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シリーズ:オンライン事務局の取り組み(1)

「障害学国際セミナー 2020」における、生存学オンライン事務局の取り組み
その1
――オンライン事務局の設置・障害学国際セミナーに向けて――


中井 良平安田 智博 2020/09/19
障害学会第17回大会報告 ※オンライン開催

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last update: 20200918


質疑応答(本頁内↓)



■キーワード



■報告本文

はじめに

 新型コロナウイルス感染症の流行により、人々の生活を始め社会の様々な場所に大きな影響が出ている。本学生存学研究所もその例外ではなく、予定されていたセミナーや大会等の催しを、中止、あるいはオンラインでの開催に切り替えて行うことになった。新たな課題に取り組むため、研究所内には、研究所のサイト更新作業を主に行なっていたメンバーから成る「生存学オンライン事務局」が急遽設置され、催しの運営等にあたることとなった。特に、7月18日に予定されていた「障害学国際セミナー 2020」は、韓国、中国、台湾、日本から講演者/視聴者の参加する、国際的な催しであり、解決しなければならないいくつかの課題が想定されていた。いずれも担当作業の専門家ではない事務局の各メンバーは、手探りの中開催に向け割り当てられた作業にあたり、想定外のトラブルもある中、成功裏に催しを終えることができた。本報告は、今後も続いていくことが予想されている、生存学研究所及び本学主催の、オンライン上での講演等のために、この度の取り組みを記録として残しておくことを目的とし、書かれる。

1. 方法の策定

1ー1. オンライン事務局の設置
 生存学オンライン事務局が設置されたのは、6月16日のことであり、同日、事務局内での第1回ミーティング(オンライン)が開催された。主な議題は、以下の2点であった。

1)セミナーは全て英語のみで行われ、そこには通訳者等を介在させられない。主催地域ということで多く参加が予定されている日本からの視聴者向けに、日本語音声を伴った別ライン(以下:傍聴ライン)の中継映像を提示する必要があった。
2)日本からの視聴者向けにはウェブ会議ソフト:Bを用いた動画配信が予定されていたが、他の参加地域においては同ソフトの使用に制限があった。そこで、セミナーはウェブ会議ソフト:Aを用いて行い、そこで配信されている映像をウェブ会議ソフト:Bに中継、通訳者による日本語音声を乗せることが計画された。

