HOME > 全文掲載 >

【訳】コロンビアにおける抵抗とケアとしてのアグロエコロジー

Agroecology as Resistance and Care in Colombia

ラケル・グティエレス・アギラル[Gutiérrez Aguilar, Raquel] 2025/11/06
(訳:村上 潔[Murakami, Kiyoshi] 2026/07/18)

Tweet
last update: 20260904

■書誌情報[Bibliographic Information]

◇Gutiérrez Aguilar, Raquel, 2025, "Agroecology as Resistance and Care in Colombia", Ojalá, November 6, 2025, (https://www.ojala.mx/en/ojala-en/agroecology-as-resistance-and-care-in-colombia).=2026,村上潔訳,「コロンビアにおける抵抗とケアとしてのアグロエコロジー」,arsvi.com:立命館大学生存学研究所,2026年7月18日,(https://www.arsvi.com/2020/20260718mk.htm)

■訳文[Translation]

【画像キャプション:アンティオキア県の小規模農場は、作物を育てるだけでなく、教育やエンパワーメントのための空間も創出している。】

コロンビアのアンティオキア地方、メデジン市を取り囲む緑豊かな山々には、広範な協同組合[Cooperatives]のネットワークが息づいている。設立から30年以上が経過した今も、それらは人々の不屈の努力と創造力とを証明する役割を果たし続けている。

この社会的「製織」[Social Weaving]について説明するために、その「糸」のうちの一本を選び出し、それを辿ってみよう。そこから、長期間持ちこたえてきた共同作業・協力関係・信頼関係の豊かさを、描き出してみたいと思う。この地域では、長年にわたる集団的な試みへの献身が、協力関係のなかで社会的製織を再生産していくことの中心にあるのだ。

ここで取り上げる「糸」は、メデジン市の中西部に位置する〈コリフロール[ColyFlor]〉〔語意:“カリフラワー”〕という小さな店だ〔Webサイト:https://tiendacolyflor.com|地図〕。この店舗には、毎週大量の農産物が運び込まれ、ここから市内各所へと流通していく。

〈コリフロール〉の訪問者を迎えてくれるのは、広々とした、かつきれいに整理された二つの部屋に漂う、農産物・ミント・コーヒー・クッキーの香りだ。店内では数人の女性が働いており、店頭販売に加え、週に一度、事前販売された食品セットを顧客に配送するという、より重要な業務も担っている。

このシステムは、多種多様な美味しいオーガニック食品を通して安定した連関構造を生み出し、メデジン市周辺の小規模農場においてアグロエコロジー的生産を促進するための、膨大な努力を育んでいる。また、生態系を破壊し、その作物を摂取する消費者の健康にも〔悪〕影響を与える有害な農産工業[Agro-Industrial]システムから、少なくとも一時的に都市住民を解放する役割も果たしている。

メデジン市近隣の多くの家庭に届き、食卓に上る、トマト一つ、卵パック一つ、1ポンドのコーヒー豆。その背景には、とてつもなく多い物流面・運営面での作業が存在している。

多種多様な食品の搬入・整理・分類・配送といった一連のプロセスは、長い年月を経て完成され、現在では正確な数値化が可能となった。これは協同組合の「織物」[Fabric]の最初の糸であり、またそれ自体が貴重な情報を生み出し得るものとしてある。

毎月平均して、女性たちが生産した卵15,000個、鶏肉1トンが流通している。さらに、農家の人々が育てた野菜・根菜・果物などの新鮮な農産物も、毎月5.5トン配送されている。作物の生産計画は農家間で集合的に立てられており、市内約635人の消費者は月に一度、指定の日に配達される商品を受け取っている。

【画像キャプション:膨大な量の物流・整理の共同作業を経て準備された最終商品は、丁寧に梱包され、消費されるのを待つ。】

◆暮らしを共にし、分かち合う
〈コリフロール〉〔以下:CF〕は、約90軒の小規模農家から成り、より上位の協同ネットワークのなかでの重要な拠点となっている。この小規模農家グループが実施した多くの活動の成果は、定期的にCFで整理統合される。

