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『自治体精神医療論――住む所・働く場からの「精神医療」をめざして』

朝日 俊弘 19831125 批評社,358p.


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朝日 俊弘 19831125 『自治体精神医療論――住む所・働く場からの「精神医療」をめざして』,批評社,358p. ASIN: B000J6R4A4 2500 [amazon] ※:[広田氏蔵書] m.

引用

◆朝日 俊弘 19740127 「豊岡病院における活動報告――病院内外での過去数年間のさまざまな試みについての総括的報告」,『精神医療』2-3-2(12) :22-44→朝日[1983:114-151] .

◆生村吾郎・喜多川武夫・岩本昌和・高石俊一・朝日俊弘 1978 「兵庫県における精神医療」,『精神医療』2-7-1(26):31-48→朝日[1983:114-151]

はじめに

短い在任中でしたが、
自殺五。なぐり殺されたもの一。
その後を追うのみ。
ここが病院でないことに気付くのが遅すぎた。

 「兵庫県における精神医療」――その現状報告をまとめるにあたって、冒頭に掲げた故えS氏の言葉を私達は忘れることができない。 <0114<
 あの時からすでに十年に近い年月が過ぎ去ろうとしている。
 あの一連の激しい告発し改革の叫び声の中で、私達はいったい何を、どこまでなし得たのだろう?
 ある時は「総懺悔」がなされ、ある時は「ひらき直り」が横行した。
 そして、今、精神医療の近代的再編・合理化の波――保安処分新設にむけた準備、現行精神衛生法適用の厳密化、あるいは精神衛生法改「正」の動き、保安処分体制の実質的先取りとしての緊急鑑定体制作り、公的精神病院に対する特殊病院化構想と合理化攻撃等々――が確実に進行してきている現在、私達はあらためてこの現実を冷静に見つめなおすところから始めねばならないのだろうか。
 これまでの「あまりにもひどすぎる精神病院の実態」に対する批判・告発は、現在なおそのような実態を残しながらも、表面的には近代化・合理化という「みせかけの改善」によって巧みにかわされようとしている。というよりも、むしろ近代化され再武装された形で、逆に攻撃的に再編のプログラムが私達につきつけられてきているのだと言えよう。」(朝日[1983:114-115])

県衛生部昭和五十二(一九七七)年度「重要施策」(3)
(1)「不幸な子どもの生まれない運動」は今でも生きている!
 「よい子を生みすこやかに育てる施策」はこの重要施策の中、「母と子の健康づくり」の項目に位置づけられている。
 言うまでもなく、この施策は「障害児(者)抹殺の思想」として批判された(4)「不幸な子どもの生まれない施策」が表看板を書きかえて引継がれているものなのである。
 このの「不幸な……」施策は昭和四十一(一九六六)年四月当時の金井知事のお声がかりで始められたものだが、数年前から多くの批判・反対の声が出されていた。すなわち、この施策は、今 <0119< 日何故に障害を持つ子供が増えてきているのか(母体をむしばむ公害環境・母性保護が不充分な生活・労働実態等々)という社会矛盾を隠蔽するものであること。「障害を持つ子供」をますます”不幸”にしてゆく現代社会の差別構造を容認し、むしろその社会的差別を拡大・再生産するものであること。
 こうして、特に関西青い芝の会を中心とする障害者自身のねばり強い運動の中で、昭和四十九(一九七四)年四月「不幸な……」運動推進対策室はその表看板をはずさざるを得なくなった。
 しかし、すでに誰の目にも明らかなように、対策室の内容はそのまま「母子保健課」に引継がれており、たとえ表看板を「よい子を……」と書きかえたししても、決して県の基本姿勢が改められたわけではない。
 あまりにも正直(?)に障害児・者否定の意図をうたった「不幸な……」というキャッチフレ <0210< ーズを肯定文に表現しなおし、「よい子を……」と言いいかえただけのことなのだから。
 したがって、これまで「不幸な……」運動を批判してしきた私達が、今日の「よい子を……」運動の展開を見逃してしまうならば、それこそ、私達自身の反対運動の質を問われることになろう!」(朝日[1983:119-121])

(3)「衛生行政概要」――健康をまもり増進する、一九七七、兵庫県衛生部。
(4)「児童精神医学とその近接領城」、一九七五。vol.19, No.1.(第十五回日本児童精神医学会発表抄録)。

cf.松永 真純 2001 「兵庫県「不幸な子どもの生まれない運動」と障害者の生」→立岩・定藤[2005]*
*立岩 真也+定藤 邦子 編 2005 『闘争と遡行・1――於:関西+』

「*他府県病院の入院については、兵庫県下の人口万対病床数が十八床と比較的少ないため、隣接する他府県の病院を利用している場合も考えられるが、問題は決してそれだけでは終らないようだ。
 入院先の病院ベスト三
 @大阪府下茨木市A病院    一ニ〇人
 A  〃 豊中市S神経科病院 九〇人
 B京都市 Hサナトリウム   七四人
 以下さらにずっと入院先の病院をみていくと、決して地理的に便利だとは思えない病院へかなり多数が、まとまって入院しているなど。たとえば、京都市内の十全会系の二病院だけで一〇〇人以上が入院している。
 これらのデータについてはさらに具体的な検討を要するだろうが、少なくとも、いわゆる「老人」や「アル中」など問題を含むケースの相当数が、他府県の病院へ半ば選択的に(?)流れている(流されている)ことは確実と思われる。」(朝日[1983:119-121])
 cf.十全会闘争

言及

◆立岩 真也 2014/06/01 「精神医療現代史へ・追記3――連載 100」『現代思想』41-(2014-6):-


UP: 201405010 REV: 201405011, 12 
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