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『高齢化社会』

吉田 寿三郎 19810120 講談社,講談社現代新書,212p. ISBN-10:4061456040


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■吉田 寿三郎 19810120 『高齢化社会』,講談社,講談社現代新書,212p. ISBN-10:4061456040 ISBN-13: 978-4061456044 [amazon] [kinokuniya] ※ b a06

【著者紹介】(『高齢化社会』に掲載されている著者紹介)
よしだ・すみお。兵庫県生まれ。京都大学医学部卒。大阪医科大学教授、京都大学老年医学科講師を経て、現在、日本老年学会理事、日本老年社会科学会常務理事、日本WHO協会常務理事、ヨーテボリ日瑞協会名誉会員、北欧文化協会理事、人口問題研究会評議員。内科学、公衆衛生学(老年社会臨床医学)専攻。医学博士。
著書に『老人の保健福祉に関する体系的開発』日本生命済生会、『日本老残』小学館、『デイ・ケアのすすめ』ミネルヴァ書房、『一九七八年老年問題に関する京都国際シンポジウム』編者、日本WHO協会など多数。

■引用
 「この判断からの希望がようやくかなえられて、二十二年前、縁あって北欧の長寿国スウェーデンに行けた。しかし「福祉国」として名高いこの国の現実を目の当たりにして考え込まざるを得なかった。そのことが私を老年問題に首を突っ込ませる決定的なきかっけをつくったのである。
 すなわち、一九五九年、私は大きな期待と憧れを抱いてスウェーデンに渡った。世界に冠たる長寿国、手厚い保護を受け幸福な余生を送る老人たち、そしてそれを支える若い生産人口――いったいどうすればこんなすばらしい国家が出来上がるのか、私はポジティブ・ヘルスと<8<いう"青い鳥"をみつけるつもりだったのである。
 だが私の期待と憧れはまったく裏切られたといってよい。スウェーデンで私が見たのは健康で幸福な余生を送る老人たちでなく、"弱っても死ねない"老人たちの群れであった。たしかに国をあげて手厚い老人対策は講じられてはいたが、ほとんどの老人たちは決して幸福な顔付をしていなかった。人力でつくった老年問題の深刻さ、難しさ……それをまざまざと見せつけられた思いだった。」(吉田 1981:8-9)

 「そんな願いも込めて、一九五三年、私たち同じ思いを持つ者が集まって「日本寿命科学協会」(ウェル・エージング・アソシエーション・オブ・ジャパン)を発足させた。」(吉田 1981:62)

 「ねたきりの状態は、えてして"ボケ"へ通じる可能性が大きい。北欧などの慢性病院やナーシング・ホームに行くと、病棟の一角にまったくデクの棒のような群像が突っ立っていたり、丸太のようにころがっている。むろんまだ生きている人間である。まさに老残としか形容しようがない。
 口に食べ物を突っ込めば嚥下はする。大小便の始末はできない。うつろな目はどこをみているのか定かではない。ただ生物学的に生きているというだけの存在である。
 私は最初、こうした光景をみてぞっとせずにはいられなかった。栄養はたいてい鼻から管を<168<通して胃に送っている。本人はもはや自分で食べることすらできないのだが、ケアの仕方によっては二ヶ月、三ヶ月はおろか一年、二年、三年、否十年でも生かしておける。
 生物として生き残れる可能性は今日大変進歩した。ここで従来はなかった新しい安楽死の問題が人口長命にからんで登場しているわけだ。」(吉田 1981:168-169)

 「私たち生きものの個体は有限である。時間的な経過とともに必ず死がくる。どんな人にも死がくる。第一、第二の人生にも死は起こるが、これは災厄死である。しかし、第三の人生には<172<死は必然のことで、自然死は他の人生にない重要な特徴である。しかも、これからは卒然と死がくる場合より老病弱、複雑な心身の障害によって漸次追いつめられた後死んでいくのであるから、高齢期のケアをどのように充実させて、死と対決し人間として堂々と死んでゆくかが重要なテーマとなってくる。」(吉田 1981:172-173)


*作成:北村健太郎 *情報提供:天田城介
UP:20060124 REV:
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