HOME >

企画3関連



■企画概要(300字)

  東アジアで、障害者、障害者でもあるALSや筋ジストロフィーなどの難病の当事者・関係者のネットワークを作り発展させる。実際に交流する機会を作る。多言語のHPを作り情報交換する。インターネットを使って交信する韓国・台湾・モンゴルについては既に関係がある。中国との連携も模索する。例えば韓国での当事者の活動は活発で、差別禁止法も制定され、日本の先を行っている。同時に、日本の運動から得てきたものがあり、さらに得ようとしているところもある。また、例えばモンゴルの草原で人工呼吸器をつけての生活など考えにくいように思うが、本当にそうか。地球上のどんなところでも生きていける道筋を見出すために活動する。

■自分のプロジェクトにおいて解決したい社会的課題は何か?

  どこでも、誰でも、最も重い障害をかかえる人も生きていけるための環境があるとよい。しかしそんなことは無理だと言われる。医療を受けられない地域もあるのだからと、高度・高価な医療を利用するのは遠慮した方がよいといったことも言われる。たしかに様々な差は様々な困難をもたらすだろう。しかし今よりよい生活を送る手立てを共に考え、実現できるところから実現していくことは可能なはずだ。都市化や産業化の度合いにおいて様々な地域を抱える東アジアにネットワークを作っていき、互いが抱える問題を共有し、行動できる部分で行動し、必要な施策の実現を訴えていく拠点とする。

■下記の(上記の)課題を解決するために用いる方法は何か?また、その方法を実行するために、どのような人々と制度をネットワークによって巻き込むのか?

各国の活動には共通する部分があり、また独自の経過とそして成果とがある。成果と課題とを共有する。コミュニケーション技術の支援を行ない、インターネットを利用した日常的な交信を恒常化する。コンピュータは、それを使う人的・制度的な仕組みを整えるなら、地域の差、身体の状態の差を超えることのできる効率的な道具である。そこでやりとりされ蓄積される情報を含め、多言語のHPに掲載し、発信する。そして日本や韓国を会場としたシンポジウム等を開催する。そこに各国の政策担当者や研究者も参加してもらう。移動やコミュニケーションなどについて様々な困難があるが、その解決策を見出していくこと自体にも意義がある。活動の事務局を担う大学院には、中国・台湾・韓国から留学している大学院生がいる。そして、この企画の特色は両方に関わる人か複数いることである。場として活用するとともにそこで人を育てる。

■下記の(上記の)方法を実行に移し、設定したプロジェクト課題を解決する成果(アウトカム)、社会のどのような部分(人や制度)に対して、どのような建設的な波及効果を引き起こすことができるか?

  情報・知識の差の解消、例えば地域間格差の大きさについての正確な情報の獲得が多くの面での前進をもたらすことを、日本の障害者・病者たちも経験してきた。情報の獲得、交流は、各国の当事者に、可能性の存在、手段の存在を知らせることになる。とくに相対的に数の少ない障害・病気となると、専門雑誌に載る医学的な知識は別として、研究者・政策担当者も含め、知識が不足している。国際的に見て遜色のない水準を達成しようという意志がある。各国の制度や各国での試みについての知識が共有されることによって、政策面における前進も期待される。

■2 このプロジェクトで解決を狙う社会的課題は何か?

  今より多くの人が、よりよい生活の質をもった生活を送ることができるようにすることを課題とする。
  地球上のどこでも、誰でも、最も重い障害をかかえる人も生きていけるための環境ができるとよい。しかしそんなことは無理だと言われる。医療を受けられない地域もあるのだからと、高度・高価な医療を利用するのは遠慮した方がよいといったことも言われる。たしかに様々な差は様々な困難をもたらすだろう。しかし今よりよい生活を送る手立てを共に考え、実現できるところから実現していくことは可能なはずだ。
  そこでまず、都市化や産業化の度合いにおいて様々な地域を抱える東アジアにネットワークを作っていき、互いが抱える問題を共有し、行動できる部分で行動し、必要な施策の実現を訴えていく拠点とする。おそらく、困難であると考えられてきた地域、居住環境においても、相当のことができることを示すことができるはずである。
  日本の障害者たち、全国自立生活センター協議会(JIL)、DPI日本会議(DPI=Disabled Peoples' International)など障害者たちの組織は、ここ20年ほど韓国の人たちとつながりを作ってきた。またALS等の難病の人たち、その組織である日本ALS協会等も国際会議他で台湾・韓国・モンゴルの人たちと交流をもってきた。
  そうした蓄積を生かして、一つに、HP(後述するグローバルCOE「生存学創生拠点」のHPhttp://www.arsvi.com)を多言語(英語・韓国語・中国語・日本語・…)のものとし、障害や病、各国の制度や運動、研究などについての情報を掲載し発信していく。
  一つに、日本や韓国を会場としたシンポジウム等を開催する。移動やコミュニケーションなどについて様々な困難があるが、その解決策を見出していくこと自体にも意義がある。各国の活動には共通する部分があり、また独自の経過とそして成果とがある。その成果と課題とを共有する。またそこに各国の政策担当者や研究者も参加してもらう。
  同時に一つ、コミュニケーション技術の支援を行ない、インターネットを利用した日常的な交信を恒常化する。コンピュータは、それを使う人的・制度的な仕組みを整えるなら、地域の差、身体の状態の差を超えることのできる効率的な道具である。

