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シリーズ:オンライン事務局の取り組み(2)

「障害学国際セミナー 2020」における、生存学オンライン事務局の取り組み
その2
――障害学国際セミナーの様子と、今後への課題――


中井 良平橋口 昌治 2020/09/19
障害学会第17回大会報告 ※オンライン開催

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last update: 20200918


質疑応答(本頁内↓)



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■報告本文


その1から続く

4. 前日及び当日の様子

4ー1. 前日の様子
 前日に東京から京都入りした中井は、衣笠キャンパスで準備作業を進めていた、橋口、安田と合流した。3名で機材と設備の確認を行ったところ、以下の問題が明らかになった。

1)動画出入力を行う予定となっていた部屋でのインターネット回線の不備
2)予備とする予定のPCにO Sが古いものであった

1)については別稿で記すが、設備の確保が前日夜までずれ込んだため、予定してあった本番形式のテストが当日にずれ込むことになった。2)については、事務局員の事務作業用PCを予備分に回すこと、及び、急遽大学関係者からPCを1台借りることにより解決が図られた。当日実際に配置されたPCは以下の通りであった。

動画出入力用:デスクトップPC3台、及び、ノートPC1台、都合4台(予備を含む)
英日通訳者用:ノートPC5台(予備を含む)

4ー2. 当日の様子
4ー2ー1. 本番直前の様子
 急遽使用する部屋が変更となったため、機材の移動を行う必要があったのだが、その前に、当初PCが配置されていた部屋で、前日行えなかったPCとキャプチャーボードの接続テストが行われた。ここで指す接続テストとは、PC2台とキャプチャーボードを繋ぎ、入力側のPCに『RECentral』をインストールした上、両PC間で問題なく接続が行われるかを確認するものであった。前日の準備が想定外の多忙を極め、東京より持参されたキャプチャーボードは、まだ箱に収められたままであった。当初の予定では、キャプチャーボードの接続テスト後、ウェブ会議ソフトを用いた動画転送テストを行う予定であったが、両PC間で画面の転送がうまく行えないというトラブルが起こった。その問題は結局、デスクトップPCに接続されたモニタの設定を変更することで解決されたのだが、数十分の遅れが生じ、逼迫していた残り作業時間をさらに縮めるものとなり、動画転送テストを省略せざるを得ない事態となった。このトラブルの原因は、事前に東京キャンパスで行った転送テストでは、ノートPC2台を用いており同様の現象は起きなかったのだが、本番当日になり、初めて使用するデスクトップPC2台の間での接続が行われたためであった。
 次に、英日通訳者に使用してもらうために用意されたPCの1台を、新たに用意した部屋の有線回線に接続したところ、接続が不安定であり、回線が途切れてしまうというトラブルが起こった。我々はPC端子の接触不良であると判断し、予備のPCとの交換を行った。このトラブルにより、通訳者用の予備のPCがなくなってしまう、ということになり、動画転送用に準備されていた2台の予備のうち、1台が通訳者用に回されることとなった。
 セミナーは14時開始で、当日10時には英日通訳を行うサイマル社の事務担当者(非通訳者)が来られ、事前打ち合わせを行う予定であったのだが、諸々の遅れにより不十分なものに終わってしまった。
 キャプチャーボードのひとまずの接続が確認され、機材の搬入が終わった。中井がキャプチャーボードの接続にかかりきりになっているあいだ、安田が日英通訳者2名が使用するマイクのテスト等を行っていた。
 事務局メンバーは午後の作業に備え、短い昼食休憩を挟み、通訳者の到着を待った。当初、研究所の書庫となっている部屋で、橋口、安田が、ウェブ会議ソフトのホスト作業及び、当日の様子の記録をつける予定であったが、事務作業用のPCを会議用に回してしまったため、橋口は持参のPCで、安田は帰宅し、それぞれ作業を行うことになった。  安田の帰宅後、英日通訳者2名が到着した。橋口は、書庫でウェブ会議ソフト:Bのホスト作業を開始し、中井は別室で、二台のPC及びウェブ会議ソフト間での動画転送の作業にあたった。この時点で、13時55分のセミナー開始まで、時間はそれほど残されていなかったのだが、ここからトラブルが頻発することになる。
 まず、先ほどは問題なく行えたPCとキャプチャーボードの接続作業がうまくいかず、画面転送が行えないということが起こった。これは、ごく単純なミスで、HDMIケーブルを機器のin端子ではなく、out端子に接続してしまっていたため起こったのだったが、中井は焦りから午前中に起こった接続トラブルとその解決法を再び試みようとし、当然ながらうまくいかず、解決に10分程度を要してしまった。
 その間、サイマル社の事務担当者が、マイクの使い方を説明してほしいと、通訳者の伝言を中井に伝えに来られた。しかし、前述の通り、マイクのセッティングを行った安田は急遽自宅に戻っており、説明を行える者がいなくなっていた。中井、サイマル社の事務者及び通訳者で、使い方を推測しながらマイクを触り、まもなく解決を見たのだが、ここでもタイムロスがあった。
 ようやくマイクの確認が終わり、4台のPCを2つのウェブ会議ソフトに接続したのだが、事前の接続テストでは確認できなかったトラブルが続け様に起こった。第一に、先程端子の接触不良の別PCから交換したはずのPCで、再度回線が途切れるという事態が起こった。LANケーブルの交換が行われたが、問題は解決されず、部屋には4回線が備え付けられていたものの、その内3回線しか使えない、ということとなった。サイマル社の方々に陳謝し、3回線で可能な機器の配置を急遽相談した結果、通訳者はウェブ会議ソフト:Aを各自のPCで視聴し、ウェブ会議ソフト:Bでの音声送信は、通訳二名の間に置いたPCとマイク一組を共有し、対応して頂けることとなった。
 ところが次に、ウェブ会議ソフト:Aを視聴する2台のPCのうち1台から音声が流れないトラブルがあった。そのPC上の別のアプリケーションからの音声は確認でき、原因は不明であったが、おそらくPCとウェブ会議ソフトの相性の問題と思われた。回線不備のため余ることとなったPCでも確認したのだが、そちらでもウェブ会議ソフト:Aからのみ音声が流れなかった。事務局は解決策を提示できなかったのだが、通訳者がイヤホンスプリッタ持参されており、ウェブ会議ソフト:Aの視聴に関しても、1台のPCから音声を分配するかたちで対応していただけることとなり、ことなきを得た。

