『異常の構造』
木村 敏 19730920 講談社,182p.
last update:20110408
■木村 敏 19730920 『異常の構造 (講談社現代新書 331) 』,講談社,182p. ISBN-10:4061157310 ISBN-13:978-4061157316 [amazon]/[kinokuniya] ※ m
■内容
・出版社/著者からの内容紹介
精神異常の世界では、「正常」な人間が、ごくあたりまえに思っていることが、特別な意味を帯びて立ち現われてくる。そこには、安易なヒューマニズムに基づく「治療」などは寄せつけぬ人間精神の複雑さがある。著者は、道元や西田幾多郎の人間観を行きづまった西洋流の精神医学に導入し、異常の世界を真に理解する道を探ってきた。本書は現代人の素朴な合理信仰や常識が、いかに脆い仮構の上に成り立っているかを解明し、生きるということのほんとうの意味を根源から問い直している。
「全」と「一」の弁証法――赤ん坊が徐々に母親を自己ならざる他人として識別し、いろいろな人物や事物を認知し、それにともなって自分自身をも1個の存在として自覚するようになるにつれて、赤ん坊は「全」としての存在から「一」としての存在に移るようになる。幼児における社会性の発達は、「全」と「一」との弁証法的展開として、とらえてもよいのではないかと私は考えている。分裂病とよばれる精神の異常が、このような「一」の不成立、自己が自己であることの不成立にもとづいているのだとすれば、私たちはこのような「異常」な事態がどのようにして生じてきたのかを考えてみなくてはならない。――本書より
■著者
1931年、外地に生まれる。1955年、京都大学医学部卒業。現在、河合文化教育研究所主任研究員。道元禅や西田哲学を精神医学にとりいれ、独自の人間学を提起して注目されている。著書に、『自覚の精神病理』――紀伊国屋書店、『時間と自己』中公新書、『人と人との間』『分裂病の現象学』――弘文堂、『偶然性の精神病理』――岩波書店――などがある。
■目次
1 現代と異常
2 異常の意味
3 常識の意味
4 常識の病理としての精神分裂病
5 ブランゲンブルグの症例アンネ
6 妄想における常識の解体
7 常識的世界の「世界公式」
8 精神分裂病者の論理構造
9 合理性の根拠
10 異常の根源
■引用
■書評・紹介
■言及
*作成:山口 真紀