(1),不良な子孫の出生防止を目的とした旧優生保護法は,1948年から1996年までの約50年間存続しました。この法律のもと,強制不妊手術を受けた被害者が国を相手に損害賠償を求めて起こした裁判で,先月,仙台地裁は,旧優生保護法は人間が生まれながらに持っている性と生殖に関する権利を奪ったとして,憲法第13条の幸福追求権に違反すると明確に判断しました。こうした史実を後になって知った私は,基本的人権の尊重をうたった日本国憲法下で,そして民主国家と言われるこの国で,いわばナチスの延長線のような政策が50年にもわたって脈々と続いてきたことに大きな驚きと恐ろしさ,そして怒りを禁じ得ませんでした。今後,司法が,原告が求める損害賠償を認め,国の責任を明らかにすることを強く求めたいと思います。
ア,中原市長は,障がいのある人もない人も共に生きるまちづくり条例を掲げる本市の首長として,長年にわたり,こうした非人道的な行為がなされてきたことをどのように受けとめているか,お聞かせください。
次にイ,旧優生保護法一時金支給法に基づく本市の責任について。
本年4月,旧優生保護法下での被害者に対する反省とおわび,一時金支給を盛り込んだ法律が制定されました。本来であれば,この人権侵害きわまりない法律を全会一致で成立させた国会と,それに基づき優生政策を推進してきた政府の責任が明確に示されなければならないはずです。ところが,法案作成者たちは,都道府県や市町村など多くの関係者がかかわったとして,責任の主体を「我々」という非常に曖昧なものにしました。私は,この理屈にはとても納得できませんが,この法の趣旨からすれば,本市にもその責任があることになりますし,また,責任の主体は別にしても,優生政策の推進に協力してきたことは事実です。市にはその自覚がありますか。そして,その責任があるとすれば当然,被害者となった新潟市民に反省とおわびの言葉を述べなければならないのではないでしょうか。お考えをお聞かせください。
次にウ,旧優生保護法下における市の取り組みの調査,検証の実施,及び優生思想の克服に向けた今後の取り組みの決意について。
本市においても,優生手術が行われた記録が発見されました。一自治体としても,今後二度とこのような人権侵害が引き起こされないよう,旧法律下において市が行ってきた取り組みについて調査,検証する必要があると思います。と同時に,こうした非人道的な行為を生み出す根源となった優生思想の克服に向け,障がいのある人もない人も共に生きるまちづくり条例の理念に沿って,さまざまな取り組みを粘り強く行っていかなければならないと考えますが,市長の決意をお聞かせください。
旧優生保護法についてお答えします。
初めに,強制不妊手術をどのように受けとめているかです。
本市でも,病気や障がいなどを理由に,本人の同意なく不妊手術が行われていたことは大変重く受けとめています。
次に,旧優生保護法一時金支給法に基づく本市の責任についてです。
本市でも,保健所設置市として事務を行い,不妊手術に関する書類や記録が存在しています。法律に基づき行われていたとはいえ,多大な苦痛を受けられてきた方々に対して,市長として心からおわびを申し上げます。
次に,今後の調査,検証の実施,取り組みについてです。
これまでの本市における調査では,手術が実施された記載のある資料のほか,不妊手術の申請などに関する資料が見つかっていますが,そのほかの書類は既に廃棄されていることから,これ以上の調査,検証は大変困難であると考えています。今後,このようなことが二度と起きないように,本市の障がいのある人もない人も共に生きるまちづくり条例の目的である,障がいのある人の人格及び人権が尊重され,社会的障壁のない,ともに生きる社会の実現を目指し,市政に取り組んでいきます。