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『国家と狂気』

精神科医全国共闘会議 編 19720925 田畑書店,270p.

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last update: 20180225

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■精神科医全国共闘会議 編 19720925 『国家と狂気』,田畑書店,270p. ASIN: B000J9OSW8 [amazon] ※ m

■引用

◆林 徹郎  19720925 「管理社会と精神医療」,精神科医全国共闘会議編[1972]*
*精神科医全国共闘会議 編 19720925 『国家と狂気』,田畑書店,270p. ASIN: B000J9OSW8 [amazon] ※ m

p83,13行
「…烏山共闘会議は、これまで私的精神病院のモデルであった烏山病院が、実は資本制社会に疎外された患者を一層貧しく差べつし、治療(作業療法や生活指導)の名の下に管理し、抑圧しつつ、可能な限り労働力として再生産しようとする、新たな隔離収容の病院でしかないことを徹底的に明らかにした。」(林[1972:83])
 cf.烏山病院闘争

p84,1行
「また五条山病院闘争は〜…つまり市民社会が医療の名の下に精神病院の存在を必要とし、さらに地域管理社会として精神病者と自己を隔離していることを地域家族会と学生・市民による精神医療研究会の積極的な組織化によって提起してきた。」([84])

p84,14行
「50年の精神衛生法の登場は、戦前の精神病院監護法や精神病院法による私宅監置から、はじめて医療の対象として精神病者をみようとした画期的なものということになっている。しかし、その後の61年の精神衛生法一部改正、64年のライシャワー事件、それをうけての65年の精神衛生法改正が物語るのは、精神衛生法第29条による措置入院の強化の歴史であり、私宅監置から実は病院という社会的施設への監置でしかなかった。
 表1は端的に、医療との名目とは別で精神病者の収容、はっきりいえば精神病者つくりが進行していったことを示している。まず表2にみるように、厚生省の全国精神障害者実態調査では、精神障害者がこの10年間急に増加したとは決して示されていないのに、表1の(1)精神科ベッド数の増加は、55年の4万ベッドに比して15年で6倍を超えて、25万ベッドになっており、(2)人口万対ベッド数も5倍近く、23ベッド、しかも、(3)ベッド利用率は100%を常に超えている。これは他科のベッド利用率やベッド増に比べると驚くべき増加である。」([84])

p84,16行
 「しかも、向精神薬の登場により治療が進んだと精神科医がいうにも関わらず、(4)個々の患者の在院日数は確実に伸び続け、ちょっと古い病院にいけば、10年や20年収容されたままになっている患者が多数いるのである。55年の287日に比して、69年には459日になっている。この平均在院日数は併設精神科を含むのであり、単科の精神病院では506日という数字がでている。しかし一方では、表3の向精神薬の生産状況にあるように、低医療費をカバーするため着実に、大量の鎮静剤が患者に投与されている。
 また(5)措置入院は61年をさかいにして急増し、60年の12,3%から突然に30%台になっている。60年代に入って、いわゆる「自傷他害のおそれ」のある措置症状が急に増え、精神病者が急に凶暴になったというのだろうか。いや、けっしてそうではなく、医療とは別の要因によって、「精神医療」がつくられてきたにすぎない。61年、精神衛生法一部改正が行われ、強制入院による国の医療費負担率が二分の一から十分の八に引き上げられた。この改正に当たって厚生省施行通達は、
 「措置入院費に対する国庫負担率の引き上げ等により、自身を傷つけ、また他人に害を及ぼすおそれのある精神障害者は、できるだけ措置入院させることによって、社会不安を積極的に除去することを意図したものである。」
とのべ、続いて63年5月の厚生省公衆衛生局長通知の「精神障害者措置入院制度の強化について」は、
 「精神病院に入院中の患者で、措置症状のある者は病院長に措置の申請を行わせる。生活保護法の医療扶助のうち、措置症状のある患者は、すべて精神衛生法29条の適用患者とする。精神傷害事件の発生の事前防止のために、第23条による診察及び保護の申請に関する周知徹底、第42条による訪問指導の強化を関係機関と連携のうえ計画的に行うこと」
と、なにはともあれ措置入院をすすめている。(これを経済措置などと、肯定するすてきな医師がいる)このようにして、たとえば70年の精神衛生関係予算360億円のうち措置入院費用が97パーセントをしめるにいたるのである。」
 cf.薬について

