本書は、John D. Owen, The Price of Leisure, Rotterdam University Press, 1969 の翻訳である。著者の J. D. オーウェンはコロンビア大学卒業後、ニューヨーク大学で M. A., コロンビア大学で Ph. D. を取得、現在ジョン・ホプキンズ大学の経済学部助教授として労働ならびに人的資源に関する経済学の分野で活躍している。
本書は、レジャーおよびリクリエーションに関する理論的、統計的かつ計量経済学的な経済分析を通じて、レジャーというきわめてあいまいに観念されてきた問題に真正面から取り組んだ本格的なレジャー・エコノミクスの書である。これまでもレジャーやレジャー時間に関する経済分析はないわけではないが、それらはレジャーを所得や賃金のみの関連でとらえるのが一般的であった。本書ではオーウェンは従来の賃金率による分析に加え、新たに疲労、失業、リクリエーション価格さらに教育、通勤、労働条件などをレジャー時間の決定ファクターとして取り上げ、各種のレジャー時間需要モデルの計量化を試みている。レジャー産業や余暇時代の問題に関する試論がさかんになりつつある現在、本書のような野心的でいて地道な研究は「レジャー」問題に関心を抱く者にとってきわめて示唆的なものとなりえよう。