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『福祉体制の終焉と80年代』

松尾 均 19800317 労働教育センター,220p.


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■松尾 均 19800317 『福祉体制の終焉と80年代』,労働教育センター,220p. ASIN: B000J86SUO \1575 [amazon][kinokuniya] 

■目次
序 問題意識の一端として
第一章 七〇年代の経過と生活問題
第二章 七〇年代福祉政策のしくみ
第三章 七〇年代の運動の軌跡
第四章 八〇年代の課題を求めて
結 労働運動における"地域"について
付 七〇年代生活問題年表

■引用
「第三に、そうした生活問題に取り組む拠点についてであり、それは地域である。地域とは住民であり、生活であり、自治である。だからして地域闘争とは、対資本、対生産、対統治の闘いである。よってもって、地域闘争は、@制度主体としての住民=労働者・国民の、A対営利機関、対営利団体との闘いであり、Bそれは自治体に向けての交渉を不可欠の道行きとする。これが、地域闘争の三大要素である。」(pp.6-7)

「公害と「合理化」がともに経済的効率性のみを競い、労働者間競争を強要する「企業社会」の産物たることの認識、「人を死なせている」ことが同時に労働者自らをも殺しているという一歩深めた認識に立った、労働の場のありようや職場の安全性を執拗に問い返す営為はついに定着しなかった。さらに、反公害運動を軸とする住民運動が掲げた「住民自治」も「産業自治」としてとらえなおされなかった。」(p.107)

「企業・体制の戦略として、もう一つ見のがしがたいものに、その地域対策と呼ばれるものをあげておかなければなるまい。それは、六〇年代の高度成長が、住民運動と呼ばれる地域からの反乱によって、擬態とはいわれながらも、七〇年代にはいって「福祉の時代」をひらかなければならなかったという苦い経験に照らし、周到な地域支配をすすめようとするものであった。
 七〇年代半ばに、資本のイデオローグたちによってもっともらしく「企業コミュニティ」から「地域コミュニティ」への転換がうたわれ、政府の政策として三全総=定住圏構想による擬似「地域主義」が提唱され、自治省官僚による自治体奪還の拠りどころとして、官製「地方の時代」が叫ばれたことは、そのあらわれといえよう。
 それらはすべて、企業と体制側の危機意識のあらわれにほかならなかった。そしてこの危機意識が、革新自治体つぶし、福祉切捨てへの暴力的なまでの攻勢のバネとなったことはいうまでもない。しかし労働側は、この企業と体制側の危機意識の高まりを見ぬけず、その戦闘力を過小に評価してきた。」(p.152)


*作成:橋口 昌治 
UP:20081226 REV:20100602
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