 第一に出された案は、PC:A上のウェブ会議ソフト:Aで配信されている映像を、ビデオカメラで撮影し、PC:Bに出力、PC:B上でウェブ会議ソフト:Bを立ち上げ、入力された映像を配信する、というものだった。しかしながら、生存学研究所はビデオカメラを所有しておらず、また、上記方法では目的とする映像の劣化が懸念されたため、決定期限を決めた上、別の方法が模索されることとなった。
1−2.遠隔地での準備・中継機材の選定
 セミナーはオンライン上で行われるのだが、当日ホスト役のPCが設置されるのは京都の立命館大学衣笠キャンパスであり、事務局メンバーである橋口、安田が京都で機材と設備の準備にあたり、司会進行の長瀬修教授は当日の神奈川からの配信に備える、技術面を主に担当することになった中井は東京で準備を進める、と、それぞれ離れた場所で担当の作業を進めることとなった。新型コロナウイルス感染症流行の影響により、この後に通訳を依頼した各社及び、事務局メンバー間の連絡は、基本的にオンライン上で行われた。
 中井は6月22日に、東京の電気街である秋葉原駅周辺の電器店へ向かった。我々のいずれも、特段情報機器についての知識を持ち合わせていたわけではなく、その時点では、ウェブ会議ソフト間の動画中継に関して、特殊なケーブルのようなものを購入すれば行えるのではないか、と考えていた。いずれにしても、機材の購入が必要であり、餅は餅屋ということで、電気街へ足を運ぶ以外の選択肢を思いつくことはできなかった。JR秋葉原駅に隣接する大型電器店の専門フロアで訊ねたところ、PC間で動画を転送するという目的は、ケーブルでは行えず「キャプチャーボード」という専門機材を用いる必要があることを説明された。売り場へ案内され、商品の説明を受けようとしたところ、目的の機能を持つ製品の殆どが店頭から売り切れているということがわかった。店頭で受けた説明では、通常PCは有線での動画出力は可能であっても、動画入力が行えず、キャプチャーボードを用いることにより、外部からの有線動画入力が可能となる、とのことであった。コロナウイルス感染症流行の影響でテレワークが広く行われることになっており、カメラの内蔵されていないPCのユーザーが、外部カメラからの映像をPCに入力してウェブ会議に臨むため、にわかにキャプチャーボードの需要が急増している、とのことであった。必要とする機能を持つ機材のうち、店頭に残っていたのは海外1メーカーの商品のみであり、複数の製品との比較検討を行うことはできなかった。当初の予定では機材の選定を同日終えてしまうつもりであったのだが、予想外の品薄という事態に遭い、一旦決定を延期することとなった。期日まであまり日がない中、柔軟に対応するために、日数を要する大学の事務方の承認を待たず、事務局内で商品購入代金を立て替えるということになっていたのだが、機材は3万円程度の価格であり、ケーブルの購入費用と想定していた金額よりもかなり高額となってしまったため、購入が躊躇われたという内部事情もあった。その後、ウェブ上で商品を探したものの、品薄状態は変わらなかった。我々はウェブ上でも商品在庫のあった、前述の海外メーカーへ、目的とする使用が可能であるか、メールでの問い合わせを行い、同じくウェブ上で在庫のあったキャプチャーボードを製造する国内メーカーへ、電話問い合わせを行った。問い合わせ結果は、国内メーカーからは「そのように使用できる製品は製造していない」とのことであり、海外メーカーからは、「使用条件を満たしていれば、目的の使用法が可能である」とのことであった。この時点で候補は絞られ、購入機材が決定した。これも内部事情になるのだが、事務手続きを円滑に行うために、商品の購入を京都にいる研究所所長に行ってもらい、東京の中井宛にオンラインショップから配送してもらう、という手続きをとった。その際、行き違いがあり、商品到着が予定より1日遅れることになった。タイトな日程の中、後述する中継テストを行う前日に機材が手元に届いているはずであったのだが、テスト当日に届くことになり、到着時間帯によってはテストを延期しなければならないというところだった。
 問題は、使用条件であった。メーカーは、機器接続に適したPCの各種スペックを勿論公表しているのだが、衣笠キャンパスにある研究所保有のPCは、一般的な事務作業その他を想定され購入されたものであり、専門の機材を用いそのように動画を扱うことは想定されていなかった。当然ながら、メーカー記載の要求を満たしていない項目も多くあった。我々は商品購入後、電話窓口の存在しない海外メーカーとメールで何度かやりとりをし、使用するPCのスペック等を知らせた上、機材の目的の使用が可能か問い合わせを行ったのだが、メーカーからの返答は「機器は記載の条件で動作します」というものだった。  しかしリアルタイムでの動画転送という目的のための他の方法を我々は知らず、それ以上調べて検討するという時間もなかったため、そのような返答も承知の上で機材の購入に踏み切ったのだった。用意できる機材と環境で、中継テストを行い、うまく行けば当日も決行することと決め、問題があればその時考えるという、スケジュール優先での作業を行うしかなかった。

2.中継テスト

2−1.事務局内での中継テスト
 6月30日に立命館大学東京キャンパスにて、事務局メンバー内でのテストを行い、そこで問題がなければ、英日通訳、文字通訳、手話通訳の専門家を交え、再度別日に中継テストを行うこととなった。
 東京キャンパスでの実施となった理由は次のようなものであった。キャプチャーボードメーカーが表示している必要スペックを満たさないとしても、ある程度それに近いPCを2台用意する必要があった。1台目のPCは中井が既に、前もって生存学研究所所有のものを郵送で取り寄せていた。2台目のPCを東京キャンパスで借り、使用する必要があった。
 幸いにも6月30日の中継テストは無事に終わった。使用機材(キャプチャーボード)であるAVerMedia製「Live Gamer ULTRA(型番:GC553)」とWindows PC2台を用いた、動画中継手順は以下のようなものであった。

1)動画転送(出力)を行うPC(以下PC:A)とGC553のHDMI in端子をHDMIケーブルで接続する。
2)GC553のUSB(タイプC)端子と動画転送(入力)を行うPC(以下PC:B)をUSBケーブルで接続する。
3)AVerMedia公式サイトから、PC:Bに、録画・ライブ配信・動画共有ソフトウェア『RECentral』をダンロード、インストールする。
4)PC:Aにて、動画転送(出力)を行うウェブ会議ソフト(以下ウェブ会議ソフト:A)を起動し、ウェブ会議を開始、全画面化(PCモニタ上)する。 5)PC:Bにて『RECentral』を起動及び操作し、PC:Bからの入力があることを確認、全画面化(アプリケーション上)する。
6)PC:Bにて、動画転送(入力)を行うウェブ会議ソフト(以下ウェブ会議ソフト:B)を起動し、ウェブ会議を開始する。ウェブ会議ソフトの画面共有機能で、『RECentral』を選択する。

 以上の手順で、PC:A―PC:B間及び、異なるウェブ会議ソフト間での、リアルタイム動画転送が可能となった。転送時の遅延は目視では感じられなかった。また上記方法では音声は転送されない。

