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「障害者手帳保有者の家族形態――第2回生活と支え合いに関する調査から」

榊原 賢二郎(国立社会保障・人口問題研究所) 2020/09/19
障害学会第17回大会報告 ※オンライン開催

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last update: 20200910


質疑応答(本頁内↓)



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■発表概要

I・問題の所在

 本報告では、日本の障害者(ここでは障害者手帳保有者)がどのような家族関係を形成しているかを、全国統計調査の分析から明らかにする。障害と家族を巡っては、親が障害者を抱え込むことの問題性が告発され、親からの独立が目指された(横塚 1970→2010)。このいわゆる脱家族の背景として、岡原(1995)は、近代家族の愛情規範と日本社会の独立の規範の弱さにより、障害児の親が障害児を囲い込むに至ると論じた。土屋(2002)も、介助・扶養を担う家族という家族規範が、障害者に抑圧的に働くことを指摘した。中根(2006, 151)は知的障害者家族に即して、親密な他者を支えようとする「ケアへ向かう力」の存在を指摘し、これがケアの社会化への違和感に結びついていると指摘した。染谷(2019)は、「規範」よりも具体的な諸要因(他者が、本人が訴えない体調の変化を察したり、歯磨きのようなケアを丁寧にしたりできるかという不安など)を指摘し、迷いつつ本人の自立を先延ばししている親の姿を描いている。田中(2020)は、障害者総合支援法以前の家計調査を基に、障害者家族におけるケア関係に加えて貧困の観点の重要性を指摘した。
 このように日本の障害者家族が、ケアや分配を中心とする福祉機能を期待されたり引き受けたりする様子が、主に質的研究から描き出されてきた(田中(2020)の量的調査については後述)。この状況が続いているのであれば、統計上、障害者の親元居住が多いと予想される。そこで障害者に特化した調査を参照してみることとする。「平成28年生活のしづらさなどに関する調査」(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部 2018)によれば、障害者手帳保有者の同居者(複数回答)は、65歳未満1776名中、配偶者・親・子供・一人暮らしがそれぞれ32.8%、65.6%、19.0%、11.4%であり、依然親との同居が多いことが示唆される。身体障害では52.1%、48.6%、29.9%、12.2%、知的障害では4.3%、92.0%、3.1%、3.0%、精神障害27.1%、67.8%、15.5%、18.6%と、特に療育手帳保有者、次いで精神障害者保健福祉手帳保有者において親との同居が顕著であり、配偶者や子供と同居している人や一人暮らししている人は極めて少ない。
 また田中(2020)は、知的障害者家族の状況について、スノーボール式に有意抽出を行い、家計調査を実施した。成人で分析対象となった107件のうち、家族同居(+福祉作業所)は68件、グループホーム(+福祉作業所)は25件、一般就労(+家族同居)は14件であった。回答者は知的障害者の母親・父親となっており、回答者がきょうだいや配偶者、職員の者は除外されているため、家族同居は親元同居を含むものと考えられる。家族同居は107件中82件、約76.64%ということになる。本報告では、方法論的に検討中のため所得を扱わないが、田中は、知的障害者の本人収入だけでは生活が厳しいことが、離家を阻害していると論じた。
 これらの調査は、障害者の生活状況を知る重要な手がかりとなり、非常に有意義である。しかし統計的エビデンスとして見ると、障害者の生活状況を非障害者と比較することができないという欠点がある。療育手帳保有者の親との同居割合が極めて高いことはおそらく疑問の余地がないが、身体障害者手帳保有者の数値はどう解釈すれば良いのか、それは障害者手帳非保有者より高いのか否かは直ちには分からない。別調査と比較するにしても、調査設計の違いなどから、完全に比較可能とは限らない。障害者と健常者を共に含む調査データがあるのが望ましく、加えて障害者数を考慮すると大規模な調査データが必要となる。
 加えて田中の調査は、スノーボール式であることに限界がある。障害のように統計的知見が多くはない領域では、有意抽出であっても量的調査をする意義は十分ある。ただ、無作為抽出によるデータが利用できるのであれば分析すべきである。
 障害に関する設問を有し、障害者・健常者を含み、更に標本数が大きい無作為調査として、本報告では2017年に実施された「第2回生活と支え合いに関する調査」(国立社会保障・人口問題研究所 INT)を用いる。同調査には2017年から障害者手帳に関する設問が加えられた。同調査に関しては、既に泉田・黒田(2019)が世帯単位の分析を行なっており、障害者手帳保有者がいる世帯の生活状況を明らかにしている。そこでは例えば、障害者手帳保有者がいる世帯ではいない世帯に比べて、可処分所得が第1分位および第1~3分位に属する割合が高く、金銭の不足で食料および衣料が買えなかった経験がある世帯が多いなどの知見が得られている。また、障害者手帳保有者がいる世帯といない世帯について、世帯主の仕事をしている割合なども比較している。こうした成果を踏まえつつ、本報告では同じ障害者手帳変数を用いて、その保有者本人に即した個人単位の分析を行なう。すなわち障害者手帳を持つ個人の家族のあり方が、持たない個人に比べてどの程度異なるかを分析するということである。次節では分析方法の詳細を提示する。