p99、2行
 「明治33年、戦前の精神医療を特徴付けてきた法律、精神病者監護法ができる。それは警視庁布告の延長上に、「不法監禁防止と公安維持」(帝国議会の政府答弁)を明言し、その第一条に、「精神病者ハ其ノ後見人配偶者親等内ノ親族又ハ戸主ニ於テ之ヲ監護スルノ義務ヲ負フ」と決めたのである。つまり精神病者は家族の責任であり、それを治安的に管理するのは警察であるとしたのである。この時より、国家にとって不用者=精神病者は、家族の手によって消去させる「精神医療」が確立する。」

p103、15行(70年代精神医療の動向―地域管理体制の進行―)
「資料1 「精神衛生特別都市対策要綱」昭和45年5月6日 厚生省

1、目的
 人口の過密な都市その他特定地域において、在宅精神障害者の指導相談、精神衛生思想の事業を保健諸活動として行い、都市における精神衛生施設の増進を図り、もって公衆衛生の向上を期することを目的とする。
2、実施主体
 各都道府県および政令市を実施主体とし、実施機関は保健所とする。
3、実施保健所の選定
 この対策は、管内人口25万人以上を有する保健所または、精神衛生特別都市対策に積極的な事業計画を有する保健所が実施する。
4、事業内容
(1)在宅精神障害者の実態の把握
 市(区)役所、学校、職場、病院、民主委員等の協力を得て、できうるかぎり管内の精神障害者の実態を把握する。個人カードに、障害者の指導、相談等必要な事項を記録し、医療、保護の資料とする。個人カードの保管は、個人の秘密保持の面より、厳重に行い、特別都市対策の目的以外に使用してはならない。
(2)在宅精神障害者の訪問指導、相談
ア、巡回指導班による訪問指導相談
 医師、心理技術者、ソシアルワーカー、精神衛生相談員、保健婦、精神衛生担当者等による巡回指導班を編成し、在宅精神障害者及び其の家族に対し、訪問指導、相談を定期的に行う。
イ、巡回精神衛生相談所の開設
 前記指導班をもって、保健所に定期的に相談所を開設する。保健所以外の場所においても必要に応じて巡回相談所を開設する。
ウ、必要に応じて医師、精神衛生相談員による訪問活動を随時行う。
(3)医療、保護の促進とくに通院医療制度の活用普及
 要医療対象者に対し、受療の徹底を図る。とくに通院医療の公費負担該当者と認められるものに対しては、その趣旨の徹底を図る。
(4)精神障害者の協力組織との連絡、協調
ア、精神障害者の保護のため、家族会、学校、精神衛生協会、精神病院協会、および市(区)役所、職場等関係諸団体と連絡を密にし、精神衛生対策に協力を求める。
イ、精神衛生協力組織として、患者家族会、地域精神衛生協会、精神病院協会等の未結成の地域にあっては、結成の促進を図る。
(5)思想普及
ア、患者、患者家族、学校、職場、関係団体、一般住民に対し、パンフレット、リーフレット、講演会、映画会、見学会、講習会、指導者用必携等を利用して正しい精神衛生知識の普及と衛生教育を活発に行う。
イ、保健所の実施する三歳児検診における精神発達の診査には、できれば心理テスト等精神衛生に関係するテスト等を行い、その結果にもとづいて、必要な指導、相談、思想普及、衛生教育等を行う。

…つまり、@個人カードの作成、A行政の指導のもとでの官制家族会の組織作り、B学校、精神病院、行政、地域ボス集団当が一体となった精神衛生協議会の結成を明文化したものである。」

p110
 「このような地域精神衛生網は、精神医療情勢の項でみた精神病院のベッド増を阻止し、地域が病者をうけいれていくのではなく、実はその逆に、さらなる患者摘発であると同時に、精神医療が狭義の精神病者を対象とすることから拡大し、地域や企業の不適応者、反体制部分を積極的に排除、飼育する手段に発展していくことに他ならない。権力のいう“心の健康”とは、私たちの存在だけでなく、その内部の意識や欲望をも権力が支配していくことである。このようにして、地域住民の手により精神病者狩りが行われ、それを行う住民個々の精神状況もまた国家によって既成品化されていくのが、70年代精神医療の全人民的拡大の姿である。」


作成:阿部 あかね
UP:20080320 REV:20090819
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