4−2ー2.セミナー開催中の様子
 セミナー開始後、サイマル所属通訳者/事務者、橋口、中井は、それぞれ異なる部屋に分かれ、各自の作業を行った。橋口はウェブ会議ソフト:Bのホスト役、及び、視聴者や関係各社からの連絡に対応した。中井は、通訳者が通訳を行っている部屋の隣室で、PCとモニタを2組並べ、動画転送作業が滞りなく行われているかの確認を行なっていた。中井は時折隣室を訪れ、通訳作業に問題が生じていないかを、サイマル事務者に確認した。何度目かに隣室を訪れた際、事務者から慌てた様子で、「接続が切れてしまった」との訴えがあり、中井は急いで通訳者が作業するPCを確認した。すると、通訳者から「PCの接続ではなく、ウェブ会議ソフト:Aのホストの接続が切れた様だ」といった趣旨を伝えられ、間も無く、ウェブ会議ソフト:Aの画面は復旧した。中井はトラブルの原因が自分たちの用意した機材や設備の問題ではなかったことに安堵し、部屋を出てトイレへ向かったのだが、自身の作業している部屋へ戻った際発見されたのは、2台のPC間で動画転送がストップしている状態だった。原因は、ウェブ会議ソフト:Aホストの通信切断に伴い、ウェブ会議ソフト:Aアプリケーション上での会議が終了してしまっていたためだった。会議画面を再度表示させるには、再接続の作業が必要であった。通訳者作業室では、通訳者が再接続を行なっていたのだが、中井はその場面を見ておらず、自身の作業室へ戻るまで、問題の認識が遅れてしまった。転送が途切れている間も、ウェブ会議ソフト:Bは動作し続けており、通訳者はソフト:B上の画面が暗転し何も映っていないことを疑問に思いながらも通訳作業を続けていた。後ほど、別室でウェブ会議ソフト:Bの画面をモニターしていた橋口に中井から確認したところ、暗転した画面とともに、通訳された長瀬教授の切断を詫びる内容の発話が流れ、間も無くして画面が復旧したとのことであり、大きな問題とは感じなかった、とのことであった。
 その様にいくつかのトラブルがありながら、定刻から大きく遅れることなく、セミナーは終了した。セミナー中の問題は上記切断トラブルの一度であった。

