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「谷口正隆氏インタビューA」(2021年11月5日16時10分〜)

語り:谷口 正隆/聞き手:田中 恵美子 2021/11/04

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last update: 20231015


※聴き取れなかったところは、***(hh:mm:ss)、
聴き取りが怪しいところは、【 】(hh:mm:ss)
タイムレコードは[hh:mm:ss]としています。


谷口 正隆(以下、「谷口」と表記):セルフアドボケイトっていうをきっちりやっていく力っていうのをつけたいんじゃないのかなあと。
 で、ここに書いた渋谷治己さん、横浜市の障害者施策を考える連絡会の事務局長をされていて、この方、今現役で横浜の障害者支援センターの運営委員やってますけど、彼は「(障害者の)エンパワーメント・センター」を考えている。その彼の主張をきちっと目で見えるようにしていくっていう作業が横浜の運営委員会に課せられていると思っていたのだけれど、そのままにしてしまった。彼が言ってるのは、今の脳性まひの若い者もね、なんかみんな「何でもやってもらえる」時代になっちゃった。「それじゃダメなんだよ、この世の中で生きるにはね、自分で主体的に事柄に取り組んで、そして解決していくっていう力を持ってなきゃだめだ」って、そういうことを言ってるの。僕に言わせればセルフアドボカシー、
主体的な権利主張のパワーアップなんだろうと感じていたんです。

田中 恵美子(以下、「田中」と表記):この方たちは今、横浜で運動してる? 

谷口:運営委員やってて、運動もしてます。運動してるんですけど、疲れてるんじゃないかな。頸椎の手術を確かして、疲れると言ってたけど。彼もちょっと消耗してるんだろうなと心配しつつそのままにしてしまった。

田中:先生は、横塚晃ーさんはそんなに関係はなかったですか? わりと早く亡くなっちゃった。

谷口:横塚さんも川崎の人じゃなかったかな? ちらっとしか付き合ってません。

田中:わりと早く亡くなっちゃいましたよね。

谷口:そうでした。40代後半ぐらいかな。あっという間でしたね。『母よ!殺すな』でしたね?

田中:はい。

谷口:だから彼もなにか、言い切れないまんま。『母よ!殺すな』は書いたけど、もっと社会の中で言い切っていきたいことがたくさんあったのじゃないかって。
 だから今度の、立岩さんがチーフになってる作業の焦点っていうのも、そういうことになってくるのかなという気はしてるんですけどね。

田中:はい。そうですね。先生にとってこの青い芝の人たちの出会いっていうのは、どういう意味を持ってるって思われます?

谷口:僕はやっぱり第三者だったに過ぎないんだなって思っちゃうんです。津久井やまゆりの犯行が起きたって、津久井やまゆりって「こんな所に建ててこんな所に住まわせてどうすんだ」って思ってましたけど、それをそのままにしてきてますから。そのままでいるわけでしょ。費用対効果みたいな単純な計算したって、わかりきった話。それをもっと根っこのところから青い芝の人たちなんかは言い続けたいんだと思う。改革して行きたいんだと思うんですよね。だけど僕なんかはやっぱり彼らに向かい合った時に、彼らがそう言ってるのに僕なんかは何もしないできたんじゃないかっていう。第三者であり続けている自分という者の立場をいつも知らされちゃうんですよね。
 だからせめて情報を取得して、「こういうやり方もあれば、こういうふうにもなるんじゃないか」みたいなことだけはやっていきたいと思った、ことぐらいかな。そんな存在だった気がしますね。自分はね。だから、寝覚めは良くないですよ、ちっとも。さっぱりしないですね。それで次々亡くなっていきますからね。
 だから横田弘さんに向かって、「僕はあなたの存在が怖かった」っていうのはそういうことなんですよ。「やむを得ざる成り行き」と書いて「自分が何もしてない現実」っていうのをずしっと突きつけてこられるわけですから。横田弘さんは、「お前、何もやってないじゃないか」という責めたてかたはしませんでしたけど、まったくしませんでしたけど、それをもう全身で示していた。そういう存在でしたね。[00:05:47]

田中:なるほど。なんかじゃあ、付かず離れずいるんだけど、心地よいというよりは、なんとなくいつも何かを「やれ」って言われているような。

谷口: そうですね、アドボカシーの問題も、イギリスはセルフアドボケートをすごく大事にする。それに「シチズン・アドボケイト」を並行させている。どういうことかっていうと、街中に「シチズン・アドボケイトを募集します」みたいな張り紙なんかが、喫茶店なんかにしてあって。どういうことかというと、たとえば、知的障害者が、親元でずっと過ごしてきちゃった人が片親になったら必ず市民一人がぴったりくっつく。それでその本人のセルフアドボケイトに従いながら見守っていく役割を、普通の市民が取る。だからイギリス中にシチズン・アドボカシーの組織が全国全都市にあるんです。そういう構図って、横浜でも成り立たないのかと思ってきた。どこかの論文には書いた記憶があります。

田中:『精神医学』という雑誌に、お書きに。なるほど。94年ですね。

谷口:ともあれ、青い芝の人たちと個人的な友人として知り合い、何かやれと言われたことは一度もないけれど、また、「やれ」って言われてもできないんだけど、何かせめてやっていかなきゃ、そういうのを僕は探り続けたのかなという気がしますね。




*作成:岩ア 弘泰
UP: 20211222 REV: 20231015
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