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グローバルCOE「生存学」創成拠点 国際プログラム(2010年秋期)

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last update:20101214


■ 概要と抱負

 韓国の障害学研究会は、同国の障害分野の活動家と学術研究者等によって、昨年11月に設立されました。韓国においても研究と運動の両面で障害学への関心が徐々に高まってきており、今後の研究会の発展が期待されています。昨年11月に開催された同研究会の設立集会の際には、設立記念講演会が開催され(本拠点共催)、立岩真也による講演「韓国障害学研究会結成を祝して――日本のこれまで」が行われました。それから約1年後に当たる今月末、本拠点において障害に関わる研究を行う院生・PDが、同研究会主催の「障害学国際研究セミナー」(仮)に参加することとなりました。
 これから発展しようとしている障害学分野における日韓交流は、両国の障害分野に関わる人々が互いの経験・知見を共有し、日韓の「障害」をめぐる類似性と差異を明らかにしていくことを通して、障害学の発展に大きく貢献しうる取り組みであるといえます。それはまた、日韓の障害分野に関わる人々の新たな協働の可能性を見出しうるものであるとともに、両国における研究や実践の新たな道筋を切り開きうるものであると考えられます。今回、日本の障害分野において私たちが経験してきた事柄や培ってきた知見を韓国の人々と共有できること、日本に先駆けて障害者差別禁止法を制定している隣国韓国の取り組みから学ぶことができることを、参加者の一人として大変楽しみにしております。(安田真之

■ 参加・報告予定者(順上同)

立岩 真也TATEIWA Shin'ya
鄭 喜慶CHONG Hee Kyong
安 孝淑AHN Hyosuk
李 旭LEE Wook
大野 真由子ONO Mayuko
三野 宏治MINO Koji
森下 直紀MORISHITA Naoki
安田 真之YASUDA Masayuki
吉田 幸恵YOSHIDA Sachie
青木 千帆子AOKI Chihoko
橋口 昌治HASHIGUCHI Shoji
田島 明子TAJIMA Akiko
有松 玲ARIMATSU Ryo

■ 日程

2010年11月25日
◆交流会

11月26日 
◆第1回障害学国際研究セミナー・1日目 於:ソウル市
 主催:韓国障害学研究会・立命館大学生存学研究センター
◇研究協力協定調印
◇メインセミナー「障害アイデンティティと差異の政治学」
 ・立岩 真也 「障害を巡る言葉の政治」
 ・青木 千帆子 「「労働者(あなた)」にとって「障害者(わたし)」とは何か」
 ・田島 明子 報告PPT [日本語] / [韓国語]  資料 [PDF]  報告原稿 [PDF]
 「「障害受容」から考える――リハビリテーションでのセラピスト−クライエントの関係」
 +韓国からの報告者

11月27日
◆第1回障害学国際研究セミナー・2日目 於:ソウル市
◇分科会1 「自立生活運動と介助サービス」
鄭 喜慶 「身体障害者の自立生活におけるプロセス過程とサービスの現状」
三野 宏治MINO Koji 「知的障害者の地域生活の現状に関する報告」
+韓国からの報告者

◇分科会2 「障害者の所得保障関連法制度と政策(障害年金を中心に)」
橋口 昌治HASHIGUCHI Shoji 「日本の所得保障制度と生活保護」
安田 真之YASUDA Masayuki 「日本における障害者の所得保障制度――障害基礎年金を中心に」
 +韓国からの報告者

◇ポスター報告
有松 玲/ARIMATSU Ryo 「政権交代と障害者政策」
安 孝淑AHN hyosuk 「日本のALS患者の自立生活について」
李 旭LEE Wook「日本の福祉用具貸与制度」
大野 真由子ONO Mayuko 「痛みをめぐる「障害」概念と制度についての考察――韓国CRPS患友会の活動を中心に」
森下 直紀/MORISHITA Naoki 「水俣公害被害者――障害者とを分かつもの」
吉田 幸恵YOSHIDA Sachie 「1950年代以降の日本と韓国におけるハンセン病施策の変遷」

 *第2回のセミナーは2011年に京都で開催される予定です。

11月23日
立岩 真也 18:00〜20:30 「本人と家族/家族と社会」(講義)
 於:中央大学大学院

11月24日
JO Han-Jin立岩 真也  「障害者の学・運動・政策」(対談) セミナー「障害学への招待――障害者福祉の視点の転換」,主催:デグ自立生活センター 於:テグ市 14:00〜17:30

11月27日
立岩 真也 「社会サービス/所得保障/労働――日本の概要を紹介しつつあるべき方向を述べる」(講義)
 於:韓国障碍人差別撤廃連帯,ソウル市 15:20〜17:20

■ 関連する韓国語に訳された立岩の文章

立岩 真也 「障害者運動/学於日本・1――始まり」
立岩 真也 「障害者運動/学於日本・2――人々」
立岩 真也 「障害者運動/学於日本・3――税を使い自分ら運営する 」
立岩 真也 「障害者運動/学於日本・4――ダイレクト・ペイメント」
立岩 真也 「障害者運動/学於日本・5――障害学/障害学会 」
立岩 真也 「障害者運動/学於日本・6――京都で・生存学 」
立岩 真也 「障害者運動/学於日本・7――韓国の人たちと 」
立岩 真也 「障害者運動/学於日本・8――「生命倫理」との関わり 」
立岩 真也 「障害者運動/学於日本・9――女性たち」