2−2.通訳各社を交えての中継テスト
 事務局内での中継テスト成功を受け、7月6日に、英日・手話・文字通訳を交えての第2回中継テストが行われた。テストはセミナー当日を想定し、以下の手順で行われた。
 *参加者は、司会:長瀬修教授、英日通訳:株式会社サイマル、文字通訳:株式会社ミライロ、手話通訳:NPO法人ゆに、及びオンライン事務局メンバーであった。中井が立命館大学東京キャンパスで中継機材の操作を行い、橋口、安田は自宅PCでウェブ会議に参加した。
 *サイマル所属通訳者は、ウェブ会議ソフト:Aで英語音声を受信し、ウェブ会議ソフト:Bで日本語音声を発信するため、PC2台を必要とした。
 *ウェブ会議ソフト:Aのホストは長瀬教授、ウェブ会議ソフト:Bのホストは中井であった。

1)当日司会を行う長瀬教授が、英語でスピーチ及び、即興で発話を行い、ウェブ会議ソフト:Aで発信する。
2)サイマル所属通訳者が、ウェブ会議ソフト:Aで、長瀬教授の発話を視聴すると同時に、ウェブ会議ソフト:Bの無音の配信動画(ウェブ会議ソフト:Aから遅延なくリアルタイムで転送したもの(以下:リアルタイム))に、日本語音声を被せていった。
3)ミライロ所属手話通訳者は、ウェブ会議ソフト:Bで、日本語音声の吹き込まれた配信動画(リアルタイム)を視聴すると同時に、ゲストとして、ウェブ会議ソフト:B上で、手話通訳を行った。
4)ゆに所属文字通訳者は、ウェブ会議ソフト:Bで、日本語音声の吹き込まれた配信動画(リアルタイム)を視聴すると同時に、文字通訳アプリケーション「captiOnline」を用いて、字幕を送出していった。

 中継テスト自体は問題なく進んだ。この時点ではウェブ会議ソフト:Bで英語音声を流すか否かが決まっていなかったのだが、英日通訳者から、以下の指摘があった。

a)講演者が各自異なる環境で発話するというウェブ会議の構造上、各話者の音量等に異なりが出ることが想定され、本番では音量調整が必要になると予想される。
b)ウェブ会議ソフト:Bでは英語音声を流さないとした場合、英日通訳時のタイムラグにより、話者と発話内容にズレが生じると予想される。

 検討の結果、事務局メンバーに割り当てられた作業は既に目一杯ということで、ボリューム調整の作業は行わず、ウェブ会議ソフト:Bでは英語音声を流さないこととなった。


3.必要機材

3.セミナー当日の必要機材
 別稿で言及してあるオンライン環境の課題をクリアするため、英日通訳者2名は、セミナー当日、京都の立命館大学衣笠キャンパスで作業にあたることになった。手話/文字通訳者は、ウェブ会議ソフトを単独で用い音声と動画を視聴し、各々の通訳を行うという、生存学研究所でもオンライン講演の情報保障として、これまで各社に同様の依頼を行っていた案件であったが、複数のPCとウェブ会議ソフトを用いての英日通訳は、事務局メンバーも英日通訳者も経験のない作業であった。事務局と英日通訳者の間で入念に打ち合わせが行われ、当日について、以下のことが決まった。

1)英日通訳者1名につき用いる、PC2台、マウス2つ、スタンドマイクを事務局で用意すること。通訳者は2名であったので、PC2台、マウス4つ、スタンドマイク2台が必要となった。加えて、不測の事態に備え、予備のPCも用意することになった。
2)都合PC4台に接続する、有線インターネット回線も事務局で用意すること。
3)それぞれの通訳者が集中して通訳を行えるよう、パーテーションで仕切られた、あるいは十分な広さの、静かな部屋を用意すること。

 また、事務局側の作業には、動画出入力を行うPC2台及び、不測の事態に備え予備のPC2台が用意されることになった。


その2へ続く



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■質疑応答

※報告掲載次第、9月19日まで、本報告に対する質疑応答をここで行ないます。質問・意見ある人はtae01303@nifty.ne.jp(立岩)までメールしてください→報告者に知らせます→報告者は応答してください。宛先は同じくtae01303@nifty.ne.jpとします。いただいたものをここに貼りつけていきます。
※質疑は基本障害学会の会員によるものとします。学会入会手続き中の人は可能です。→http://jsds-org.sakura.ne.jp/category/入会方法 名前は特段の事情ない限り知らせていただきます(記載します)。所属等をここに記す人はメールに記載してください。



*頁作成:岩ア 弘泰
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