八・八パーセント)。
 すなわち、人口一一五パーセント以上の増加県は栃木・広島・茨城を例外として大部分低い在院患者数を示し、逆に一一五パーセント以下の諸県は、山形・福井・岡山を例外として高い在院患者数を示している。また中山1)が指摘するように、鹿児島・長崎で、仮に全国平均に相当する人口増加があったと仮定して万対病床数を求めても現在の値の三分の二程度にしかならず、これら人口流出が非常に進んだ県ではそれ以上に入院を促進させる要因が働いていると推察せざるをえない。

6 平均在院日数

7 在院患者の疾病分類

8 精神科医師数
 「人口一〇万対常勤医六・〇人以上では岡山を例外としてすべて在院患者が多く、逆に四・〇以下では愛媛・新潟を例外としてすぺて在院患者が少ない。人口比にして精神科常勤医が多い県は精神病床も多いという結果は皮肉といわねばならない。」(199)

9 医療施設

10 外来数

11 保健婦による精神衛生被訪問延人員

 「宗像2)は「保健所の精神衛生被訪問延人員は、精神病床数・新入院患者数との相関がみられ、在院日数との相関は低い。すなわち保健所の訪問を主とした精神衛生活動は、社会復帰より入院ルートにのせる活動が中心になっているとも考えられる」と指摘している。」(202)

12 その他の居住施設

文献

(1) 中山宏太郎「精神科における治療」精神経誌、八ニ巻五八六頁、一九八〇年
(2) 宗像恒次「精神医療需要と精神病床に関する研究――予備的分析報告」厚生科学研究報告(石原幸夫代表)、一九七九年<0203<
(3) 吉川武彦・竹内龍雄「精神衛生統計」「現代精神医学大系23C」中山書店、一九八〇年
(4) 日本銀行調査統計局『都道府県別経済統計昭和五七年版』 同調査続計局
(5) 朝日俊弘「精神医療供給のあり方について」精神経誌、八五巻八四一頁、一九八三年

■言及



UP:201307224 REV: 20180225, 0305
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