生存学・オンライン企画 (2020.7.5) 外出や移動を『権利』にしていくために                                 松波めぐみ    【ビフォーコロナ】 1. バス乗車拒否事件  @概要     2019.7.3 JR駅前で龍谷大行きのワンステップバスが、車いすユーザーの 乗車を拒否。運転手「わし、スロープの出し方、知らんねん」 ⇒45分後のバスに乗車することを強いられた。  Aその後のアクション  ・バス会社に問い合わせ→聞き取り→事実関係を認め、謝罪  滋賀の障害者団体の協力を得て、バス会社と話し合いの場をもつ。 ・SNSがバズり、メディアの取材を受ける。⇒Yahoo!ニュースでコメント欄炎上  (車いすユーザーに対するバッシング、「迷惑」「介護タクシー使え」)  B公的な決着 ・国土交通省近畿運輸局が9月にバス会社に対し「行政処分」。県警も捜査。   Cさまざまな人の反応  在学生・卒業生(車いすユーザー)も乗車拒否にあっていたとのこと。        ⇒問題化する難しさ。活動家(?)でもしんどい 多くの車いすユーザーが運転手や乗客の反応に苦慮し、バス利用を控えている。 2.「移動の権利」の障壁は?  ・前提としての「移動の権利」(交通アクセシビリティ)      自由に(障害のない者と平等に)交通機関を使って移動することは権利。      …これが欠けると、学ぶ権利、働く権利…も阻害される。       ・移動する権利を阻んでいるものは?     ⇒ 物理的障壁や、事業者側の研修不足はもちろん、      「乗車拒否を容認する慣行」があったのではないか?     ⇒その「慣行」を支えている市民意識      …障害者も同じように交通機関を使う「権利」があると思えない。       かつての物理的障壁・隔離 ;車いすユーザーが身近でない。       乗降の間、「待つ」ことを当たり前と思えない? 【アフターコロナ、ウィズコロナを考える】 3.コロナ禍、外出自粛で何が起こったか?    ・「ステイホーム」要請。不要不急の外出は控えるように求められる。    大学の授業のオンライン化、「リモートワーク」の推進 ・交通機関を使ってよいのは、エッセンシャルワーカーの通勤ぐらい?    (それも極力使わないほうがよいとされる…たとえば介助者) ・リモート、オンラインが推進されたことにより、 障害学生は、「移動」しなくても、「学ぶ権利」が享受できる。    ・一方で、ふだん「移動の権利」など意識することもないマジョリティも、「移動」や「外出」を制限される苦しさを味わったのではないか。  (行きたい場所に行けない、お店で休憩できない、人に会えない) 4.アフターコロナの社会で危惧されること ・コロナ禍による「生活様式の変更」:多くの教育機関や職場が「リモート」を体験    ⇒やってみればできるもんだ、集まらなくてもいいじゃないかという発見    ⇒今後も一定の「オンライン授業」「リモートワーク」が維持される可能性     (仕事内容の柔軟な見直し、不必要な会議が減る等) 通学・通勤に負荷がかかる人、基礎疾患のある人等にとってメリット        ・しかし一方で、「リモートでできるなら、移動しなくてもいいのではないか」   という圧力がかかる可能性もあるのではないか?   例)障害学生に、「キャンパスに来なくても、オンラインの方がいいでしょ」        ・学ぶ場を選択できるのであれば、「多様な人に学問の場を開く」可能性。 しかし、障害を理由に「リモート、オンライン」を強要されてはならない。    ・「移動の権利」はやはり基本的な人権であることの確認を。