Ⅱ・対象と方法

 分析対象は、国立社会保障・人口問題研究所が2017年に実施した第2回「生活と支え合いに関する調査」の個票データである。同調査は、平成29年国民生活基礎調査で全国を対象に設けられた1,106地区から300地区を無作為に選び、そこに居住する世帯主・18歳以上の個人を調査対象としている。同調査の調査票は、世帯全体の情報に関わる世帯票と、18歳以上の各世帯員の情報に関わる個人票で構成される。世帯票は配布16,341票に対し有効票10,369票(有効回収率63.5%)であり、個人票は配布26,383票に対し有効票19,800票(有効回収率75.0%)であった。統計法32条に基づき、課室内利用手続きを行なった。世帯票・個人票を世帯票番号・世帯員番号で結合して分析した。
 本報告では世帯票問12(7)の障害者手帳の有無・種類(身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳)を分析に用いる。障害の尺度は複数ありうる。その中で、障害者手帳変数には国際比較不可能であるという短所がある。しかし、日本の障害者施策の対象層に近いこと、診断・認定手続きにより多少とも他者の観点が入ること、福祉行政報告例により真値の目安が分かること、そして障害種別に分けた集計が可能であることなどの長所がある。こうした理由により、本報告では障害者手帳有無を分析する。
 本報告では障害者手帳の種別まで考慮して分析する。障害の中には重複障害もあるので、異なる種別の手帳を複数保有している人もいることになる。そのため、身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳と分けて集計すると、同じ人を2度以上算入することになる。一方、多変量解析では、各種障害者手帳を持つことの影響が、重複障害者では合算されるようなモデルを考えることができる。本報告の多変量解析では、種別を別個の変数として投入したモデルを検討する。
 本報告では、障害の重度性に関する分析を行わない。第2回生活と支え合いに関する調査では、世帯票は世帯主本人、個人票は18歳以上の各世帯員本人が回答する原則になっている。これにより、重度障害者の脱落が懸念されるため、今回は等級の情報は扱わない。
 この本人回答による制約は、障害者手帳種別の分析にも一定の影響を与える。例えば、療育手帳保有者から得られた回答が全て本人自らによる回答かどうかは明らかではない。ただし代理回答であっても、同居有無や婚姻状態などの客観的なことがらについての情報を分析することは問題が少ない(本人の考えを聞く主観的な項目では問題が大きくなる)。そのため、制約を踏まえつつ種別の分析を行なうこととする。
 先述の通り、個人票は18歳以上の世帯員の状況を尋ねるものである。上限は定められていないが、高齢者と生産年齢の障害者では状況が異なる可能性があるため、本報告では分析対象を64歳以下に限定した。
 この対象年齢の範囲で、障害者手帳保有と家族の状況との関連を分析する。家族関係としては、先に論じてきたように親元同居の割合が一つの焦点となる。それとともに、障害者手帳保有者本人が自らの家庭をどの程度形成できているかを知るため、配偶者有無および子供有無も分析した。
 分析手法の中心は「ロジスティック回帰」であり、様々な要因によって、あることがらがどの程度起こりやすくなるのかを分析できる。ロジスティック回帰においては、通常の方法(「最尤推定法」)ではなく、「罰則付き最尤推定法」(Firth法)(Firth, 1993)というものを用いた。健常者の間では普通に起こっていることが、障害者の間ではほぼゼロに近いという場合、障害は強く関連しているはずであるが、通常のロジスティック回帰分析ではうまく行かない。こうした状況では上記の方法が有効であるとされている(Heinze 2006; Agresti 2013)。統計ソフトStataのfirthlogitコマンド(Coveney 2008)を用いた。