過去数十年にわたり、アンティオキア地方の小規模農家――その多くは1.5ヘクタール以下の規模である――は、様々な民兵組織や国軍による包囲・攻撃に晒されてきた。

こうした状況下で、古くから続いてきたアグロエコロジー的慣行は、土壌・村落〔共同体〕、そして農家自身の暮らしを維持する活動を、回復させるのに役立ってきた。

多くの農家にとって、虐待的な中間業者による支配を排した安定的な流通システムに属することは、その土地にとどまり続け、自らの労働や技術に対するより良い対価を得るための、実行可能な手段を提供している。

それぞれの農場には独自の個性がある。オーガニックの鶏肉や卵を生産する農場もあれば、コーヒーや野菜の生産に注力する農場もある。最も成功を収めている農場のなかには、複数の生産活動を組み合わせて運用しているところもある。農家は、自家消費する作物を生産する一方で、余剰分はCFを通して流通させるという、安定した手段を確保している。

こうした貴重な有機農産物の余剰分を流通させるため、農家の人々は「連帯経済巡回便[Solidarity Economic Circuit]」のトラックの到着を見越して、農場近くの倉庫に定期的に作物を持ち寄る。トラックはそれらの農産物をCFへと運び、そこから新たに流通のプロセスが始まる。

私がこのプロジェクトを訪問した際に話を聞いた数人の女性たちは、作物を育てる〔様々な要素が〕絡み合った生産サイクルを管理する方法に関する知識を、嬉しそうに共有してくれた。彼女たちはまさに、その分野の専門家となっていたのだ。

また彼女らは、CFが統括する流通サイクルの一員であることが、自分たちにとって極めて重要であると強調した。食料の生産・流通プロセスの継続性は、緊密な協力関係があってこそ確保できるものだ。

【画像キャプション:数百世帯にまとめて食料を供給するすべてのアグロエコロジー的生産は、農家間の集合的な計画によって実現している。】

◆フェアトレードのその先へ
CFは、アンティオキア県で長年にわたり活動する環境・フェミニスト団体〈ペンカ・デ・サビラ[Penca de Sábila〔語意:“アロエベラの葉”〕]:エコロジスト・アンド・フェミニスト・コーポレーション〉〔以下:PdS〕という、より大きなネットワークの一員でもある。

PdSは、40年近く前に「環境」協同組合として設立されたが、時代に合わせて変化・再編し、適応していくための知識と知恵を保ち続けてきた。

水と、地域社会によるその利用を守ることは、PdSの最優先課題の一つであり続けている。この山岳地帯にある「地域送水路[Community Aqueducts=コミュニティ・アクワダクト]」は、繰り返される私営化の企てや、不動産・観光開発に伴う過剰な取水によって、頻繁に脅かされてきた。そうした動きは小規模農業を弱体化させるものだ。このような状況下で、送水路の防衛と管理に関するPdSの活動や経験は、より一層重要な意味をもっている。

コロンビアでは、地域社会の送水路ネットワークと社会組織・大学機関が行なった何年にもわたる全国的な調整・アドヴォカシー・ロビー活動を経て、〔2025年〕9月に署名された法令0960号(原文リンク:https://redacueductoscomunitarios.co/2025/09/03/reconocida-la-gestion-comunitaria-del-agua-politica-publica-nacional)によって、コミュニティによる水管理が法的に承認された。

現在の課題は、その履行を要求し、かつ必要な規制の策定に取り組むことで、この政策を現実化させることだ。

そのためPdSは、「社会的介入」[Social Intervention]プログラムを通じて、アグロエコロジー的生産を促進している。小規模農家を支援する農学専門家やアグロエコロジー実践者のチームを立ち上げるためのリソースを提供する、強力な社会的動態を構築してきたのだ。

そしてPdSは、設立以来、フェミニズムの理念を提唱してきた。日常的な取り組みとしては、主に養鶏や鶏卵・鶏肉生産を通じて、各農家の女性たちが経済的な自律性を強められるよう、支援することに重点を置いている。

PdS自体は、アンティオキア県におけるより大きなネットワークである〈コンフィアル[Confiar]〉〔語意:“信頼する・任せる”〕の一部である。〈コンフィアル〉は、労働者の貯蓄組合・相互扶助組織から発展した、金融協同組合だ。金融化[Financialization]〔=経済全体において金融セクターが成長し、実体経済に対する影響力が増大する過程と傾向。社会の不平等を助長する要因となる〕や、銀行の融資能力の集中化といった難局を乗り越え、現場の状況に絶えず適応し、調整しながら、40年以上にわたりその存在を強固なものとしてきた。

