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『反精神医学への道標』

小澤 勲 19740501 めるくまーる社,312p.


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小澤 勲 19740501 『反精神医学への道標』,めるくまーる社,312p. ASIN: B000J9VTS4 1300 ※ [amazon] ※ m

■引用→

 「入院期間が5年、10年、あるいはそれ以上になった患者は、社会復帰がきわめて困難であるという意味から、従来、精神病院の医者は彼らを「沈殿」患者とよんできた。そして、病院内では症状が認めがたく、開放病棟で生活し、あるいは外勤療法という名のもとに病院から病院外の企業体に勤務を続けながら、なお、退院するに当たっては種々の困難な壁があるために入院生活を続けている患者の存在が指摘されだしたのは最近のことである。」(小澤[1974:25])

p116、16行
 「まず、入院を拒否して治療していくという姿勢で私もやっている。というのは、精神病院は市民社会の秩序を維持するために「精神障害者」を地域から家族から、職場、学校から排除する機能を押し付けられている。そして、いかなる「良心的治療」も総体としてはその構造を打ち破りきれていない。それどころか、「良心的」であればあるほど、その構造の担い手をすらなっている。このように考えれば「入院は悪である」とする他ない。ですから、いかに入院を拒否してやれるのかをギリギリまで追及しようとします(しかし、そのことが市民社会内での生活規制に終わるのでは、入院と本質的に異なりません。)しかし、このような闘いに敗北し入院という結果になった患者さんに対しては、どんなにしてでも一日も早く退院させようとは思いません。患者さんが、逆に社会の中にどうやって撃って出るのかをともに考えるのです。つまり、どんな手段を使っても一日も早くとは思わないわけです。社会に対して、言いたいことも言えないような状態に治した方が、早く退院しやすい場合もある。たとえば、低賃金で我慢する状態にした方が出やすいかもしれない。そんなかたちで一日も早く退院とは思わないのです。
 病院の中でも同じことが言えます。すなわち、自分の言いたいことを言い、やりたいことを院内でもやったら、病状が不安定になることがあります。客観的には、その結果入院生活が長くなることもあるでしょうが、そのようななかで私自身に突きつけられた問題もできるだけ引き受けていこうと考えているわけです。ですから入院生活を早く切り上げるちこと自体を否定しているわけではありません。ただ、入院を拒否するという方向性と同時に、病院を「ウラミ、ツラミをはらすべき、社会へ撃って出る拠点」へと内部的に変革する必要性に、われわれは迫られているわけです。このような立場からして、できるだけ短期間に労働力を回復せしめ、従順な低賃金労働者として社会に送り出せばよいとする意味での「早期退院論」には私は与しないということなのです。」(小澤[1974:116])

 「このように方針をたてたとき最初にぶつかった問題は看護職員の戸惑いもさることながら、社会復帰病棟患者としてのエリート意識であった。患者同士で他を侮辱し、排斥するさいの言葉として「閉鎖病棟へおりろ」「あんたはここにあがってこられる患者と違う」ということが言われる。社会復帰病棟にいる患者は「いい患者」、閉鎖の患者は「わるい」患者なのである。ここでいう「いい」「わるい」は、単に病状が「いい」「わるい」というにとどまらず、患者の人間の価値を決定するコトバとして使用される。[…]
 ここで猛然と私は反論する。世の中から「気ちがい」として差別され、排斥されてきた患者が社会復帰病棟にあがってくると、今度は逆に患者の中の「気ちがい」を病棟から閉鎖病棟へ排斥し自らの安寧・秩序を守ろうとする。どうも、どこか間違っている。このような過程でなおっていっても、世の中に出たとき、偏見と差別に満ちた眼に抗して生き抜けないのではないか。」(小澤[1974:128])

■言及

◆立岩 真也 2002/04/01 「生存の争い――医療の現代史のために・2」,『現代思想』30-05(2002-04):41-56 ※ 資料
「☆08 例えば、様々のことがそれなりの分量をもって書かれており、先にふれたロボトミーや電気ショックの歴史も扱われていてそれなりに勉強になる精神医学の歴史の本でショーターが反精神医学に割いているのは約5頁なのだが(Shorter[1997=2000:325-330])、そこではフーコー、サス、ゴフマン、シェフ、レインと、ベン・キージーの『カッコーの巣の上で』がまとめていっしょにされ、過去のものとされる。必ずしも病因論として括っているわけではないのだが、それにしてもずいぶんな情報の圧縮である。では日本ではどうだったか。私はこの時期以降の精神医療の言説の歴史についてほとんど何も知らず、またそれを追った研究があるかないかも知らないのだが、例えば「反精神医学」の語が表題に使われる小澤[1974]を読んでみても、そこにほとんど病因論は出てこない。別のことが書かれている。」(立岩[2002])
 →原因/帰属


UP:20080320
小澤 勲  ◇精神障害/精神障害者  ◇身体×世界:関連書籍  ◇BOOK 

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