■3 なぜ上記の課題は解決する必要があるのか?

  今のままでは生き難い人たちがたくさんおり、その人たちが生き易くするために考えられることを考え、行なうべきことを行なうべきであるからである。それは、たしかに困難ではあるとしても、可能であると考える。
  障害や病は――いくらか地域差がある場合もあるが――どこにでも現れる。しかしたまたま住んでいる場所によって、また他で知られていることを知らないことによって、行なわれていることがなされないことによって、生きられないとしたら、またよく生きられないとしたら、よくない。重い障害があるなら大規模な施設がなければ生きていけないように思われるが、そうと限らない。施設の据付の重い巨大な機械がないといけないように思われるが、そうでもない。各地の特性に応じた在宅医療・在宅福祉の仕組みが可能であり、そのための経験の蓄積もある。今回の企画はそのモデルを作るためのものでもある。自発的な試みがあって、その重要性と実績が知らされて、その後に制度が付いて来る。よしあしと別に、現実はそうである。だから、地道な小さな活動の積み重ねは必要だし、同時に、それを大きく取り上げて、人々に知らせることにも意義がある。そうした活動を行なっていく。
  そしてこの際、これまでの模範は模範にならない。福祉・医療について、ヨーロッパとくに北西ヨーロッパは、たしかに先進的であり、私たちもそこから多くを学んできた。これからもみならうべき点は多くある。しかしそこでは多くの人は生きられる時間のその途中で生をやめてしまう。「終末期」が早くやってきてしまう。それをそのまま受け入れてよいか。「人工呼吸器を付けて<まで>生きる」人の割合は、日本の方が大きい。自律、自己決定の大切さはおおいに認めよう。また、家族の過大な負担を美化すべきではない。だが、それでも生きるための手立てを様々に作り、その生を支えようとしてきた日本を含む国々の試みは知られる必要があるし、その経験は共有され、これから使われていってよいはずだ。
  「資源は有限だ」というそれ自体は間違いではない言葉が脅迫的に作用し、その状況下で、「よくよく考えて生きるかどうかを決めなさい」などと言われる。そんな筋で未来を語るしかないとは思われない。今回は手始めに行なえることを幾つか行なうというなのではあるが、それでも、可能なことが様々あることを示せるはずである。

■4 このプロジェクトの成果(アウトカム)として、社会にどのような建設的な波及効果が生じるのか?

