『江戸時代――犯罪・刑罰事例集』
原 胤昭・尾佐竹 猛 解題 19820301 柏書房,516p+508p.
■原 胤昭・尾佐竹 猛 解題 19820301 『江戸時代――犯罪・刑罰事例集』,柏書房,516p+508p. ASIN:B000J7QF1M \5040 [amazon]/[kinokuniya] c0134
■内容
再刊にあたって
本書は、江戸町奉行所同心だった佐久間長敬らが残した所記録を、原胤昭・尾佐竹猛両氏が編集し解題を付したもので、江戸時代の警察機構、犯罪、牢獄、裁判の実態を克明に描いた貴重な記録である。政治史・法制史研究に豊富な研究素材を提供する犯罪・刑罰事例集としてここに再刊する次第である。
なお、原著は昭和五年に刊行された「近代犯罪科学全集」(武侠社刊)中の「刑罪珍書集T」「同U」であるが、再刊にあたりこの二冊を合冊し改題した。
昭和五十七年三月
柏書房株式会社
■目次
再刊にあたって
第一部 解題 原胤昭
縄之伝極意
刑罪詳説(佐久間長敬)
徳川将軍御直裁判実記(佐久間長敬)
拷問実記(佐久間長敬)
吟味の口(佐久間長敬)
検使楷梯(岡本彌一郎晨之)
第二部 解題 尾佐竹猛
無冤録術
棠陰比事
江戸にて狐付奉行御捌之伝
犯姦集録
御仕置例類集抄
牢獄秘録
■引用
刑罪詳説(佐久間長敬)
「右了れば、控え居る繩取、非人大勢にて取圍み、打役附添ひ牢前を通り、刑場に到る。之れを切場といふ。檢使其外役々は、埋門より出で直ちに刑場に臨む。(目付立會のものは、徒目付、小人目付、出役あり。)
刑人牢前を通行する時、各牢内名主代、戸前口に立ち、名残と稱して、哀別の語を云ふ。一種の>97>習慣あり。(囚獄の部に云べし)
切場入口にて、囚人の目隠しをなさしめ、(半紙二ツ折、細きわら繩にて、頭の後にて結ぶ)打役四人(白衣、羽織、脱劍)先行し、囚人は非人三人(白衣)繩のまゝに引かれ出づる。鎰役、(羽織、袴、脇差)囚人の名を問ひ、答を得て、直ちに切場に据え、筵の上に着坐せしめ、手傳人足、>98>所持の小刀にて、切繩の背結目より、襟の方へ上り、咽繩を切り捨て着服を引下げ、兩肩を袒にし、手をそへ、首を前に延べ出させ、首討役(町奉行同心)之れを討つ。右切場は、地面を凹め、上に筵を敷く、此の内へ首を切りて、死骸は、手傳人足、兩足を引き、血を凹内に落すなり。首討役は町奉行同心の内、當番若同心なり。(羽織、白衣、帯刀)討ち終れば、添役手桶の水を刀に注ぎ、血を洗ひ、紙にて拭ひ(紙は半紙二ツ折を手桶に掛けある)鞘におさむるなり。
因に曰く、首討役同心と相対にて、御樣御用を勤る、麹町平河町の浪人、山田朝右衛門、之れを爲すことあるは、檢使其外役々も、黙許せしなり。
首打役へは、刀砥代として金二分、缺所金の内(缺所金とは欠所公賣せし、金子の奉行所に保管せしもの)にて、奉行より之れを給す。若し朝右衛門に討たしむる時は、同人より金若干の禮を、却て受くるなり。其の所以は、朝右衛門、御樣御用を勤る故に、所々より、頼まれたる新刀を以て、該首を討ち、刀劍の試に供するが故なり。世俗之を知らず。首斬朝右衛門とまで、綽名すれども、實際を知らざる者の談なり」(pp.97-99)
■書評・紹介
■言及
*作成:櫻井 悟史