『どう医療をよくするか』
朝日新聞社 編 19731215 朝日新聞社,朝日市民教室・日本の医療7,252p.
■朝日新聞社 編 19731215 『どう医療をよくするか』,朝日新聞社,朝日市民教室・日本の医療7,252p. ASIN: B000J9NNYW 500 [amazon] ※
■目次
A医療制度変革への展望
T医療社会化を考える
U厚生省の存在を問い直す
V地方自治体になにができるか
B医療のなかの技術
W医療の質をどうよくするか
C住民が参加する医療
X「岩手の医療」はとりもどせるか
Y市民は衣料参加できるか
■目次
◆高橋 晄正・中川 米造・大熊 由紀子 19731215 「医療の質をどうよくするか」,朝日新聞社編[19731215:133-188]
「中川 先生の医学論でちょっとね私、危惧をいだくのは、七〇年代の医療は、コンピューターを使った数学中心の、いわゆるシステム医療という形で動いていくと思うんですね。そうすると、先生の考えているのがそっくり「敵側」に利用されてしまう危険があるんじゃないですか。
高橋 科学にしろ統計学にしろ、敵はそうやって歪めて使ってくる。それは十分覚悟の上で、こちらはそれを反撃のために使わなきゃいけない。「むこうは使う」「こっちは使わない」じゃ、もう<0153<ゲバ棒しかないんですよ。(笑)先生が批判しておられる”科学”というのは、資本と権力によって毒された技術ですね。人間性を忘れ、栄誉とカネもうけにつながる技術。それに批判をもっている点はぼくも先生と同じなんですよ。
さらに、科学技術というものは、自然の法則をいかに使うかというものだといっても、無制限に使ったのでは自然破壊がおこる。原則的には、技術はなるべくちぢめていって、自然の中で生きるようにしなければいけない。ただし、現段階では、敵が資本に奉仕する科学技術を使ってやってくるとき、われわれは、やっぱり人民のための科学技術を使わざるをえない。
その意味で、われわれの立場は、「反技術」なんです。しかし、論理と物質性を無視した「非科学」の道はとらない。直観だけではとても勝てないですからね。武田製薬の「飲んでますか、アリナミン」に反撃するためには、こっちも学生たち有志に呼びかけて、いわば人体実験をやって、アリナミンの有害性を立証するデータを用意しなきゃならないんです。」(高橋・中川・大熊[1973:153-154])
→言及:20071223 「山田真に聞く」
高橋「中国医療に関連して大きな誤解が親中国派のなかにもある。ハリ・キュウや漢方は、中国人民が二〇〇〇年来親しんできた「土法」ではあるが、近代科学としての検証をうけたものではない。しかし、病気の初期や軽いときはあれで十分彼らは健康を守ってきた。腕の接合術にみるような高度の上部構造の医療の、底辺を支える初期治療、軽症治療の基盤として、かりにその大部分がプラシー<0173<ボ的なものであるとしても、有害度の強い西洋薬の不必要な浸入を遮断する役割を果たしている。
その中国社会主義社会での巧妙な位置づけを見おとして、技術だけを盲従的に日本に導入しようとする誤った親中国派が、学生層のなかにまである。だが、新しい科学的社会主義社会の建設を目標とする新中国に、超科学的神秘性をもった技術を期待することほど矛盾していることはないですね。ハリ麻酔剤を別として、ハリ・キュウ・漢方はすべて、”伝承仮説”として私たちは科学的にとらえなおさないといけないのです。」(高橋・中川・大熊[1973:173-174])
→言及:20071223 「山田真に聞く」
「高橋 板倉さんの治療学のあり方からいえば、医者は看護学の訓練をうけるとともに、牧師としての修練も積まなければならない。しかし、それは病人を前にしての話であって、病気の発生源の<0181<社会性、病気を治りにくくしている社会的条件を考えるなら、”牧師性”は”革命性”へと止揚されなければならないという問題も、その延長上にあるわけです。
これは、東大闘争の中で最首悟氏が、”医者は病院の窓口で患者を待ちかまえているだけでいいのか”という問いかけをしたことのなかに激しく表れているといえましょう。」(高橋・中川・大熊[1973:181-182])
→言及:20071223 「山田真に聞く」
■言及
◆稲場 雅紀・山田 真・立岩 真也 2008/11/30 『流儀』,生活書院