  この地域でのモデルを確立できるのであれば、世界の他の地域でも可能性が出てくる。私たちがさしあたってできるのは情報の交換、発信に限られる。しかし、具体的・制度的な仕組みにしても、物と物に関わる知識・技術があって、そして人がいれば可能である。そしてどこの国にも地域にも、人のために働く人そのものは多くいる。むしろ働けるし働きたいが働けない人がたくさんいる。そして材料自体が足りないのでないなら、技術と知識をうまく共有することができるなら、本来は、現実を作っていくことができるはずである。とすれば、可能性と現実とをより広く知らせることもまた重要であり、その効果が期待できる。
  一つに、ことを決めることに関わる人々に対して。すくなくとも今より多くの人々が知ることになる。すでに積極的な報道機関があり、関心をもつジャーナリストがいる。そして国際的な集会は報道の対象になりやすい。報道がなされることによって、問題の所在が広く社会に理解される。そして、各国の政府が知ることになり、政治家が知ることになる。隣の国々のことを知ることは、国際社会における位置取りにおいても社会福祉・医療の領域での整備が必要と考える人たちに対して、すくなくとも一定の、積極的な効果を与えるはずである。
  一つに、ことを行なおうという人々に対して。企業やNPOはなんらかの支援をしようと思っている。とくにコンピュータ関連企業にその意識は強い。しかし具体的にどこにどのように援助したらよいかがわからない。技術を使いこなすための人と人のつながりを用意することができないから――有効に使われるべき領域でありながら――有効に使われない。例えば、身体が動かない人が指のわずかな動きを伝えるスイッチ等を介しコンピュータを使って交信するのだが、その技術は既に存在し、必要な機器も高価なものではない。しかし、その技術は、それ自体は安価なスイッチの細かな設定を行なう人――日本ではボランティアがそれを担ってきた――がいないと使えるものにならない。私たちはその仕組を広げていく。結果、企業の(社会貢献活動を含むがそれだけでない)活動が実効的なものとなる。将来的には企業との提携も視野に入れて活動を進める。

■5 また上述の波及効果は、どのような人々(社会集団)を裨益するのか?

  まず、A:現に障害や病がある人たちを、そして、B:より多くの人々を裨益する。
  一つに、すぐに見込める益がある。簡単に大きな制度が変わらないとしても、各々の国・地域において、生活の向上につながる部分は多いはずである。4に記したように、小さな技術、技術そのものというよりその使用法、そのことに関わる人の配置によって、ときに決定的なことが起こる。例えば言語によるコミュニケーションができなかった人ができるようになるといったことが起こる。これは多くの場合、そう難しいことではない。しかし重大なことである。それがまず数十人、そして数百人と拡大していくなら、その意義はある。
  一つに、その人たちの集合性の獲得・拡大に資する。数十万人といった大きな集団なら、各国でそれなりの団体を形成し、政府に対する圧力団体として振舞うこともできる。だが、数の多くない病・障害だと難しい。医療等の仕事は職業として成立しており業界を形成するから、それなりの活動はできる。他方、本人、本人に近い人たちの組織・活動もまた同時に必要なのだが、それは資金的・組織的な基盤が弱いことが多く、その力もまた限られることになる。これは両者の協力関係を作っていくためにもよくない。この企画を各国における当事者の集まりの形成・強化につながるものにする。
  B:今後に不安を感じている多くの人たちに対して。
  日本でも、高額を要する制度の維持が難しいことが感じられる。制度を広く行き渡らせることと、たくさん必要な人にたくさん提供することが、択一の二つであるかのように語られる。「先進国だからあなたは生きていられるが…」と言われたりする。他方で、「先進国では<無駄な延命>はしない」と言われたりもする。そのようにしか考えられないものなのか。これまで、まがりなりにも、最も重度な人を置き去りにしないようにしてきた歴史がこの地域にはある。そしてそのことを、欧米の障害者・病者たちも知り、敬意を払っている。今後も私たちがその方向に歩き続け、結果、誰もが生きられる可能性と現実性を感じられるようになるなら、現状の閉塞と未来への不安を感じている多くの人が、そう暗くなる必要もないと思いなおすことになる。

■6. このプロジェクト終了後にも、上述の波及効果を持続させるためには、どのようなフォローアップが必要か?

