『ヘーゲル入門――精神の冒険』
松原 治郎 編 198110 『日本型高齢化社会――ソフト・ランディングへの提言』,有斐閣,253p.
■Singer, Peter 1983 Hegel Oxford ; New York : Oxford University Press PTBL:Past masters, ix+97p. ISBN:0192875655 ; 0192875647 $14.50 ; pbk$4.95=1995 島崎隆訳,『ヘーゲル入門――精神の冒険』,青木書店,237p. ISBN-10: 425095045X ISBN-13: 978-4250950452 2625 [amazon]/[kinokuniya] ※ b
◆内容(「MARC」データベースより)
日本での西洋思想の導入の時期、当時の哲学者たちの心の琴線に触れたヘーゲル。しかし、いまやヘーゲル研究は高度になり、専門書が多い。この現状を打破するために書かれたヘーゲル哲学全体の解説書。〈ソフトカバー〉
◆目次
第1章 ヘーゲルの時代とその生涯
第2章 目的をもった歴史
第3章 自由と共同体
第4章 精神の冒険
第5章 論理学と弁証法
第6章 影響
◆引用
第3章 自由と共同体
欲望する精神
「マルクスがヘーゲルよりはるかに根本的に世界を変革しようとしたことは、明白なことである。それにもかかわらず、ヘーゲルから読み取りえたことは、マルクスのことばの根本にある考えを『現象学』のなかに見いだすことができるということだろう。すなわち、自己意識的損さ伊が自分自身を完全に実現するためには、外部の世界を変革し、それを自分自身のものとすることに着手しなければならないということを発見するという考えで空く。
欲望はづきのような事実を表現するものとして現れた。つまり、自己意識は外的な対象を必要とするが、それでもそれ自身、外部に損さ伊するものに制限されていることに気づくという事実である。しかし、あるものを欲するということは〔完全に〕満たされることはない。したがって欲望とは、典型的なかたちでヘーゲルの言い回しを利用すると、自己意識にとって不満足な状態である。さらに悪いことに、自己意識は永遠に満たされないように運命づけられているように見える。というのも、かりに欲望の対象が独立した対象としては抹殺されてしまうならば、自己意識は自分自身の存在にとって必要なものを破壊してしまうことになるからだ。
このジレンマをヘーゲルは、自己意識の対象をもうひとつの自己意識とすることで解決する。」(Singer[1983=1995:117])