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『税とデモクラシー』

福田 幸弘 19841129 東洋経済新報社,287p.


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福田 幸弘 19841129 『税とデモクラシー』,東洋経済新報社,287p. ISBN-10: 4492610103 ISBN-13: 978-4492610107 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

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出版社/著者からの内容紹介
年収の7倍以上にあたる73万両もの巨大負債を抱え、破綻寸前にあった姫路藩の財政を立て直した名家老・河合寸翁道臣の叡知、人物像に初めて光を当てた本格歴史小説。

 *この紹介は間違い

■目次

1章 税・財政の基本課題
2章 税制改正を顧みて
3章 申告税制と税務行政
4章 今後の税制をどうすべきか
5章 サラリーマンと税金
6章 貯蓄税制のあり方
7章 投資減税と法税税負担
8章 税・財政の構図

■引用

1章 税・財政の基本課題
 「第二次大戦後の先進諸国の財政が福祉中心に拡大したため、所得税による所得再分配の意味が薄れ、最近では、自由社会の活力を再び喚起すべきだという自由主義の政治哲学から、累進税率の緩和という租税政策が打ち出されるようになってきた。
 アメリカではレーガン大統領が[…]イギリスではサッチャー首相が[…]」(福田[1984b:16-17])

 「わが国でも税務職員一人につきコスト約五〇〇万円の約一〇倍、五〇〇〇万円の税収増が見込まれるという計算がある。」(福田[2004b:25])
2章 税制改正を顧みて
 累進課税緩和と直間比率是正
 「所得税の本来の原則は、勤労所得には軽く、資産性所得には重くということである。それなのに日本の場合には反対に、勤労性所得はむしろ重い扱いを受けていて、これが不公正感を生んでいる。しかも、税率カーブが急で、一番高いところは、所得税七五%と地方税一八%を入れると、限界税率が九三%で、賦課制限が八〇%であったが、五九年度の改正で所得税を五%引き下げて七〇%にした。限界税率は八八%で賦課制限は七八%になった。したがって最高で一〇〇万円のうち二二%しか残らない。これはやはり税金としては異常である。異常な税制を持っていてはいけないというのが、常<0054<識的な税の執行の立場である。余り高い税率があるから法人になる。所得を分配する、経費で落とすことになる。だから、素直な税率にして、所得を正直に出してもらった方がいい。みんな正しく納税をしたいという気持ちはもっているはずで、それが無理なく納められるようにすれば、税収は決して減らないと思う。
 一方、下の方の税率は異常に低い。日本の場合、下が一〇%であったのを、五九年度に〇・五%上げたが、下を上げるということは上を下げるのと同様、相当勇気のいることである。イギリスの場合は、最初の税率が三〇%である。しかし上は六〇%で抑えている。西ドイツは下が二二%で上が五六%である。日本は下が低くて、上が高過ぎる。そして、中間のところからカーブが急になっている。しかも、課税最低限が世界で一番高くなっている。夫婦、子二人で二三六万円である。
 ところが、納税者は中から下にかけてダンゴみたいに集まっている。これは所得の分布を見ればわかることだが、日本の社会は国際的にみて貧富の差が最も少ない国の一つである。そういうところでは、累進税率の意味が余りない。国民の大部分がいるところにカーブの急な累進税率がかかるものだから、ちょっと月給が上がっても、税金がうんとふえるという感触を持つことになる。これが不公公平感の最大の原因といえる。
 だから、むしろ税率は比例税率的に考える方が正しいかもしれない。税率の歴史は最初比例税率であった。アメリカでは、いま比例税率論が出てきているが、一般の国民が納める税率は、なだらかな方がいい。今より下の方は重くなってもやむをえない。しかし、なかなか低いものを高くすることは<0055<政治的にも社会的にもできない。直ちに”貧乏人いじめ”とくる。それから、高い方を下げると”金持ち減税”とくる。しし、働いている人にモダレートな税率をというのは、勤労意欲を高めるということであって、もっと働こうとしても、税金を考えるともうやらない方がいいという気が強くなっては社会としても困るわけで、税率のために働かなくなるということがあってはいけない。それは働く者にとってむしろ不公正でもある。
 それから法人税についても同じことで[…]」(福田[1984:55-56])

 4章 今後の税制をどうすべきか 福田・石弘光 103-
■言及

◆立岩 真也 2008-2009 「税制について」,『現代思想』 資料

◆立岩 真也 編 2009 『税を直す――付:税率変更歳入試算+格差貧困文献解説』,青土社 ※


UP:20081115 REV:20090316
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