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『我国盲学校児童・生徒の失明原因』

日本赤十字社・日本眼衛生協会 編 19550515 『我国盲学校児童・生徒の失明原因』,日本赤十字社,32p.


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■日本赤十字社・日本眼衛生協会 編 19550515 『我国盲学校児童・生徒の失明原因』,日本赤十字社,32p. ASIN: B000JB4O9S [欠品] [amazon] ※v01


■目次



序 辻村泰男…2
盲学校児童・生徒の失明原因調査によせて 大島宗二…3
序にかえて 庄司義治…4
盲の統計作製について 大山信郎…5
盲学校児童・生徒の失明原因に関する第二回調査について…6
我国盲学校児童・生徒の失明原因 小山正野…10


■引用



(p18)
 弱視児童は普通の学校に於ては正眼児童に伍して弱い視力を一層酷使することとなり,盲学校に於ては視力がある為に,盲教育に適さぬのみならず,盲児童に対して誤つた優越感をもつことになつて共に悪い結果を来たすことになる。弱視児童の視力を保護し又その学習を容易ならしめる為に,之等児童の教育について適当な方法が講ぜられなければならない。
 イギリスでは,早くも,1908年に近視児童の為の特別学級が設置せられており,アメリカでも1913年にボストン市に最初の視力保存学級が設けられて,共に50年に近い弱視教育の歴史をもつている。我国でも昭和8年12月(1933年)に東京都麻布区の南山小学校に視力保存学級が設置せられたが,戦争の為中止のまま今日に至つている。
 弱視教育の型式には,視力保存学校と視力保存学級の型式があり,欧州諸国に於いては学校の型式が採用せられている様であるが,アメリカに於ては学級の型式がとられている。そして学級の型式にも,盲学校に視力保存学級をおくところの盲学校方式(Placement in the Schools for the Blind),教育大学等附属の特殊学校に弱視児童の為の学級をおく特殊学校方式(Placement in Special Schools),及び公立の小中学校に特別の視力保存学級をおく方式(Placement in Segregated Classes in the Public Schools)等が行われているが,これらはいづれも弱視児童を一般児童から分離している点,その他色々の理由で好ましくない,特に盲学校方式は最もよくないとされている。アメリカ失明防止協会が,最も理想的な方式であると勧告しているのは,Cooperative placement planと呼ばれるもので,弱視児童を普通児童と一緒に学校に受入れ,眼を使う学科だけを特別設備のある教室で特別に訓練を経た先生が教え,その他の授業はすべて一般学級でする方法である。之は児童の積極面に重点をおき,ハンデイキヤツプを最小限に評価するもので,弱視児童にも又その両親にも社会的,心理的の好影響を与えているといわれている。
 この他に,最近イリノイス州では,Itinerant Teacher planといつて,数区の学区が共同して一人の弱視教育の資格のある先生をおき,一定の計画の下に巡回教育をする方法が試みられている。この様な方法は,現在の我国に於ても比較的容易に行われるのではなかろうか。
 曩に我国の弱視教育に先鞭をつけられた東京都に於て之が復活せられると共に,他の大都市に於ても弱視児童の保護と教育が真剣に考慮せられることが望ましい。それには先づ弱視教育の為の先生の養成が問題である。国立教育大学で盲及び聾教育の先生を養成せられていると同様に,弱視教育の先生の養成を文部省で計画せられたいと思う。

(p32)
結び
 我国児童の失明原因を明らかにする為に,日本眼衛生協会では,全国盲学校の協力を得て,1954年第二回の失明原因調査を実施した。之は眼科医の検査と診断による7,032名の盲学校生徒の記録を基礎としたものである。
 第二回調査の結果もまだ色々不満足な点があるが,1952年の第一回調査に比べると,可成り正確な結果を得ることが出来たと思う。今後各方面の一層の協力を得てより正確なデータを得る様に努力したいと考えている。
 前後二回の調査の結果からみて,我国児童の失明予防上重要な事柄は次の諸点であると思う。
1. 伝染病,全身病等予防の可能な失明が僅か2年の間に減少の傾向を示しているのは誠によろこばしいことであるが,欧米諸国に比べると今尚はるかに高率である。特に乳幼児期の失明の予防に充分な関心が払われねばならない。
2. 先天素因による失明,殊に先天異常の原因について研究されると共に,治療の方法のない遺伝性眼疾患の予防の為に優生教育が充分に行われる必要がある。
3. 全国数万に上ると思われる弱視児童の視力の保護と教育について適切な方法が1日も早く考慮せられねばならない。
4. 盲児童其他の視力障害児童に対する社会的,教育的,衛生的施策が極めて不充分であつて,之ら児童は社会福祉計画の片隅に取残されているかの感が深い。関係機関の協力が望まれる。


*作成:植村 要
UP:20130206 REV:
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