HOME > BOOK >

『蜜から灰へ』

Levi-Strauss,Claude[クロード・レヴィ=ストロース] 1966  De Miel aux cendres,,Plon.
= 早水 洋太郎 訳 2007,みすず書房,578+42p


このHP経由で購入すると寄付されます

■Levi-Strauss,Claude[クロード・レヴィ=ストロース] 1966  De Miel aux cendres,,Plon.
= 早水 洋太郎 訳 2007『蜜から灰へ』,みすず書房,578+42p
ISBN10:4622081520  ISBN13:9784622081524 8400 [amazon] lc01

■内容

著者による内容紹介
〈蜂蜜とタバコは食物であるが、どちらも厳密な意味での料理には属さない。蜂蜜は、人間ではなく、ミツバチがつくるものであって、そのまま食用に供されるし、タバコの最も一般的な用法は、蜂蜜とは異なり、タバコを料理の手前ではなく、向こう側に置く。誰もタバコを蜂蜜のように生で食べたり、肉のようにあらかじめ火を通して食べたりはしない。 火をつけて煙を吸うのである。・・・第1巻では、生のものと火を通したものという、料理を構成する基本的なカテゴリーの対立を研究したが、熱帯アメリカこそが第二の対立を分析するのに都合が良い。その対立とは、蜂蜜とタバコという、料理法が一方は料理以下であり、他方は料理を超えた先という補足的な性格のものである。従って私が継続するのは、自然から文化への意向の神話的表現の調査である。自然を拡大し、また文化の領域を広げると第一巻で行っていた料理の神話的起源に関する調査に続いて、この巻では、料理の周辺とでも呼べるものの考察ができるであろう

■目次


音あわせのために

第1部
乾いたものと湿ったもの
T 蜂蜜とタバコの対話
U 渇き飢えた動物
V 蜂蜜に狂う娘と卑しい誘惑者と内気な夫の物語
 a チャコ b中央ブラジルのステップにて
第2部
カエルの祝宴
T変奏 1,2.3
U変奏 4,5,6
第3部
八月は4旬節
T夜空の星
U森の物音
V鳥の巣あさりの再登場
第4部
暗闇の楽器
T騒音と悪臭
U様々な球体のハーモニー

アンティネゴーとレヴィストロース  木村 秀雄 訳者あとがき
文献
神話索引
総合索引


引用
「ボロロによれば、人間は植物に(口笛の言葉を使って)話しかけることができた。その頃、植物は独自の存在であって、それらのメッセージを理解することができ、自分で育つことができた。現在では、このコミュニケーションは遮断されているというか、人間に語りかけ、人間が適切にか不適切に答える農耕神の仲介によって継続している。・・・マツィゲンガでは逆である。植物は神の娘つまり独自性をもつ存在であって、父親と対話している。人間にはそのメッセージを聞き取ることができない。・・・神話の時代、彗星がまだ空に現れていなかった頃には、直接に対話する論理的可能性はあった。だが当時植物はまだ半人前であって、コミュニケーションに使えないほど、発声法に欠陥のある言葉しかもっていなかった。」(374)

「植物の語る言葉にはちょうど(口笛と)逆の性質がある。直接の対話の相手、つまり人間に向けられたときには、理解不可能なしどろもどろであり(M298)、明瞭な言葉は人間に向けられない。人間のことしか語っていないのに、人間には聞こえない(M299)。口笛の言葉と不明瞭な言葉とは、互いに対立する対を形成しているのである。」(375)

「笛を吹くことをトゥカノ語では、笛で「泣く」とか「嘆く」とかいう。・・・ギアナのカリナの言葉では、ラッパを「叫ばせる」が、笛に「話させる」という。・・・アクレナの神話」(M145)では、各種の動物独特の鳴き声を「笛」と呼んでいる。>376>この同一視は重要である。『生のものと火を通したもの』で、まさしくM145のところで示したように、特有の鳴き声は、聴覚のレベルで、独特の毛並みとか羽と相同であり、原初の連続性を分割することによる、自然界へのさまざまな大きな相違の導入を表すものである。固有名詞の使用が、同じ役割を果たしているのは、人々の間に不連続を持ち込んだからであって、それ以前は、自然の属性を持つに過ぎなかった生物学的個体の群を、混沌が支配していた。さらに音楽の使用が言語の使用に付け加わる。言葉は、遠くから話したり、語り手の発音が悪かったりすると、理解できなくなる恐れがつねにある。そのとき音楽が話の連続性を回復してくれる。」(375-376)

「今日私たちは、言葉の特性は不連続性であることを知っている。しかし神話の思考は、そのようには考えていなかった。注目すべきは、南アメリカのインディアンは、言葉の可塑性を楽しむということである。・・・旅行者や住み着いた人々にはよく知られている、言語のこのような相互浸透は、アメリカのさまざまな言語の進化と南アメリカのインディアンの言語観において、無視できない役割を演じている」(377-378)

「不明瞭な言葉(マツィゲンガの神話M298 で、植物が人間の主人公に話しかける)は、口笛の言葉と真っ向から対立している。不明瞭な言葉は、他の言語的行為よりも後退した位置にある。それは、コミュニケーションをまっとうできない、言語=以下である。ただしこの位置は、丁寧な言葉と無礼な言葉の両方から等しい距離にある。だからこそ、不明瞭な言葉が、M298の筋の展開の動機になりうるのである。成立しない対話において言葉を発する側の植物は、丁寧であろうとするが、そのメッセージが、言葉の受けてからは無礼であるとみなされ、仕返しに、植物は引き抜かれ、庭の外に追い出される。」(381)

「」
■言及
◇2009/03/31 近藤 宏 「『神話論理』の解読に関する一考察」『Core Ethics』Vol.5、立命館大学大学院先端総合学術研究科、pp.453-451 [PDF]


*作成:近藤 宏 
UP: 20080711 REV20100929
Levi-Strauss,Claude  ◇BOOKTOP HOME (http://www.arsvi.com)