『目でみるリハビリテーション医学』
上田 敏 19710130 東京大学出版会,80p.
■上田 敏 19710130 『目でみるリハビリテーション医学』,東京大学出版会,80p. ASIN: B000JA0KCE [amazon] ※ r02.
■引用
4 「T リハビリテーションの理念と組織
リハビリテーションとは何か
「全人間的復権」という理念
[…]
長期にわたる障害をもつ者にとっては、その障害の治療だけでは彼のもつハンディキップのごく一部が解決されるにすぎないし、逆に障害は不変であっても、その他の諸条件の改善によって、全体としてのその障害者のハンディキャップをかなりの程度に軽減しうるということである。問題とすべきなのは障害ではなく全体としての障害者であり、また彼のもつ障害(disability)であるよりは彼に残された能力(ability)をいかによりよく発揮するかである。このように医学上の思想の変化を表現するものとしてとして「リハビリテーション(全人的復権)という言葉が選ばれたのであり、これは従来の患者観の根本的な反省を含んでいる。
連帯性 リハビリテーションは医療関係者だけではなく、すべての人々の仕事であり、また慈善としてではなく連帯性に立って行われるべきものである。それは我々自身がいつ障害者なるかわからない(危険の平等性)からでもある。
目標とする人間像 リハビリテーションが目指す理想的な障害者像は、まず何よりも「自立した人間」である。その自立の度は様々でありうる(下図)が、その能力の許す限り、他の助けを借りず、自立しかつ生産的な人間――それこそが目標である。<0002<
障害者の「全人的復権」を目指すリハビリテーションは医学を含む多くの分野の協力によってすすめらはれるが、医学は依然として第一の重要さを持っている。」(上田[1971:2-3])
Wリハビリテーション医学の実践〈疾患別に〉
「脳性麻痺の治療(1)目標と基本動作
「リハビリテーションの目標
脳性麻痺のリハビリテーションの目標については、色々の考え方(philosophy)があるが、Deaverは次の4つを目標としてかかげている。
1)身体移動の能力をつける。
2)手の動作を可能にする。
3)日常生活に困らない程度の言語をつける。
4)外見をよくし、歩き方、手の使い方などをなるべく正常人に近づける。
これは現実的で実際的な目標であり、これ以上の目標、たとえば教育や職業リハビリテーションをめざすためにも、前提として必要なものである。」(上田[1971:68])
■関連
◆立岩 真也 編 2017/07/26 『リハビリテーション/批判――多田富雄/上田敏/…』,Kyoto Books
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