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『日本の税金』

佐藤 進 19791218 東京大学出版会,UP選書201,218p.


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佐藤 進 19791218 『日本の税金』,東京大学出版会,UP選書201,218p. ISBN-10: 4130020013 ISBN-13: 978-4130020015 980 [amazon] ※ t07.

■目次

第3章 会社と企業の税金

■引用

第3章 会社と企業の税金

 「わが国で、企業課税強化の主張が大きく取り上げられるようになったのは、昭和四〇年代後半に入ってからであり、その最初の出来事が昭和四五年度税制改正における法人税率の一・七五%引上げであった。この当時の状況をふりかえってみると、企業の設備投資の増大・技術革新・輸出拡大という形ですすめられてきた経済の高度成長が、社会的ひずみの拡大や公害等の社会的費用の増大をもたらす結果となり、これが企業に対して応分の負担を求める声を高まらせるにいたった。また、大都市への企業の集中と過密の弊害の発生などが、企業の受益に応ずる負担の要求の根拠となった。さらに、昭和四八秋の石油危機以降、企業が便乗値上げ等の反社会的行動をとったとして世論の反撥をかったが、四九年度税制改正では議員立法による会社臨時特別税の採用、そして法人税率の一層の引上げ(基本税率三六・七五%より四〇%)がなされ、この間、企業の実効税負担ないし実質税負担をめぐる議論が盛んに行われた。法人税率以外に大きな問題となったのは、法人税の課税ベースをめぐる論議であり、これは法人関係特別措置の管理をめぐる動きとなってあらわれた。[…]」(佐藤[1979:94])

 「法人税は、法人所得に対する税であるが、法人所得は配当と内部留保とからなり、配当がこれを支払う法人と、受け取る個人の両方で課税されると二重課税になるということで、この二重課税の調整をめぐりさまざまの論議が展開されてきた。」(佐藤[1979:95])

「シャウプ勧告法人税制は、「法人は与えられた事業を遂行するために作られた個人の集合である」という法人擬制説の立場にたって、二重課税の排除を主張するものであった。シャウプ使節団の母国であるアメリカでは、むしろ実在説的立場での二重課税が行われていたのに対し、シャウプは理論的にすぐれた考え方として二重課税排除を主張した。もっとも[…]」(佐藤[1979:98])

 「(一)法人は組織体として法的に独立しており、財産を取得し、所得を稼得することができる。[…]
 (二)法人企業は個人企業にくらべ資金動員力において圧倒的に優勢であり、また収益力においても優れているので、均等化のため独立法人税を強化する必要がある。[…]<0108<
 (三)一般的国家サービスのうち、企業経営の安定や労働力養成、技術開発、そして社会資本の整備なと企業向サービスの分野が拡大しており、企業とくに法人企業はこれに見合った対価を支払う必要がある。
 (四)法人の社会的責任の根拠から独立法人税を支持することが可能であり、法人は企業活動の結果もたらされた社会的費用を第三者に転嫁することなく、自ら負担する必要がある。発生者負担・原因者負担・汚染者負担等々の根拠からの企業負担強化の提案であり、この場合、負担はあくまでも第一次的負担であり、公害発生等の防止に第一次的に責任をもつべきは、発生者ないし原因者であるという理解がその基礎にある。
 (五)経済政策遂行の観点から独立法人税を推進する根拠も十分あると思われる。[…]
 (六)課題の効率性の観点から、第二次的所得である利子・配当・地代・賃料といった個別所得に課題するより、それらの所得の発生源である企業ないし法人のところで課税するほうがより効率的である。賃金に対する所得税が源泉徴収制度のもとで企業による給料天引きの形で徴収されており、これが所得<0109<税の徴税費節約に役立っていることは周知のことである。また利子・配当・地代・賃料等々は派生所得であり、これを生み出すものは企業利潤にほからないのであるから、これらの源泉課税として法人税にウェイトを置いてゆくという考え方も可能と思われる。
 […]二重課税排除や法人擬制説の純化という角度より、二重課税是認・法人実在説の基礎での法人独立課税強化が、わが国の場合とるべき方向ではないかと思われるのである。」(佐藤[1979:109-110])

■言及

◆立岩 真也 2008-2009 「税制について」,『現代思想』 資料

◆立岩 真也 編 200908 『税を直す――付:税率変更歳入試算+格差貧困文献解説』,青土社 ※


UP:20090429 REV:20090503
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