立岩 真也 「ただ進めるべきこと/ためらいながら進むべきこと 」
立岩 真也  「限界」を巡る攻防――日本のこの10年について」

■ 報告と当日の様子

 本企画は、「概要と抱負」に記載されているように、昨年11月に設立された韓国障害学研究会の設立集会で、本学研究科立岩真也教授が講演したことがきっかけとなって開催されることになりました。
 研究会の前日、2010年11月25日には盛大な歓迎会が開催されました。この歓迎会は韓国の国会議員チョン・ハギュン氏により日本側からの参加者全員を招待していただき、韓国の伝統料理をご馳走になりました。
前日に開催された歓迎会の様子1前日に開催された歓迎会の様子2
 歓迎会の翌日、2010年11月26日・27日には第1回障害学国際研究セミナーが開催されました。会場となったイムールセンターは国会議事堂のすぐそばにある建物で、障害者運動団体が多数事務局をおいている建物でした。当日は、韓国の障害当事者、障害者団体関係者、日本側からの参加者含めて、100名を超える方々が参加し、講演を入れて二日間にわたって熱気に包まれた質疑・議論が交わされました。以下、当日の様子を簡単に報告したいと思います。
 第1日目(2010年11月26日)は、ソ・インヒャン氏と立岩真也教授との間でまず日韓障害学研究会の研究協力協定の覚え書が交わされました。今後、文化や歴史の異なる両国の障害学を志す者同士が交流を深め、それぞれの国が持つ特性・異なりにお互いがふれあうことにより、日韓両国の障害学研究全体を活性化していけるのではないでしょうか。
 続いてメインセミナー「障害アイデンティティと差異の政治学」が開催されました。午前中は日本側から立岩 真也田島 明子青木 千帆子の報告、午後は韓国側からの報告でした。
 午後の部では「障害者」と一括りに表象される、その内部にある差異をどう認めどのように運動としてまとめていくのかという問題提起の下、障害者の中でも少数派である人々からの報告がありました。軽度障害者で梨花女子大学大学院修士課程のイ・ホソン氏、小人症者協会代表であるキム・サラ氏、精神障害者連合代表のイル・ソンゴン氏、顔面やけど障害者であるユン・ソッコン氏から自身の経験に関する報告がありました。続いて、ソウルサイバー大学教授クァク・ジヨン先生による障害者アイデンティティと政治的効用感に関する統計調査の報告がありました。
 第2日目(2010年11月26日)は、「自立生活運動と介助サービス」と「障害者の所得保障関連法制度と政策(障害年金を中心に)」という2つの分科会に分かれ、議論が展開されました。
 「障害者の所得保障関連法制度と政策(障害年金を中心に)」分科会では、日本における障害者の現状を橋口 昌治安田 真之が報告し、韓国における障害者の現状をべク・へリョン氏(障害者団体政策室長)から報告して頂きました。韓国では2010年7月1日から障害者年金制度が成立したばかりであり錯綜した状況にあること、支払われているのは15万ウォンでありこれは日本円にして9000円程度であること、「基礎生活制度(日本でいう生活保護制度)」の改正に伴い所得基準を定められない状況にあることなど、韓国の障害者の現状が大変厳しい状況にあることを知りました。とはいえ、韓国における障害者運動は年金の額を上げるということだけでなく、社会の根本的な問題を改善していこうとしているという主張があり、韓国における障害者運動の熱気を感じました。
 「自立生活運動と介助サービス」分科会では、鄭 喜慶 三野 宏治の報告の後、人愛(ヤンチョン)障害者自立生活センターのアン・ジンヒャン氏が報告をされました。アン氏は、自立生活センターの活動とその問題点について述べられました。報告後はフロアからアン氏の報告「韓国自立生活センターの介助事業」関しての質問と意見が出され、非常に活発な議論に発展しました。そこでなされた議論は韓国の当事者運動と自立生活センターの実情を把握しなければ理解し難い内容で、かつ時間も足りませんでしたが韓国障害者運動に関わる方々の情熱を理解するには十分なものでした。
 今回の日韓交流に参加することで、実質的な交流を深めることに加え、多角的な視点からの自らの研究を再検討することができました。今回の報告及び報告を通してなされた議論は、今回の経験を踏まえて自身の議論を練り上げたうえで、論文としてまとめていきたいと思います。(三野 宏治青木 千帆子
第1回障害学国際研究セミナー 当日の様子1第1回障害学国際研究セミナー 当日の様子2
第1回障害学国際研究セミナー 当日の様子3第1回障害学国際研究セミナー 当日の様子4

■ 紹介等

田島明子さんのブログ http://d.hatena.ne.jp/fugu1/20101128


*作成:中倉 智徳 更新:李旭 翻訳:あべ やすし, 鄭 喜慶
UP:20101102 REV:20101105, 09, 10, 11, 16, 17, 29, 1201,1202, 1203, 1204, 1206, 1208, 1204,20110124
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