☆北米での「女性学」の「名称変更問題」("name change debate")について
カナダでは、設立40年以来、「女性学」という名称を掲げてきたほとんどの大規模な州立大学の女性学部がいま、「ジェンダー学部」「ジェンダーとセクシュアリティ学部」「ジェンダー研究学部」と改名している(例:ブリティッシュコロンビア大学、クイーンズ大学、モントリオール大学、オタワ大学、ヨーク大学など)。これは2009年前後のカナダ政府による縮小経済政策により、多数の大学がいくつかの学部の予算削減を断行した結果で、その対象となったのが人種的マイノリティ研究、ソーシャルワーク、ファインアーツ、そして女性学であったという背景もある。
フェミニズムのなかでは「女性学」という名称を捨てる風潮に対する危惧と組織的な抗議の声が上がった。「女性学」という名称が本質主義的であり、より包括的で非本質的な「ジェンダー」に改名するべきだという主張に対し、「女性学」改名に異議を唱えるフェミニストたちのなかからは次のような異論が挙がった。「女性学」設立には長い重要な政治的歴史があり、「バックラッシュ」に応じて「女性学」を捨てることは、そもそも女性学が批判してきた女性排除に加担することだと。こうした意見は実際に学術誌や一般紙で「Women’s Studies Under Attack(攻撃下の女性学)」と称される主張となった(Susan G Cole, Herizons, Spring 2010 Issue)。