Ⅲ・結果

 世帯票と結合できた個人票のうち、回答者の年齢が64歳以下であった回答は12,217件であった。このうち、世帯票と性別・出生年の対応がとれ、障害者手帳の有無について回答が得られたのは11,103件であった。
 障害者手帳有無によるクロス集計は表1の通りである。身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳のいずれか1種類以上を有する回答者は335名(3.02%)であった。この割合は、18歳以上64歳以下という年齢の範囲における結果であること(および本人回答が原則とされていたこと)に留意されたい。障害者手帳種別間の重複は、2種類ずつの組み合わせを調べた合計で10名であった。


表 1 記述統計量および障害者手帳状況とのクロス集計(18歳以上64歳以下)
手帳無 手帳有 手帳種別
身体 療育 精神
性別: 女性 52.09% 38.21% 38.46% 32.76% 41.30%
年齢(歳) 43.84
(12.75)
45.31
(13.00)
49.32
(11.92)
34.43
(12.62)
42.70
(11.37)
大学卒業 27.07% 14.42% 13.74% 0.00% 22.22%
配偶者有 65.47% 36.70% 49.47% 0.00% 29.35%
子供有 64.27% 37.66% 51.09% 1.96% 27.47%
父親同居/存命 34.48% 63.57% 55.22% 81.25% 63.83%
母親同居/存命 34.77% 56.74% 44.54% 82.05% 66.67%
N 10,768 335 195 58 92
有効% 96.98% 3.02% 1.76% 0.52% 0.83%
出典: 国立社会保障・人口問題研究所「生活と支え合いに関する調査」(2017年)のデータから筆者作成
手帳有無が不明な回答者は除外した。連続変数は「平均(標準偏差)」と表記した。
手帳種別ごとの集計では、比較的少数ではあるが、複数の手帳を持つ人が2回以上計上されている。
割合等は各変数の有効回答に基づくため、分母は下から2行目に記載の N より小さい場合がある。

 回答者の属性については、やはりまず障害者手帳種別による年齢の相違を踏まえる必要がある。ここでは64歳以下のケースのみを分析対象としているが、この範囲に限定しても、身体障害者手帳保有者の平均年齢は障害者手帳非保有者よりも5歳以上高く、療育手帳保有者は9歳以上低い。そのため、障害者手帳の有無と生活状況の関連を分析するには、年齢を揃える(統制する)ことが欠かせない。
 性別は男性の方がやや多い。いずれかの障害者手帳の保有者と非保有者の間でχ2検定を行うと、少なくとも5%水準で有意差が認められた(χ2=25.067, df = 1, p = .000)。
 教育背景については、最終学校卒業後に受障した人もいると考えられる。そのため障害者手帳保有にいよるものかどうかは明らかではないが、全般的に教育面で不利な立場にある。
 そして家族のあり方についてであるが、障害者手帳保有者とそれ以外で異なることが示唆されている。障害者手帳保有者の間では、現在結婚している人の割合は少なく、特に療育手帳を持つ回答者の中ではいなかった。子供がいる人もこれに近い傾向が見られる。一方で親と同居している人の割合は高く、回答者中の療育手帳保有者では8割以上が親と同居しているという結果であった。
 以上で見られた傾向が、年齢や性別等の基本属性を統制した上でなお確認されるかどうかが問題となる。多変量解析の結果を示したのが表2である。
 表2に記載しているのはロジスティック回帰分析の係数であり、見方としては、プラスであればその説明変数の増加とともに対象のことがらが起こりやすく、マイナスであれば生じにくくなることを意味する。また、アスタリスクがついている項目は、それが関連していると考えて実際には間違っている確率が5%未満(*)あるいは1%未満(**)であることを示しており、要するに関連していると考えて差し支えないということを意味する。


