◆論文書きでもっとも大切なのは、問を疑問文の形で切り出すことで、それがレトリックでいう発見・構想です。もっとも大切だというのは、それができれば、つまり全体を貫く主な問は何であるかを確定することができれば、論文の首尾一貫性、統一性を保証する基本条件が整ったことになるからです。……/ですから、序とはまず、問が何であるか、問の姿や争点status questionis = state of the questionを紹介する場所です。大きい論文ならば問題の研究史を説明する、小論文なら問が出てきたきっかけに触れるところです。序がつぎに、論文が扱う大小の問とそれを扱う順序つまり仕事の手順を紹介します。大小の問題とは、主問とそこから派生してくる多くの副問ということです。……/結論は第一に、本論の主要点をクローズ・アップして本論とは別のことばで要約(英語でrecapitulate)し、それによって序で提示した問に答えることです。結論は第二に、論文がもつ、より大きい問題との関連を指摘する場です。……結論は第三に、これから必要になる研究方向、研究テーマについてのヒントを述べるところです。しかし結論で絶対に避けるべきは、本論では全く扱わなかった新しい問についての議論を始めることです。結論は本論の最終章に続く新しい章ではありません。結論で何よりも大切なのは、第一にあげた、序の問に答えるということです。/さて、論文の本論自体はどう構成、展開したらよいか。それは問の姿と論文の種類できまります。「それは何か」という問に答える説明論文の場合、自分の想像や希望的観測や主観的意見を主張するのでなく、比較や対照、例証やたとえ、分類や定義、説明的描写、構造分析、因果分析などによってなるべく客観的に「それ」の姿を明らかにします。「なぜ」という問に答える論証論文には、三段論法的展開が必要になります。[1983:74-77]