  人材、そして人材の育成がなによりも必要である。人がいればたいがいのことはなんとかなるが、人がいなければ活動は停滞し、それで終わってしまうことさえあるだろう。そしてその背景にはむろん、障害者や難病の民間組織には、資金的な困難があり、そのことによって人的な困難も生じている。そこで基本的には非営利民間組織の活動に対する支援の拡大が求められるのだが、それと同時に、もう一つ、教育・研究機関が民間組織と連携しながら、活動の継続・発展に寄与するという道がある。
  私たちは現在、グローバルCOEプログラム「生存学創成拠点」の活動を遂行している(2007年度開始)。本企画にも、COEを支援する強力な事務局スタッフと、大学院生が関わっていく。大学院生にはアジアからの留学生がいる。高齢者福祉を研究する中国からの留学生、韓国の障害者施策・障害者運動について研究する韓国からの留学生がいる。また民間の全国組織・地域組織での活動者、福祉機器メーカーに働く人、地方議会の議員等がいる。車椅子の利用者、視覚障害者等、障害をもつ人たちも多い。大学院生・研究者・活動者の育成、情報の収集・蓄積・提供は、研究科(立命館大学大学大学院先端総合学術研究科)の立ち上げ時(2002年)から行なってきたが、このCOEプログラムのもと、今後も時間をかけて行なっていく。それを一つの基盤として、他にも研究資金・活動を資金を得ながら、活動を展開していく。
  大学などの教育・研究機関はともかく活動のための恒常的な場所を有し、そしてある程度の人を有する。そして人を育てていく機関である。この企画の拠点とする研究科は5年一貫制であり、すくなくとも5年研究を行なう。そして、その研究科の特色は、研究と社会的実践の双方に関わる人が多くいることである。大学院生には、今回この企画に関わる民間組織の役員として活動している人もいるし、そうした組織とその活動を研究の主題・対象としている人もいる。そして各国からの留学生を含む大学院生・若手研究者たちは、成果を各国に持ち帰り、また築いてきたネットワークを生かして活動を続けていく。教員もまたNPOの活動に協力してきた。難病者の地域居住の支援に関わったり、NPOの立ち上げに関わったりしてきた。こうした協働の形態が、活動の持続・発展のために有効であると考える。

■7. プロジェクトの成果(アウトカム)を達成するために、何を、どのように、どこで行う予定なのか?

  最初から大きな催しを行なったとして、結局はたんなる儀式のようなもので終わってしまうことはよくある。準備なしには実質的な成果を生むことにはなりにくい。まず、留学生や民間団体が受け入れる研修生、その人たちが有する社会的ネットワークを利用して、日常的な情報収集・蓄積・提供の活動を行なう。私たちのウェブサイトhttp://www.arsvi.comには年間700万件を越すアクセス(個別ファイルへのアクセスの総数)があるが、今のところ日本語に使用者に利用者は限られている。英語による発信については基本的にグローバルCOEの資金を用い、こちらでは、まず中国語・韓国語による情報掲載・発信・交信を行なっていく。
  そして、これらを知らせることも兼ねて、日常的な交信の仕組を作る。言語の通訳・翻訳の問題を考えるなら、また、多くの人たちが――ときには、一日に数百字といったように、きわめて――ゆっくりと会話をすることを考えるなら、インターネットの利用は有効であり、その方法・仕組を作り、軌道に乗せることには意義がある。そしてこの部分については、既にメンバーの一人が科学研究費と民間財団からの資金提供を受け、国内のALSの人たちの交信・交流を容易に実現するための企画――システム自体はWindows Messengerを使用した簡素なもの――を進めている。
  それとともに、2008年度にまず一度、神経性難病について、京都で、各国の本人たち、家族・関係者、そしてその組織が直面している問題について、各々の活動について、事務局の主要メンバーを招き、時間をかけて細かなところまで話しあう機会をもつ。
  そして次に、時間をかけて検討し、打ち合わせを行なった後、2009年度には、韓国で、公開の集まりを実施する。日本においても病者・難病という範疇で括られる人・組織と障害者と呼ばれる人・組織の連携はいまだ途上にあり、それは韓国他でも同様である。私たちの企画が、これら地域での、実際には多くの利害と課題を共有している人たちが共に考え、議論する場となり、民間の活動の活発化、政策における前進につながることを期待する。またそこで、今後どのような恒常的なネットワークが必要でありまた可能であるのかを確認し、今後の活動につなげていく。

■8. 目的を達成するためにどのようなネットワーク形成に取り組み、どのような人たち(地域・分野・時間の蓄積、などにおいて異なる立場にある)をつなげるのか、図を用いても構わないのでわかりやすく記してください。
※助成期間中に行われる活動内容や時期については、P.7のスケジュール表に記入してください。

