『逆説としての現代――みすず・対話篇』
芦田 譲治・植手 通有・大川 節夫・川島 武宜・斎藤 真・田中 慎次郎・竹内 好・ドア,R.P.・朝永 振一郎・野上 弥生子・西田 長寿・藤田 省三・本多 勝一・丸山 真男・森 有正・森 恭三・三宅 徳嘉・吉田 秀和・山内 恭彦・湯川 秀樹・渡辺 格 19700625 みすず書房,270p.
■芦田 譲治・植手 通有・大川 節夫・川島 武宜・斎藤 真・田中 慎次郎・竹内 好・ドア,R.P.・朝永 振一郎・野上 弥生子・西田 長寿・藤田 省三・本多 勝一・丸山 真男・森 有正・森 恭三・三宅 徳嘉・吉田 秀和・山内 恭彦・湯川 秀樹・渡辺 格 19700625 『逆説としての現代――みすず・対話篇』,みすず書房,270p. ASIN:B000J9OEN6 \600 [amazon] ※
■内容(本書裏表紙より)
現代の運命としての〈専門〉化は、新しい野蠻の到来に過ぎないのだろうか?この専門の時代において、普遍は単なる言葉のみであり、実体のない遊戯に終わるのだろうか?おそるべきシニニズムへの憂えが至るところで聞かれる。世界との緊張を欠き、自己以外の何ものも認めないとすれば、〈進歩の終末〉はすでに眼前にある。このとき、真に重要なもの、第一義的なものは何であろうか?
まず、真の対話の復活が望まれるであろう。新しいプラトン的対話の精神がフェニックスのように蘇らねばならない。それが文明を形成したのであり、未来もまた、そうであろう。
次に、専門についてはすべてを知り、専門以外については何ものかを知るということである。「私は人間である。人間的なもので私に無縁なものは何一つない」(テレンティウス) 文明の内容をなす、言語について、自然について、歴史について、人は鋭い直覚をもたねばならない。
本書は、もと雑誌『みすず』などに収められた対話篇を編んだものであるが、いずれも現代の核心的なテーマをめぐって、刺戟的であり、かつ広い展望を与えるであろう。
■目次
序
芸術と政治――クルト・リース『フルトヴェングラー』をめぐって(丸山真男・吉田秀和)
フルトヴェングラーとトスカニーニ/フルトヴェングラーの悲劇/
ドイツとドイツ人/現代における芸術家の立場/科学とドグマ/
音楽的感動の特殊性/二つの世界と芸術家
言語・思考・人間――フランス語の世界・日本語の世界(森有正・三宅徳嘉)
歴史的に見たフランス語/日本語の場合/日本語教育の欠陥/
言葉と思想との関連/言葉の抽象性/母国語と外国語教育の在り方/
言葉の持つ美しさと力/翻訳から見た日本文学/敬語の問題/言葉の本質的な意味/
言葉と体験/体験と経験
アメリカと世界――その伝統と展望(斎藤真・田中慎次郎・森恭三)
一 キューバ問題への視座
日本政府の立場/キューバ問題の反省/政治的脅威か?軍事的脅威か?/
キューバ問題と国連/アメリカ人のドグマ
二 コントロールの問題
政治と軍事のコントロール/文民支配の根本にあるもの/指導者の深刻な体験/
赤軍のフラクション/文民支配の古典的と新段階/アメリカの妥協点/
アメリカの内政上の問題点/アメリカの財界の考え
三 セルフ・ヘルプの伝統――アメリカ文明論
ショオのアメリカ論/アメリカ文明の形成/アメリカの未来/アメリカの社会科学/
四 憲法について――セルフ・ヘルプと自衛
アメリカの憲法とイギリスの憲法/日本の討議の仕方/イギリスの討論形式/
日本国憲法の問題/セルフ・ヘルプと自衛
核時代と人間――シラード『イルカ放送』をめぐって(田中慎次郎・朝永振一郎・山内恭彦)
核兵器はもっとも人間的なものである/アインシュタイン−ラッセルの公理/
物理的発想の一例/核兵器と民主主義/シラードの人と意見/国際感覚の問題/
現代風景スケッチ/部分核停と国際政治
ベトナム戦争をめぐって(野上弥生子・本多勝一)
「戦争と民衆」の取材と反響/ベトナム人はアメリカをどう見ているか/
ベトナム戦争はアジアでなければ起らない/ベトナム人の根性/アメリカの矛盾/
日本人として考えること/平和の問題も結局は人間の問題/日本人は大人でない/
批評の意味/ものは変る
仁井田陞博士と東洋学(川島武宜・竹内好・丸山真男)
仁井田さんの学問と生活/その学問の根本にあるもの/学問的に残された問題/
学者としてのタイプ/日本の東洋研究/東洋と日本
近代日本と陸羯南(丸山真男・西田長寿・植手通有)
「陸羯南」のもつ現代的意味/職業としての新聞記者/ナショナリズムの問題/
羯南のイメージの変遷/『日本』新聞とその流れ/明治の日本主義と昭和の右翼/
明治ジャーナリズムにおける羯南/羯南の思想的背景/羯南とド・メーストル/
羯南の政治的リアリズム/羯南における「天皇」/羯南の経済論/羯南と国体論/
新聞記者の独立の意味/羯南の人間/理論と実践の問題/「可能性の技術」としての政治/
羯南の読み方
科学と人間の未来――G.R.テイラー『人間に未来はあるか』を話題に(湯川秀樹・芦田譲治・渡辺格・大川節夫)
“生物学的時限爆弾”/臓器移植と人工臓器/安楽死と死の権利/生れる権利と生きる権利/
個人の幸福か、人類の進歩か/個体の存続と種の存続/科学研究のあり方/
情緒・記憶のコントロール/幸福とはなにか/“ヒポクラテスの誓い”/
研究の自己規制、交流、啓蒙/人間・生物・自然/脳と人格/冷凍人間/新しい生命概念/
松の木のように生きたい/人間はフィクション的である/脳の実験と認識の実証
研究と教育と社会(R.P.ドア・藤田省三)
イギリスの東洋研究/ドア氏の日本研究への道程/日本人の外国研究/
言葉の「鎖国」がもたらしたプラスとマイナス/日本の学問と中間文化/
高度成長と公害/政府の大学政策の前提
対話者紹介
■引用
■書評・紹介
■言及
*作成:石田 智恵