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「逃げ遅れる人びと」上映会・セミナー

於:立命館大学衣笠キャンパス学而館2階第2研究会室

Last update: 20131020

■開催趣旨

なぜ阪神淡路大震災の後も「災害弱者」という状況が存在し続けるのか。なぜ教訓は生かされていないのか。この問いに対して、いまだ確信をもって誰も説明できないでいる。この問題が解決されなければ、東日本大震災の教訓も生かされず風化していくことになってしまう。瓦礫問題や福島原発の放射能問題等がある中で風化という言葉は不適切かもしれないが、確実に報道の数が減っている今こそ、人々の記憶にとどめておく必要がある。東日本大震災の記憶をとどめていくためにDVD「逃げ遅れる人々――東日本大震災と障害者」の上映会を開催し、震災をめぐる障害者・病者の生活問題を考えるためのセミナーを開催する。

参加無料・要事前申し込み(定員20名)

日時:2013年10月23日(水)13:00〜
台風接近に伴う中止等につきましては、「立命館大学授業に関する規程」[外部リンク]にしたがいます。また、中止の際には、本ウェブページでもご案内いたします。

場所:立命館大学衣笠キャンパス 学而館2階 第2研究会室
  [外部リンク:アクセスマップ][外部リンク:キャンパスマップ]


■プログラム

13:00〜13:15
開催趣旨

13:15〜14:30
「逃げ遅れる人びと 東日本大震災と障害者」DVD上映会

<作品解説>

2012年/日本語/16:9/74分/ドキュメンタリー
日本語字幕・選択可(聴覚障害者用)
作品URL:http://www.j-il.jp/movie/
監督:飯田基晴
製作:東北関東大震災障害者救援本部

「逃げ遅れる人びと 東日本大震災と障害者」パッケージ写真

障害があるということは、災害時には普段以上のハンディとなる。
2011年3月11日の東日本大震災、未曾有の大災害の中、障害を持つ人々に何が起きたのか?
福島県を中心に、被災した障害者とそこに関わる人々の証言をまとめた。
障害ゆえに、地震や津波から身を守れず、また必要な情報も得られない・・・。「ここではとても生活できない」「周囲に迷惑をかけるから」と、多くの障害者が避難をあきらめざるを得なかった。そうしたなかで避難所に入った障害者を待ち構えていたのは・・・。
更には仮設住宅へ入居しても、そこでも大変な不自由が待っていた。原発事故により市民の姿が消えた避難区域には、取り残された障害者が不安な日々を送っていた。大震災に翻弄される障害者と、その実態調査・支援に奔走する人々の、困難の日々。
住み慣れた土地を追われ、避難先で新たな生活を模索する時、涙とともに故郷への思いがあふれる。
マスメディアでは断片的にしか取り上げられない、被災地の障害者を取り巻くさまざまな課題や問題点が浮かび上がる。


14:30〜14:45
休憩

14:45〜15:30
セミナー
報告(1):野崎泰伸(立命館大学)「阪神・淡路大震災における障害者支援からみた東日本大震災」
報告(2):堀利和特定非営利活動法人 共同連

15:35
終了

司会:渡辺克典(立命館大学生存学研究センター)

◆主催:
立命館大学先端学術総合研究科 院生プロジェクト[外部リンク]「震災をめぐる障害者・病者の生活問題」に関するプロジェクト
学術研究助成基金助成金・挑戦的萌芽研究「病・障害当事者による災害支援活動をめぐる組織間ネットワーク研究」(代表:渡辺克典)

◆事前申し込み・お問い合わせ先
〒603-8577
京都市北区等持院北町56-1
立命館大学生存学研究センター 渡辺克典
E-mail: k-wtnb[@]fc.ritsumei.ac.jp([@]→@)


■関連項目(arsvi.com内)

「震災をめぐる障害者・病者の生活問題」に関する研究会
災害と障害者・病者:東日本大震災
東日本大震災:「生存学」関連
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■開催報告

開催報告:文責 権藤眞由美

今回、震災をめぐる障害者・病者の生活問題を考えることを目的に、セミナーを開催しました。映画「逃げ遅れる人々――東日本大震災と障害者」上映会に続き、野崎泰伸氏(立命館大学)、堀利和氏(特定非営利活動法人 共同連)による報告、ディスカッションが行われました。これらに先立ち、本研究センター特別招聘准教授渡辺克典から趣旨説明がありました。このセミナーは、東日本大震災によって「災害弱者」となった障害者・病者の困難な現状に、阪神・淡路大震災の経験が生かされなかった要因について考える機会となる、ということでした。映画は福島県を中心に被災した障害者、彼らに関わる人々の被災時の状況と、避難生活を送る際の障害ゆえの様々な困難(避難手段、避難所の生活環境、得られない情報、介助支援不足、食料不足、事業所の再開等)を伝えていました。
映画上映後、野崎氏からは淡路大震災における障害者支援からみた東日本大震災」というタイトルで、堀氏からは阪神・淡路大震災、中越沖地震と東日本大震災の共通点と相違点について、それぞれ報告頂きました。お二人の話は共に、阪神・淡路大震災では障害者支援の社会背景として、日頃の障害者運動ネットワークが既に地域のなかに社会資源としてあり、それが災害時には支援活動として有効に活動したことに触れていました。
一方で東日本大震災による「災害弱者」をもたらした要因は社会構造の問題である、という見解を野崎氏は提示しました。つまり、東北という地域では「障害者は家庭内で過ごす」という地域的な慣習が、障害者の社会参加の機会を奪い、また障害者運動を根づきにくくさせている、という背景があったということです。阪神淡路大震災の経験が生かされていないのは、「日常的に障害者の生活には様々な生きづらさがありその裏側には介助時間の制限など、障害者を生きづらくさせる制度がある」ためでもある、ということでした。 堀氏は、東日本大震災の被災地は広域で、地震、津波、原発の問題という災害が複合し、主な被災地が沿岸部地域であったように、阪神・淡路大震災のような都市型の震災ではなかったことに改めて注意をむけていました。そのうえで、「東日本大震災の被災地域における障害者と地域社会の関係は、障害者の生と地域生活とが断絶されてきたという日常生活の底流にあった問題につながっている。3・11以後、あらゆる被災者にとって日常生活は以前のものではない。だが、発達障害などによる行動や症状をはじめ、障害者が避難所等で健常者から理解を得られなかったのは、それまでの日常において人間関係が十分につくられていなかったからである。障害者が避難所に避難した際にそれまでの日常の関係が増幅・可視化されたという意味で、そこには連続性がある」とのことでした。また福祉避難所における避難や安否確認の際の個人情報の取り扱いをめぐる問題についてもお話しいただきました。
質疑応答では、以下のテーマについて議論が交わされました。介助者確保における不安、南海沖地震が起きた際の食料の確保、災害などで多くの傷病者を対象に優先度を選別するトリアージが合法化された場合の、障害者・難病者を含めた優先順位のありかたなどです。特にトリアージについては、今後も注視していく必要があるという意見が出されました。また、日常的に横行している差別をかえるための地域とのつながりについて継続して検討していかねばならないとの意見も出るなど、日常の延長にある、「災害時における障害者支援」のありかたについて活発な議論を交わす場となりました。


UP: 20130912 REV: 20130916, 0918, 1020,1119

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