5.今後への課題

5ー1.課題と要因
 以上の様に、いくつかの致命的となりかねないトラブルはありながらも、セミナーを無事開催することができた。韓・中・台・日のアジア四地域からの映像を、使用できるウェブ会議ソフトの制約を受けながら中継し、その英語音声を日本語として配信、手話/文字通訳を行うという、おそらくこれまで前例のない取り組みを終えられたことは、評価されて良いことだと事務局メンバー一同自負している。
 その上で、今回明らかになった、今後についての課題を記す。今回起こった主なトラブルとその原因は以下のものであった。

1)遠隔地での分担作業に起因した問題
 新型コロナウイルス感染症流行の影響もあり、作業者が遠隔地に分かれていたため、連携がうまくいかず、確認事項の漏れが生じた。技術・設備面を主担当していた中井が前日に京都入りしてから明らかになった課題がいくつかあり、スケジュールが想定より後ろ倒しになってしまった。そのため事前テスなど、いくつかの工程が省かれ、改善が必要な問題がセミナー本番の開始直前まで見落とされてしまう、ということが起こった。

2)人員の不足により生じた問題
 作業人員の人数に余裕がなかったため、想定外の事態が起きた際の対応に人手が足りなくなる、ということが起こった。具体的には、マイクの動作確認を行った安田が、予備PCの不足により急遽自宅へ戻っての作業となり、通訳者への動作説明が行えなくなった。また、当初の人員配置は、作業室3室に対し事務局メンバー3名、つまり1室に1名の配置が可能であったが、上記理由により3室に対し2名の配置となった。結果、中井か橋口が2室を行き来することとなり、ウェブ会議ソフト:Aの通信切断後の対応に遅れが生じた。

3)予算及び機材が限られていることに起因した問題
 今回の様にオンラインで大規模かつ複雑な催しが行われる際、その肝となるのはいうまでもなくPC等情報機器と通信環境である。通信環境については別稿で記すが、情報機器について、今回は、キャプチャーボードを除き、手元にある物を使う、ということしかできなかった。それはつまり、予算の問題でもある。幸いにも、研究所のPC入れ替えのタイミングと重なり、事務作業用とはいえ2台の新しいデスクトップPCが購入されており、動画中継にはそれらを用いることができた。ただ、予備のPCまでは必要に足るスペックのものを用意することができず、1)であげた連携不足もあり、当日事務局メンバー1名が自宅へ戻っての作業を余儀なくされた。4章に記した、ウェブ会議ソフト:Aからの音声が聞こえなかったというトラブルの原因は、即時の機材返却の必要等もあり、その後検証されず、事務局メンバーで解決可能なものであったかどうかは不明であるのだが、当日の結果だけを見れば、通訳作業に回せる予備のPCを複数用意していたにもかかわらず、最終的には台数の不足という事態となった。