表2 ロジスティック回帰分析( 18歳以上64歳以下)
配偶者有
ロジット
子供有無
ロジット
父親同居
ロジット
母親同居
ロジット
性別: 女性 0.150 ** (0.048) 0.548 ** (0.049) -0.532 ** (0.061) -0.604 ** (0.054)
年齢(歳) 0.067 ** (0.002) 0.084 ** (0.002) -0.036 ** (0.003) -0.043 ** (0.002)
年齢(歳) 2乗 -0.004 ** (0.000) -0.003 ** (0.000) 0.003 ** (0.000) 0.003 ** (0.000)
教育背景(卒業) (高校卒業者を基準とした数値)
小学・中学 -0.074 (0.099) 0.289 ** (0.109) 0.011 (0.145) -0.027 (0.125)
短大・高専 0.327 ** (0.075) 0.017 (0.076) -0.050 (0.095) -0.008 (0.083)
大学・大学院 0.312 ** (0.055) -0.011 (0.055) -0.277 ** (0.068) -0.299 ** (0.060)
障害者手帳: 身体 -1.000 ** (0.162) -1.054 ** (0.170) 0.931 ** (0.268) 0.505 * (0.204)
障害者手帳: 療育 -4.846 ** (1.430) -3.605 ** (0.853) 1.589 ** (0.502) 2.130 ** (0.533)
障害者手帳: 精神 -1.676 ** (0.243) -1.774 ** (0.253) 1.265 ** (0.322) 1.415 ** (0.282)
定数 1.065 ** (0.046) 0.808 ** (0.046) -0.994 (0.057) -0.874 ** (0.051)
McFadden 0.196 0.225 0.135 0.145
χ2 1810.52 ** 2072.05 ** 856.60 ** 1140.75 **
N 10,918 10,703 6,119 8,025
出典: 国立社会保障・人口問題研究所「生活と支え合いに関する調査」(2017年)のデータから筆者作成
**: p < .01, *: p < .05。ロジットモデルはFirth法で推定し、係数を表示。
年齢は中心化して(平均値43.99歳を差し引いて)投入している。

 配偶者有無については、療育手帳保を持つ全ての回答者で配偶者がいないため、通常のロジスティック回帰では推定できないが、Firth法による推定では有意な極めて強い関連が見出される。関連の強さは異なるが、身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳保有者においても有意な負の関連が見られる。これは子供の有無に関しても同様であり、各種障害者手著保有者において子供有のオッズは有意に低く、とりわけ療育手帳保有者においてその傾向が強い。
 逆に父親同居・母親同居に関しては、各種障害者手帳保有者において同居のオッズが有意に高い。特に療育手帳保有者のオッズが高いが、それに続いて精神障害者保健福祉手帳保有者においても高い。
 対象者の平均年齢(43.99歳)と高校卒業(該当者が多いため)を前提として予測確率を求めた。手帳非保有者・身体・療育・精神の手帳保有者の順に、予測された確率を示す。配偶者有の確率は、男性で74.37%・51.62%・2.23%・35.18%、女性で77.11%・55.34%・2.58%・38.67%であった。身体の手帳保有者で20%以上の下押し、精神では40%弱の下押しとなっている。療育手帳保有者では極めて低い割合となっている。
 子供有の予測確率は、男性69.16%・43.88%・5.75%・27.57%、女性79.51%・57.50%・9.54%・39.71%であった。身体の手帳保有者で20%以上、精神で40%前後、手帳非保有者よりも低い値となった。ここでも療育手帳保有者では極めて低い割合となっている。
 父親との同居確率は、男性で27.01%・48.42%・64.45%・56.72%、女性で17.86%・35.55%・51.58%・43.50%であった。身体の手帳保有者で20%前後、療育では30%以上手帳非保有者より高い値となった。
 母親との同居確率は、男性で29.44%・40.86%・77.82%・63.20%、女性で18.57%・27.42%・65.74%・48.42%であった。身体の手帳保有者と手帳非保有者の差は10%前後となるが、療育手帳保有者と非保有者では50%弱の開きとなる。精神障害者保健福祉手帳保有者でも30%以上非保有者より高い。


