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『分裂病の生物学的研究』

台 弘 (うてな・ひろし)・井上 英二偏 19730330 東京大学出版会,193p.

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last update: 20191225
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■台 弘・井上 英二偏 19730330 『分裂病の生物学的研究』 東京大学出版会,193p. ASIN: B07HTMMDGN 欠品 [amazon][kinokuniya][広田氏蔵書] m

■内容

「はしがき」より

 この「精神分裂病の生物学的研究」は、主題内の各領域で長年研究を続けてきた9人のものに、批判的立場から加わった土居を合わせて10人の仲間が、1970年11月27・28日の両日、伊豆の旅館に合宿して行なった研究討論会の記録である。
 この企画は、台と井上が日常にかわしていた会話の中から生まれた。わが国では、ある重要な問題について、小人数のものが集まり、十分な時間をかけて多角的に討論する形式はまだあまり根づいているとはいえない。この形式では、学会での発表とは異なり、自由な雰囲気の中で徹底的に語り合うことになるから、問題はより深く掘り起こされるのではないかと期待されたのである。
 精神分裂病は、精神医学に関心を持つ人々にとって、過去も現在も最大の課題の一つである。近年、分裂病研究は家族問題や社会文化的な側面に大きく展開し、また人間学的立場からなされる精神病理の研究がさかんに論じられるようになった。このような動向は、分裂病の本質をさぐり治療を進める上に、重要な意義を持つことは間違いないが、ややもすると生物としての人間の側面を見失いがちである。
 一方、分裂病の臨床は、向精神薬の導入によって、この20年間に著しく姿を変えた。しかし、向精神薬の分裂病に対する奏効機転は未だに明らかでなく、新しい薬物の開発もなお模索的な経験にゆだねられている。現状は、かえって乱用と弊害が叫ばれている有様である。
 このような「分裂的」状況は、分裂病研究ひいては精神医学全体のあり方をまことに不安定なものにしている。精神医学の生物学的基礎科学である神経諸科学は、形態、生理、生化学の諸領域で著しい発達をとげ、また行動科学や情報科学のような既存の分科を超えた総合的科学が大きく育っている時代に、精神医学はそれらの成果を十分に自らの中に組み入れることができず、また、医学の他の分科との間隙を自ら大きくしている傾向がある。これらの欠陥はわが国において特に著しい
 私どもは、このような現状認識のうえに立って、精神分裂病の生物学的研究をふりかえり、課題を点検し、将来の研究の進路を打開する必要があると考えた。これなしには、精神医学は正しい発展をとげるとは思われない。参加者は、各自の領域の概観を行ない、研究課題を提示して、その後に相互の討論にゆだねた。そしてそれらは、生物学的研究全体の中で位置づけられるように試みられた。


■目次

T 遺伝学と精神分裂病の解明
U 遅発性分裂病状態の臨床と脳病理
V 精神分裂病のモデル
W 行動科学からみた「自閉症状」
X 臨床生理学の方面から
Y 分裂病――生化学者の立場から
Z 精神分裂病の内分泌学的研究
[ まとめ


■引用



■書評・紹介



■言及





*作成:志知 雄一郎 更新:岩ア 弘泰
UP: 20140415 REV: 20191225
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