? Kuhn, Thomas S. 『科学革命の構造』
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『科学革命の構造』

Kuhn, Thomas S. 1962, 1970, The Structure of Scientific Revolutions, The University of Chicago Press.

=19710305 中山茂訳 『科学革命の構造』,みすず書房


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■Kuhn, Thomas S. 1962, 1970, The Structure of Scientific Revolutions, The University of Chicago Press.
=19710305 中山茂訳 『科学革命の構造』,みすず書房,  277p, 2200 ISBN-10: 4622016672  ISBN-13: 978-4622016670 [amazon] [kinokuniya] ※

■目次
まえがき
第一章 序論:歴史にとっての役割
第二章 通常科学への道
第三章 通常科学の性格
第四章 パズル解きとしての通常科学
第五章 パラダイムの優先
第六章 変則性と科学的発見の出現
第七章 危機と科学理論の出現
第八章 危機への反応
第九章 科学革命の本質と必然性
第十章 世界観の変革としての革命
第十一章 革命が目立たないこと
第十二章 革命の決着
第十三章 革命を通しての進歩
補章――一九六九年
     第一節 パラダイムと集団の構造
     第二節 集団の立場の構成としてのパラダイム
     第三節 共有する例題としてのパラダイム
     第四節 暗黙の知識と直観
     第五節 見本例、非通約性、革命
     第六節 革命と相対主義
     第七節 科学の本質


訳者あとがき



■引用
太字見出しは作成者による
パラダイムparadigm
この「パラダイム」とは、一般に認められた科学的業績で、一時期の間、専門家に対して問い方や答え方のモデルを与えるもの、と私はしている。(p.v)

一つには、彼らの業績が、他の対立競争する科学的研究活動を棄てて、それを支持しようとする特に熱心なグループを集めるほど、前例のないユニークさを持っていたからであり、いま一つにはその業績を中心として再構成された研究グループに解決すべきあらゆる種類の問題を提示してくれているからである。
 これら二つの性格を持つ業績を、私は以下では「パラダイム」paradigmと呼ぶことにする。(pp.12-13)

カヴェルとの関係
しかし、その後知的な相談相手としての位置は、バークレーの同僚スタンレー・カヴェル(Stanley Cavell)にとって代わられた。そのカヴェルは、主に倫理学と美学に関心を持つ哲学者であるが、私と全く一致した結論に達していて、常に私に刺戟とはげましを与えてくれた。さらに彼は、私のまだ未完成のアイディアを持ちかける唯一の人物である。このようなつき合いの仕方を通じて、この本の初稿を準備するにあたって、彼がいくつかの大障碍を乗り越える道を私に示してくれたのである。(p.ix)

通常科学
 本書で「通常科学」という場合は、特定の科学者集団が一定期間、一定の過去の科学的業績を受け入れ、それを基礎として進行させる研究を意味している。(p.12)

科学革命
科学革命とは何ぞや、科学の発展におけるその機能は何か。このような問いに対する答えは、すでに今までの章で予想されてきた。特に今までの議論で指摘したことは、ここで科学革命という時、それはただ累積的に発展するのではなくて、古いパラダイムがそれと両立しない新しいものによって、完全に、あるいは部分的に置き換えられるという、という現象である。(p.104)

専門母体disciplinary matrix
disciplinary(専門)といったのは、それが特定の専門領域の研究者が共通して持っていることを指したのである。matrix(母体)といったのは、それがそれぞれさらに細かく指定する必要のあるいろいろな種類の秩序ある要素から成るからである。私の初版でパラダイム、パラダイムの部分、パラダイム的、としたグループの採用した立場のすべて、あるいはほとんどのものは、disciplinary matrixの構成要素であり、かくしてそれらは全体を形成し、一緒になって機能する。しかしそれらは、もはや一つ一つ断片として論じられない。(p.207)

様式の革命・断絶とパラダイム
本書を愛読してくれた人の多数は、愛読の理由として、本書が科学を解明しているからというよりも、本書の主要点が他の分野にも同様に応用できると読み取ったからである。私は彼らの意味することがよくわかり、だから、その試みの足を引っ張るようなことをしたくないが、彼らの反応の仕方には私には疑問に思われる点があるのである。本書で科学の発展を、非累積的断絶で区切りをつけられた伝統に縛られた期間の継起として描いたかぎりにおいては、その論点は確かに広い応用性を持っている。しかし、この点はもともと他の分野から借りてきたものであるから、そうなるのは当然である。文学、音楽、芸術、政治、その他の人間活動についての歴史家たちは、同じように彼らの題材を描いてきた。様式や嗜好や体制の革命的断絶で時代区分することは、彼らの常套的な手口になっている。このような考え方に関して私が独創的であるとすれば、それは主に、もっと違った道で発展すると広く考えられてきた科学に同じ考え方を応用したことにあるのである。そのほかに、私がはっきり取り出せる意味のある貢献の唯一のものは、具体的な成果、見本例としてのパラダイムの概念である。たとえばもし、絵画が様式のある抽象的な大綱に合わせて創られるよりも、むしろお互いに他をモデルとするのであると考えられるなら、芸術における様式の概念をめぐってはてしなく論争される始末の悪い難点の若干は、消えてしまうのではないかと私は思う。(pp.240-241)



*作成者:篠木 涼
UP: 20080625
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