  ◆事務局・情報発信&媒介拠点+協力者
  立命館大学グローバルCOE生存学創成拠点・同大学大学院先端総合学術研究科が事務局を担当する。COEの活動で教員は多忙だが、事務局スタッフの強力な支援が得られる。シンポジウムの開催、ゲストの招聘などについては、経験豊かなスタッフが対応する。SkypeやWindows Messeengerの利用自体に経費はかからないが、それを利用できる環境の設定には人手がいる。この部分については日本ALS協会近畿ブロックで長年活動してきた人たちに指導を仰ぎつつ、これを研究のテーマにしている大学院生が中心となって常時の利用を実現・維持する。それを各国で共有する。このこと自体が今回の企画の一部をなす。
  また6に記したように、大学院生が実質的活動のかなりの部分を担う。既に台湾・韓国・中国からの留学生がおり、中には韓国と日本の双方で10年余の活動実績をもち、両国の企画での通訳などを努めてきた人もいる。HPの多言語化(英語・韓国語・中国語・日本語・…)、障害や病、各国の制度や運動、研究などについての情報の掲載にあたって協力を得る。教員は、過去の活動や、院生の研究や活動を通し、下記の団体、人々との密接な関係を有している。企画全体を見渡し、関係者との調整にもあたる。他に、在宅医療の実践を続けてきた医師、神経性難病研究の第一人者などに入ってもらい、助言・提言をしてもらう。
  ◆各地・各国の団体
  日本の全国自立生活センター協議会は、施設や親がかりの生活から脱して地域で暮らそうとする人たちが、その生活を可能にし容易にするために自ら事業を展開する自立生活センターの全国組織である。当初は身体障害の人たちが多かったが、障害の範囲は広がっている。また東アジアにとどまらず世界の様々な地域から研修生を受け入れたきた組織でもある。
  DPI(Disabled Peoples' International)は障害者本人の全世界的な組織で、DPI日本会議は、そのアジア太平洋ブロックの活動をも担ってきた組織であり、障害者の権利擁護のために活動している。韓国等の団体との交流も積極的に行なってきた。障害者施策・運動全般に関わる企画は、上記団体と交流を続けてきた、韓国障害者団体総連合会、連合会の加盟団体でもある韓国DPI、韓国障害者自立生活センター総連合会と連携して進める。
  日本ALS協会は、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の人・家族・関係者からなる団体で、毎年の国際会議にも参加しており、アジアでは、韓国・台湾・モンゴル・フィリピンの人たちの交流を深めている。2008年度さっそく開催する神経性難病に関わる企画については、韓国・台湾・モンゴルのALS協会と連絡をとりつつ進めていく。
  今回の2年の企画においては、資金の有効な利用法としても、あえて企画の主体は日本側に限り、他国の組織・人はゲストとし、必要な経費――例えば人工呼吸器を付けての飛行機での移動にはずいぶんかかる――を本資金により拠出する。

■9. このプロジェクトの限界は?

  与えられた期間は2年間であるから、それで終わるなら、それほどのものを後に残すことはないだろう。けれども、すべての情報を置くホームページ自体は継続し、必ず更新・増補され続ける。そしてその2年間で、得るものを得た人たち、人や組織との関係を得た人たちが、その後を続ける。大学院とグローバルCOEプログラムはその活動の継続を支援する。
  そしてもちろん地域的な限界がある。私たちのこの企画は、当座、東アジアの数カ国に限られたものである。そして、あらゆる病・障害を網羅するものでもない。ただ、○に記したように、アジアでできることなら、他の地域でもできることがある。最も困難と思われている部分がどうにもならないわけではないことがわかれば、それより容易にできることもたくさんあるということである。このことは示すことができるはずである。

■13.

  立岩真也:1960年生。立命館大学大学院先端総合学術研究科教授。専攻は社会学。東京大学大学院社会学研究科単位取得退学。1980年代中盤から地域での生活を目指す障害者への聞き取り調査を行ない、共著書『生の技法――家と施設を出て暮らす障害者の社会学』(藤原書店、1990、増補改訂版1995)を発表。この前後から、地域の障害者団体や全国組織との共同研究などに携わる。他に単著として『私的所有論』(勁草書房、1997)、『弱くある自由へ――自己決定・介護・生死の技術』(青土社、2000)、『自由の平等――簡単で別な姿の世界』(岩波書店、2004)、『希望について』(青土社、2006)、稲場振一郎との共著(対談)に『所有と国家のゆくえ』(NHKブックス、2006)。2004年にALSの人たちの書いた文章を読み、引用し、考察を加えた本『ALS――不動の身体と息する機械』(医学書院)を刊行。その前後から神経難病の人・組織との関わりも多くなる。2007年度からグローバルCOEプログラム<生存学創生拠点――障老病異と共に暮らす世界の創造>拠点リーダー。他に、NPO法人「ある」(京都市)NPO法人「自立生活センター立川」(東京都立川市)の理事等。


UP:20080912

TOP HOME (http://www.arsvi.com)