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『革命について』

Arendt, Hannah 1963 On Revolution, Penguin Books
=197508 志水速雄訳,『革命について』,中央公論新社


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■Arendt, Hannah 1963 On Revolution, Penguin Books=197508 志水速雄訳,『革命について』,中央公論新社→199506,ちくま学芸文庫,478p. ISBN-10: 448008214X ISBN-13: 978-4480082145 \1523  [amazon][kinokuniya] p0601

■内容紹介
内容(「BOOK」データベースより)
本書でアレントは、主としてアメリカ独立革命とフランス革命の経験を比較・考察し、自由が姿を現わすことのできる公的空間を保障する政治体の創設として前者を評価する。政党制や代表制ではなく、ある社会の全成員が公的問題の参加者となるような新しい統治形態がその時そこで始められたのである。忘れられた革命の最良の精神を20世紀政治の惨状から救い出す反時代的考察。

■引用

「この近代的イメージにぴったりするリアリティは、十九世紀以来われわれが社会問題と呼ぶようになっているもの、もっとも端的に貧困の存在と呼んでいるものである。貧困と剥奪以上のものである。すなわち、それは絶えざる欠乏の状態であり、痛ましくも悲惨な状態であって、それが恥ずべきなのは、人間を非人間化してしまう力をもっているからである。貧困が卑しむべきものであるのは、それが人間を肉体の絶対的命令のもとに、すなわち、すべての人が別に考えなくても自分のもっとも直接的な経験から知っている必然性(ネセシティ)の絶対命令のもとに、おくからである。群衆がフランス革命の援助に殺到し、それを鼓舞し、前進させ、そして最後にはそれを滅亡に追いこんだのも、この必然性〔貧窮〕が彼らを支配したからであった。彼らは貧民の群集だったからである。彼らが政治の舞台にあらわれたとき、必然性〔貧窮〕は彼らとともにあらわれた。そして、その結果、旧制度の権力は無力となり、他方新しい共和国は死産した。自由は必然性〔貧窮〕に、すなわち、生命過程そのものの切迫に身を委ねなければならなかったのである。ロベスピエールは「生命を維持するのに必要なものはすべて公共の財産でなければならない。剰余だけが私的な財産として認められる」と述べた。(…)最後にいたってロベスピエールは(その最後の演説のなかで)予言のかたちで定式化したように、何が起ったのかはっきりと気づいた。彼はこう述べたのである。「人類史のなかでわれわれが自由を創設する瞬間を逸してしまった以上、われわれは滅びるだろう。」「歴史的瞬間」を逸するほど彼らを長いあいだ悩ませてきたのは国王や暴君の陰謀ではなく、それよりはるかに強力な必然性〔貧窮〕の陰謀であった。この間に革命はその方向を変え、もはや自由が革命の目的ではなくなっていた。すなわち、革命はその目的を人民の幸福におくようになっていたのである。」(p.90-92)

「アメリカの舞台に見られなかったのは、貧困(ポヴァティ)というよりはむしろ不幸(ミゼリー)と欠乏(ウォント)であった。というのは「富者と貧民、勤勉な人と怠惰な人、知識のある人と無知な人のあいだの争い」はやはりアメリカの舞台でも非常に多く見られ、建国者たちの心にかかっていたからである。彼らは自分たちの国が豊かであったにもかかわらず、このような区別は「宇宙と同じくらい古くからあり、地球と同じくらい広大であり」、永遠であると信じていた。しかし、アメリカでは勤勉な人も貧しかったが、みじめ(ミゼラブル)ではなかった。イギリスとヨーロッパ大陸からきた旅行者たちは「一二〇〇マイルを行くあいだ、私は物乞いする人間に一人として出会わなかった」(アンドルー・バーナビー)ということを等しく認め、等しく驚嘆している。したがって彼らは欠乏によっては動かされず、革命は彼らによって覆されなかった。彼らが提出した問題は社会的問題ではなく政治的問題であり、それは社会の秩序ではなく統治の形態と関連していた。(…)代表制は、たんに「自己保存」あるいは自己利益の問題にすぎず、勤労者の生活を守り、それを政府の側からの侵害にたいして保護するのに必要なものであるにすぎない。この本質的にネガティヴな防衛は、政治敵領域を多くの人たちに開放するものではけっしてない。そしてそれは、ジョン・アダムズによれば「自己保存についで永遠に人間的活動の偉大な源泉である卓越への情熱(パッション・フォア・ディスティンクション)」―― 「同等になりたい、あるいは、似たものになりたいというだけでなく人より抜きんでたいという欲求」――を人びとのうちにかきたてるものでもない。そこでその自己保存が確保されてしまえば、貧民は、その生活に重要な意味が与えられず、卓越の光輝く公的領域からは排除されたままの状態に立たされることになる。彼らは、行くところ必ず暗黒(ダークネス)のなかに立ちすくむ。ジョン・アダムズはこの状態を次のようにのべている。「貧しい人の良心は曇りがないのに、彼は辱しめを受けている。……彼は自分が他の人びとの視野の外にあると感じ、暗闇のなかを手さぐりで歩く。人は彼に目もとめない。彼は気づかれないままによろめき、さまよう。教会や市場のような人混みの中にいても……彼はまるで屋根裏か地下室のなかにでもいるように無名状態(オブスキュリティ)〔obscurityは仲間たる人びとに認知されていない状態を意味し、この文脈における目立った卓越の状態distinctionの反対語である――訳者〕にある。彼は異議を唱えられたり、とがめられたり、非難されたりしない。彼はただ気づかれないのである。……完全に無視され、しかもそのことに自分も気づいているということは耐え切れないことである。もしロビンソン・クルーソーがその島にアレクサンドリアの図書館を持っていたとしても、再び人間の顔を見ることはできないということが確実であったとしたら、彼は書物を開いてみる気になっただろうか?」(p.103- 105)

■紹介・言及

◇早尾 貴紀 20080331 『ユダヤとイスラエルのあいだ――民族/国民のアポリア』,青土社,348p. ISBN-10:4791763947 ISBN-13: 978-4791763948 \2730 [amazon][kinokuniya] w/ah02 w/se02 w/bj02

◇橋口 昌治 200908 「格差・貧困に関する本の紹介」, 立岩 真也編『税を直す――付:税率変更歳入試算+格差貧困文献解説』,青土社


*作成:橋口 昌治 
UP:20090804 REV: 0811
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