5ー2.未知の環境を作り上げるという試みと得られたもの
 新型コロナウイルス感染症流行の影響により、各種講演等のオンライン開催が必要となった事態を受け、急遽研究所内に設置されたオンライン事務局において、それぞれが担当する作業の専門家ではない各メンバーは、手探りの中作業を続けた。それは、これまでに例のない複雑な構成のオンラインセミナーを、知識や経験の蓄積のない新設の事務局及びそのメンバーによって開催を目指す、という試みであり、ゼロから未知の環境を構築し、整備していくことであった。新型コロナウイルス感染症の流行下という状況で、対面でのコミュニケーションを避けるべきとされる中、我々はウェブ会議ソフトやメールでの打ち合わせを重ねた。既に記した様に、セミナーを無事終えることができたという点で、この試みは成功であったと言えるだろう。一方、未知の作業を、しかもそれぞれが離れた場所から分担し、環境を構築するという試みにおいて、当初問題と認識できていなかったいくつかの課題が残されたということも、既に述べた通りである。
 今回我々が痛感したのは、本番と同じ環境でテストを行い、一つずつ問題をクリアしていくという、オフラインで催し等を行う際と同様の作業の重要性だった。事務局のメンバーは皆、生存学研究所に関わりのある、人文・社会系の研究者たちであり、情報機器の扱い等に長けている人たちではなかった。事務局メンバーの、今回の催しを行う以前の情報機器やその関連物に関する心象は、決まった入力をすれば決まった出力を返してくれるもの、という程度の漠然としたものだったと考えられ、今回起こったトラブルの原因と考えられる、PCの細かな設定の必要性、同一のものであると認識していた個々のPC間の異なり、ソフトウェアとハードウェアの相性、回線設備等の物理的なメンテナンスの問題、といった部分、すなわち、各種機器や設備に対する調整の必要性という点に認識が至っていなかった様に思われる。そのため、機器や環境を手配した段階では課題を十分に認識できておらず、前日からの細かな点検で複数の問題が明らかになる結果となった。
 次回以降の課題としては、前段であげた3つの要因を念頭に置きつつ、抜かりなく事前テストを実施し、課題がクリアされた状態の環境を整備した上で、本番に臨むことができるか、といったことになるだろう。今回の例で言えば、技術・設備部分の担当者となった中井が、早い段階で当日用いられる機材や設備の確認を行い、同様に、課題が見つかった場合の複数回の実施を想定した早期の事前テストを行うべきであったと考えられる。設備の予約や機材の取り寄せに必要な日数を考えれば、少なくとも、本番の二週間前には初回の事前テストが行われることが望ましかっただろう。実際は、本番から二週間前の7月4日時点では、新たに書庫に導入され、当日使用されたPCの設置も行われていない段階であった。今回は、折り良く新しいPCが配備された時点でのセミナー開催となり、またそれ故に作業に遅れが生じた部分もあるのだが、結果的には比較的高性能のそれらPCが役立ってくれ、開催に漕ぎ着けることができた。ただ、先にあげた要因から、開催間近になるまで多くの不確定要素があり、現在揃っている機材で果たして本当に目的とする作業が行えるのか、という議論が準備期間中絶えず続けられたことは、付言しておかなければならないだろう。今回仮に、必要機材等が揃わなかった場合、どの様な対応が可能であり、果たして目的の達成ができたのか、改めて検討されて良い課題であるだろう。期日までに環境を整備するという作業に際し、限られた人員や予算をどう配備し必要な作業を進めていくかという問題は、今後も課題として残されている。一方で、事務局設置以降、メンバーは複数のプロジェクトに携わり遂行し、現在も携わっている。そこで新たに得られた知見は、真新しい発見ではないだろうが、組織の運営を円滑にする知恵として、記述され、蓄積されていくだろう。本報告も、そのことに寄与できたなら幸いである。

6.画像資料

1)橋口による当日作業の図示(6月21日作成)
橋口による当日作業の図示(6月21日作成)

2)動画転送の様子
左のPC:A(及びウェブ会議ソフト:A)から右のPC:B(及びウェブ会議ソフト:B)への転送が行われている
左のPC:A(及びウェブ会議ソフト:A)から右のPC:B(及びウェブ会議ソフト:B)への転送が行われている



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■質疑応答

※報告掲載次第、9月19日まで、本報告に対する質疑応答をここで行ないます。質問・意見ある人はtae01303@nifty.ne.jp(立岩)までメールしてください→報告者に知らせます→報告者は応答してください。宛先は同じくtae01303@nifty.ne.jpとします。いただいたものをここに貼りつけていきます。
※質疑は基本障害学会の会員によるものとします。学会入会手続き中の人は可能です。→http://jsds-org.sakura.ne.jp/category/入会方法 名前は特段の事情ない限り知らせていただきます(記載します)。所属等をここに記す人はメールに記載してください。



*頁作成:岩ア 弘泰
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障害学会第17回大会・2020  ◇障害学会  ◇障害学  ◇『障害学研究』  ◇全文掲載
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