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『国立療養所史(らい編)』

国立療養所史研究会 編 19750910 厚生省医務局国立療養所課,135p.

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last update:20160312

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◆国立療養所史研究会 編 19750910 『国立療養所史(らい編)』,厚生省医務局国立療養所課,135p. ※ h01

■引用

◇高島重孝 1975 「まえがき」、国立療養所史研究会編[1975:8-11]
◇植園八蔵 1975 「らい対策立法の展開と福祉」、国立療養所史研究会編[1975:88-93]

▽008 V 第1部 らい百年史年表

                     長島愛生園長 高島重孝
 まえがき

 […]
 ▽010
 […]
 昭和25年(1950年)以後の2 decadeは,更生医学の時代といえる。社会復帰およびRehabilitationが盛んに行われ,実施された時代で,昭和28年(1953年)のらい子防法改正が,転機のKey pointとなっている。昭和45年(1970年)以降,これからの2 decadeは,如何なる時代となるか。昭和45年(1970年)らい調査会は,自用費支給について厚生大臣に答申案を提出した(らい調査会長葛西嘉資,副会長高島重孝,理事長聖城稔)。これは,らい入園者に一律に拠出制障害年金一級相当額を段階的に支給することと同時に,園内患者給与金の格差是正のため,色々な名目の給与金支給既得権の廃止をうたったものであり,段階的に実施され,現在の大谷国立療養所課長にいたって,その定着化が顕著であって安定している。かくの如く70年代は社会福祉の時代に移行したものと考えるが,一方,新発生減少,若き軽症者の社会復帰の結果は,入所者の考齢化を招来し,患者作業の返還,不自由者生活介補の職▽011 員切替え等の園内再編成と同時に世界的経済混乱の下にあって,医師および看護婦不足に対応する療養所の内部事情は,深刻な苦悩をかかえてはいる。時難にして英雄現わる。療養所の優雅なる終未期を,花の如く飾り,いやしくも内部崩壊のみじめさを露呈することなく,美しき落日を迎えるためには,まず内部の自助的工夫があって,はじめて厚生省との渾然一体となった効果を発揮するものと思うもので,近時衣食足って礼節を知るたとえのとおり,全患協,所長連盟ともに医務局当局と相互信頼関係が成立していることを慶賀するものである。

 ▽088
 らい対策立法の展開と福祉
 菊池恵楓園 植園八蔵

 ▽092
 […]
 更生医学時代の福祉1951(昭26)〜現在
 1947年(昭22)臨床実験が開始された新薬ブロミンは,奇跡的ともいえる効果を発揮し,プロミン以後ともいわれる時代が始った。
 1951年には,患者の全国的団体である全国患者協議会も発足し,患者福祉の充実をめざす活動を開始し,プロミンの効果をふまえてのらい予防法改正運動も起ったが,1953年(昭28)に患者の猛烈な反対運動に抗して成立した新しい予防法は,あい変らず隔離主義に立脚したものであった。
 しかし現実は,法の壁を越えて進み,社会復帰論議も盛んになり,社会事業各法も療養所の垣根を越えて適用されるようになり,1959年(昭34)には国民年金の受給も始まった。
 療養所の開設とともに始まったといわれる患者作業も,医療部門作業から徐々に職員の手に移され,1960年(昭35)には不自由者介護も職員が実施するようになった。また長い歴史を持つ園内小,中学校,保育所も児童の減少により閉鎖される例が増え,明るいニュースとなったが,1961年(昭36)の愛生園運動会の中止に象徴される患者の老齢化や,医師不足対象としてのパート・タイム医師の採用は,新しい福祉対策の登場を要求するものであった。
 戦後間もなく生活保護法から切り離されて支給され始めた慰安金は,当初しばらく生保基準を越えて支給されたが,間もなく基準以下に落ち込み,らい福祉の貧しさの例とされたが,1970年 (昭45)に大幅に改善されて生保基準のほぼ3倍に達し,この面でのらい福祉は,難病に,あるいは貧困に若しむ階層の牽引車としての期待をかけられるまでになった。

◇「あとがき」 大谷藤郎

 「らい非伝染論者であった先生が、今日の開放的になったハンセン氏病患者の現実をみられるならば、なんと喜ばれたかということを時々思います。たまたま、何十年かたった今日、私が国立らい療養所史編纂のお手伝いができたことは、有難いめぐりあわせと思い感無量です。」(大谷[1976:135])

■言及

◆立岩 真也 2016/06/01 「国立療養所・3――生の現代のために・13 連載・124」,『現代思想』44-(2016-6):

◆立岩 真也 2016/04/01 「国立療養所――生の現代のために・11 連載 122」『現代思想』44-(2016-4):-

◆立岩 真也 2018 『病者障害者の戦後――生政治史点描』,青土社


UP:20160312 REV:20160504
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