こうした課題解決の取り組みは、すべて自律的なものであり、協同組合のガイドラインのもとで作動するものだ。そこには緊張関係がないわけではない。しかし、それらすべてに共通していることは、物資・生産物・エネルギー・知識の絶え間ないやりとりであり、それが全体の円滑な運営を維持している。メデジン市のPdSを訪れた際、私は先ほど述べたような「社会的製織」の全体像を目の当たりにした。そして、つい最近まで世界で最も暴力的で危険な都市の一つであったこの地で、どうしてこれほどまで濃密な協同組合ネットワークが存続し得たのか、考えずにはいられなかった。

相互扶助、生命維持のための協同、質が悪化した土地の再生、そうしたシステムやプロセスを改良し適応させていく不屈の努力。実のところ、これらは暴力が蔓延していた極めて困難な時代に対する、見事なまでの対応策だったのだ。

いずれにせよ、この協同組合の「織物」が、尽きることのない数多くの問題を解決する能力を備えていること、そして生活を中心に据え、その向上に向けて集団的に組織化し続ける実行力を保持していることは、明白である。

■注記[Note]

◆許諾に関する説明[Explanation of Permission]
この訳文の掲載にあたっては、〈Ojalá〉の許可を得ています。
Permission to publish this translation has been obtained by Ojalá (https://www.ojala.mx/en/about-us).
◆画像に関する説明[Explanation of Images]
画像の転載は省略します。
Images are omitted.

■参考/関連情報[Related Information]

◆直接関連するもの
◇Colyflor – Tienda de Comercio Justo, 2021, "Colyflor, un Circuito Económico Solidario", Colyflor – Tienda de Comercio Justo (YouTube), November 13, 2021, (https://www.youtube.com/watch?v=ec_4Lo5j2e0).=2026,村上潔訳,「コリフロール――連帯経済のひとつの回路」,arsvi.com:立命館大学生存学研究所,2026年7月26日,(https://www.arsvi.com/2020/20260726mk.htm)
◆その他
◇Álvarez, Perla and Raya Radwan (Interview by Pinar Yüksek / Edited by Bianca Pessoa / Translated from Portuguese and Spanish by Liz Stern), 2026, "Feminist Agrarian Reform: Transforming Society and Relations for All Humanity", Capire, May 4, 2026, (https://capiremov.org/en/interview/feminist-agrarian-reform-transforming-society-and-relations-for-all-humanity/).=2026,村上潔訳,「フェミニスト農地改革――人類全体のための社会と関係の変革」,arsvi.com:立命館大学生存学研究所,2026年8月9日,(https://www.arsvi.com/2020/20260809mk.htm)
◇神戸市外国語大学2026年度前期科目《ジェンダー論入門》
「環境正義とジェンダー――再生産・直接行動・フェミニズムの視点を軸として」[Environmental Justice and Gender: Centring Perspectives of Reproduction, Direct Action and Feminist Activism]
授業期間:2026/04/10 - 2026/07/24(全15回)
担当教員:村上 潔
https://www.arsvi.com/d/2026igs.htm
◇村上潔 2025- 「ラテンアメリカ・フェミニズム関連情報リスト」,arsvi.com:立命館大学生存学研究所,2025年10月5日(~更新中),(https://www.arsvi.com/2020/20251005mk.htm/)

■その他[Others]



*作成:
村上 潔[Murakami, Kiyoshi]
UP: 20260718 REV: 20260726, 0810, 0904
◇生を辿り途を探す――身体×社会アーカイブの構築  ◇アーカイビング――障害/クィア/BIPOC/フェミニズム(海外)  ◇環境倫理/公害/環境思想[Environmental Ethics/Thought and Pollution]  ◇女性の労働・家事労働・性別分業[Women's Work / Housework / Domestic Labor / Sexual Division Of Labor]  ◇フェミニズム/家族/性[Feminism/Family/Sex]  ◇生活・生存[Life/Survival]  ◇民族・エスニシティ・人種  ◇全文掲載
TOP HOME (https://www.arsvi.com)◇