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『全体主義の起原』

Arendt, Hannah 1951 The Origins of Totalitarianism, Harcourt Brace &World, Inc.
=197207 大久保 和郎訳,『全体主義の起原T 反ユダヤ主義』,みすず書房→198107,【新装版】,245p.ほか


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Arendt, Hannah 1951 The Origins of Totalitarianism, Harcourt Brace &World, Inc.
=197207 大久保 和郎訳,『全体主義の起原T 反ユダヤ主義』,みすず書房→198107,【新装版】,245p. SBN-10: 4622020181 ISBN-13: 978-4622020189 \4725  [amazon][kinokuniya] p0601
=197212 大島 通義・大島 かおり,『全体主義の起原U 帝国主義』,みすず書房→198107,【新装版】,308p. ISBN-10: 462202019X ISBN-13: 978-4622020196 \5040  [amazon][kinokuniya] p0601
=197412 大久保 和郎・大島 かおり,『全体主義の起原V 全体主義』,みすず書房→198107,【新装版】,345p. ISBN-10: 4622020203 ISBN-13: 978-4622020202 \5040  [amazon][kinokuniya] p0601

■内容
20世紀の病理に対する記念碑的著作。前世紀におけるドレフュス事件と反ユダヤ主義形成を追究。1972年初版

全3巻
1:反ユダヤ主義
2:帝国主義
3:全体主義

■Hannah Arendt (ハンナ・アーレント)
1906 年、ドイツのハノーファー近郊リンデンでユダヤ系の家庭に生まれる。マールブルク大学でハイデガーとブルトマンに、ハイデルベルク大学でヤスパースに、フライブルク大学でフッサールに学ぶ。1928年、ヤスパースのもとで「アウグスティヌスにおける愛の概念」によって学位取得。ナチス政権成立後(1933 年)パリに亡命し、亡命ユダヤ人救出活動に従事する。1941年、アメリカに亡命。1951年、市民権取得。その後、バークレー、シカゴ、プリンストン、コロンビア各大学の客員教授を務め、1967年、ニュー・スクール・フォー・ソーシャル・リサーチの哲学教授に任命される。1975年ニューヨークで急逝。著書 『全体主義の起原』1-3 (1951, みすず書房 1972年、1972年、1974年) 『人間の条件』(1958年、筑摩書房 1994年)、『イェルサレムのアイヒマン』(1963年、みすず書房 1969年)、『過去と未来の間』(1954年 1968年 みすず書房 1994年)、『ラーエル・ファルンファーゲン』(1959年、みすず書房、1999年)他。

■引用

「ヴェルサイユ条約によってなされた規則の結果から明らかになったことは、ヨーロッパの現状の維持をも回復をも不可能にした多くの原因の一つが、西欧の国民国家体制は全ヨーロッパに拡大し得ないものであるという点にあることだった。つまりヨーロッパは百五十年以上にもわたって、全人口のほとんど四分の一については適用不可能な国家形態の中で生きてきたわけである。国民国家の原理の全ヨーロッパでの実現は、国民国家の信用をさらに落とすという結果をもたらしたにすぎなかった。国民国家の原理は該当する諸民族のごく一部に国民主権を与えたに止まり、しかもその主権はどこでもほかの民族の裏切られた願いに対立する形で貫徹されたため、主権を得た民族は最初から圧制者の役割を演ずることを余儀なくされたからである。被抑圧民族のほうはほかならぬこの規制を通じて、民族自決権と完全な主権なしには自由はあり得ないとの確信を強めた。従って彼らは民族的熱望を踏みにじられたばかりでなく、彼らが人権と考えたものまで騙し取られたと感じた。」(H・アレント『全体主義の起原U』p.244)

「無権利者が蒙った第一の損失は故郷の喪失だった。故郷の喪失とは、自分の生れ育った環境――人間はその環境の中に、自分にこの世での足場と空間を与えてくれる一つの場所を築いてきたのだ――を失うことである。諸民族の歴史は個人や民族集団の多くの放浪についてわれわれに語っており、そのような不幸はそこではほとんど日常的といえる出来事である。歴史的に例がないのは故郷を失ったことではなく、新たな故郷を見出せないことである。(…)それは空間の問題ではなく、政治組織の問題だったのである。人々は長いあいだ人類を諸国民からなる一つの家族というイメージで思い描いてきたのだが、今や人類は現実にこの段階に到達したことが明らかとなった――だがその結果は、これらの閉鎖的な政治共同体の一つから締め出されたものは誰であれ、諸国民からなる全体家族からも、そしてそれと同時に人類からも締め出されることになったのである。」(p.275-276)

「職業も国籍もまた意見も持たず、自分の存在を立証し他と区別し得る行為の成果をも持たないこの抽象的な人間は、国家の市民といわば正反対の像である―― 政治的領域においては市民たることはすべての相違と不平等を消し去る巨大な力として働き、すべての市民は絶えず平均化されてゆくのだから。なぜなら、無権利者は単なる人間でしかないといっても、人と相互に保証し合う権利の平等によって人間たらしめられているのではなく、絶対的に独自な、変えることのできない無言の個体性の中にあり、彼の個体性を共通性に翻訳し共同の世界において表現する一切の手段を奪われたことによって、共同であるが故に理解の可能な世界への通路を断たれているからである。彼は人間一般であると同時に個体一般、最も普遍的であると同時に最も特殊であって、その双方とも無世界的であるが故にいずれも同じく抽象的なのである。
 このようなカテゴリーの人間の存在は文明世界に対する二つの危険を孕んでいる。彼らが世界に対して何らの関係も持たないこと、彼らの無世界性は、殺人の挑発に等しいのだ――世界に対して法的にも社会的にも政治的にも関係を持たない人間の死は、生き残った者にとって何らの影響も残さないという限りで。たとえ人が彼らを殺しても、何ぴとも不正を蒙らず苦しみさえ受けなかったかのように事は過ぎてしまう。」(p.289)

■紹介・言及

小泉 義之 20081025 「保険セールスマンとしてのハイデガー」,哲学会発表

◇橋口 昌治 200908 「格差・貧困に関する本の紹介」, 立岩 真也編『税を直す――付:税率変更歳入試算+格差貧困文献解説』,青土社


*作成:橋口 昌治 
UP:20090804 REV: 0811
篠原 雅武  ◇貧困・格差関係の本  ◇身体×世界:関連書籍  ◇BOOK 
 
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