Ⅳ・考察

 これらの分析結果は、基本属性を揃えた(統制した)時の各種障害者手帳保有者の家族関係の状況を顕著に表すものである。障害者手帳保有の家族関係への影響は、障害者手帳種別間で大きく見れば共通の傾向が見出されるものの、その程度は著しく異なっている。全般的に言えば、障害者手帳保有者は非保有者に比べ、身体・療育・精神のいずれの種別においても、離家し自らの独立した世帯を持つ機会が少ない。この結果からは、日本の障害者手帳保有者が依然として「脱家族」を十分には達成し得ていない状況が浮かび上がってくる。
 種別間の相違を見ると、身体障害者手帳保有と家族関係との関連は他と比較すれば弱いものの、やはり有意で無視しえない関連がある。知的・精神の手帳保有は、親との同居の確率の高さや、自ら配偶者・子供を持つ確率の低さが著しい。親との同居には、親を介護するという場合もあるが、障害者手帳非保有者よりもこれだけ顕著に高いのは、障害者手帳保有者が成人後も親の養育下に止まり続けていると解釈するのが妥当であろう。岡原(1995)は、日本社会においては健常者も独立の規範が弱いとしていたが、今回の分析からは、障害者手帳保有者と非保有者の状況の違いが示されている。手帳保有者は非保有者よりも親元同居が多く、配偶者・子供を持つ機会は非保有者よりも少ない。こうして障害者手帳保有それ自体の効果や有意性を推定することができた。


V・結論

 本報告では、障害者手帳保有と社会生活の関連を多変量解析によって分析した。2017年の調査では、生産年齢にある対象者のうち3%程度しか障害者手帳を保有していなかったが、生活と支え合いに関する調査のような大規模調査によって、障害者手帳保有者が経験している不利を、その確率も踏まえて明らかにすることができた。更には、障害者手帳種別を分けても、有意な関連性が検出できたことにより、障害種別ごとに程度や様相が異なる不利の経験を捉えることができた。生活と支え合い調査に障害者手帳有無が組み込まれたのは2017年が初めてであったが、このことが障害研究に持つ意義は非常に大きい。
 今回はまず、障害者手帳保有者と非保有者の間にある、年齢や性別等の差をモデルによって統制することで、障害者手帳保有が家族関係とどの程度関連するかを検討した。今回の分析は、障害者手帳保有者が離家の機会を十分持てていないことを明確に示しているが、例えば可処分所得が親との同居や婚姻などの機会に与える影響を分析するといったことはできていない。単純に所得をモデルに投入するというだけでは、所得も障害者手帳や諸属性の影響を受けていることを踏まえていないため不正確になるおそれがある。より複雑な分析を可能にするモデルの使用も検討する必要があろう。
 今後の生活と支え合いに関する調査に期待されることとしては、回答方法に関する整備と受障年齢の設問の追加が挙げられる。本人回答を原則とすることによって、障害者手帳保有者の中で回答への支援や代理回答を必要とする人の情報は脱落するおそれがある。可能な限り本人回答を依頼しつつ、回答補助や代理回答も可能とする一方で、回答方法を明確化することが考えられる。
 また、受障年齢の設問を追加することによって、障害と不利の因果関係をより明らかにできる。障害が先天的か、中途でもどの年代のものかによって結果の解釈は変わってくる。本調査は基本的には横断調査(一時点での調査)であるが、受障年齢のような過去質問を加えることで因果推論がある程度可能になる。これらに加えて、国際的な障害変数と障害者手帳保有を比較することも興味深い課題である。今後、同調査を基にした障害統計が更に発展することが望まれる。


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■質疑応答

※報告掲載次第、9月19日まで、本報告に対する質疑応答をここで行ないます。質問・意見ある人はtae01303@nifty.ne.jp(立岩)までメールしてください→報告者に知らせます→報告者は応答してください。宛先は同じくtae01303@nifty.ne.jpとします。いただいたものをここに貼りつけていきます。
※質疑は基本障害学会の会員によるものとします。学会入会手続き中の人は可能です。→http://jsds-org.sakura.ne.jp/category/入会方法 名前は特段の事情ない限り知らせていただきます(記載します)。所属等をここに記す人はメールに記載してください。

*頁作成:高 雅郁
UP: 20200910 REV:
障害学会第17回大会・2020  ◇障害学会  ◇障害学  ◇『障害学研究』  ◇全文掲載
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