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大熊一夫 19810820 朝日新聞社,241 p. ■大熊一夫 19810820 『ルポ・精神病棟』,朝日新聞社,241p. ISBN-10: 4022602449 ISBN-13: 978-4022602442 350 [amazon] ■紹介・引用 「精神医療の世界には「くすり漬け」という恐ろしい言葉がある。医学の美名にかくれて、患者に向精神薬(主として興奮を鎮めるくすり)を必要以上にじゃんじゃん飲ませることである。 患者はボケて、動作も鈍る。だから病院は管理に手がかからない。人件費も浮く。投薬量がふえるほどに儲けも伸びる。しかも密室の中で行われるから、外部から疑問をさしはさまれる心配も少ない。 精神障害者への数々の虐待の中でも、最も陰湿なのが、この「くすり漬け」だと私は思う。そして、この「くすり漬け」の背景をさぐってみると、われわれを取りまく医療環境は、もう、救いがたいほど堕落しているのがわかる。」(p120) 「電パチぼけ 性格的に角がとれた、といえば聞こえはいい。しかし、その代償として人間らしい生気も失せてしまった。六十回を超える電気ショックによって、記憶力は極端に落ちた。彼の頭脳は、彼の意思には関係なく、医師の手で変造されて、「彼は」「以前の彼」ではなくなったのだ。」(p209) 「電気ショック療法はすたれたとはいえ、いまでも保険医療に残っており、自殺しそうな患者には捨てがたい効果がある、という医師も少なくない。しかし、連日、アル中を魚市場のマグロのように並べて、電気をやりまくるのが医学的かどうか。」(p211) 「もっと変なことがある。「分裂病的なアル中」「躁鬱病的アル中」にE・Sが効くというが、分裂病への電気ショック療法も治療法として確かな地位を獲得していない。というよりも、ひと昔前には全盛を誇った電気ショックも、いまでは一部の医師がごく限られた症例におこなっているだけ。根本的な治療になり得ないことから、いまでは過去のものになりつつあるのだ。」(p212) 「西瓜割り アル中を電気ショック療法でなおす」などという精神医学の教科書にもないようなことが、精神科医の手でジャンジャン行われる――「ここが問題だ」と多くの人たちは思うに違いない。ところが、精神医療の世界では、脳みそに電流を通して、人間を変造することは、大した問題にはならない。電パチよりはるかに物騒なことが、十五年ほど前には日常の治療法としてまかり通っていたのだ。そして今日でも、少数ではあるがまだ続いている。 それは脳にメスを入れる手術である。代表的なものに、ロボトミーがある。電気ショックもロボトミーも、程度の差こそあれ、人間をボケさせ、おとなしくする、という点で似かよっている。どちらも療法としてすたれてきたものの、とくに自殺企図者に効果あり、とされて、いまだに使われている点も共通している。」(pp214-215) 「ロボトミー手術そのものも安全ではない。絶命もあるし、癇癪の後遺症に悩まされることもある。手術で廃人にされたために、決定的に退院できなくなって、鉄格子の中で余生を送っている人を捜すのにそれほど骨は折れない。 精神医学は、脳の働きについて、まだほんの一部しか知らない。なのに、その脳を対象とした手術方法のみ実施される。」(p216) 「「死んじまえば病苦なし」という諺がある。なぜ、こんな残酷な手術が、今日まで続いているのか。考えてみれば不思議なことだ。(中略) しかし、ロボトミーという「治療」と切りはなせぬ“心の殺害”は、はじめから、少なくとも日本で行われ始めたころからは、知ろうと思えば知ることができたのだ。ロボトミーの結果は術後にすぐ出る。きのうまで手がつけられなかった者が、すぐに手に負えるようになる、という具合に。しろうと考えにも、ぞっとする話である。それが“西瓜を割る”ごとく行われたのである。」(p217) *作成:松枝亜希子 UP:20071214 ◇BOOK ◇精神障害/精神障害者 |