私たちは障害者の地域での生活の保障のために活動している全国の自立生活センターを中心として、国立病院機構・筋ジス病棟からの地域移行を進めることを目的とし、障害当事者、研究者、ジャーナリスト、医療関係者、法曹関係者などがあつまったプロジェクトです。筋ジス病棟は、筋ジストロフィー等の神経筋疾患系の障害をもつ人たちが数十年もの長期間入院することを想定した施設です。障害者運動の取り組みとともに、いま国内外の障害者の施策は、どんな重度の障害のある人も、施設や病院に隔離されるのではなく、地域で暮らせる権利を保障する方向で動いています。私たちは、筋ジス病棟から、人工呼吸器を使用していたり、喀痰吸引等の医療的ケアを必要としたりする、重度の障害者たちの地域移行を進めようとしています。
私たちは筋ジス病棟における日々の支援活動の中でも様々な課題を経験してきました。そこで実態把握のために、全国の筋ジス病棟に入院する方たちに、対面とオンラインでのアンケートを実施して、実態調査をしました。これら実態と課題の詳細につきましては現在とりまとめておりまして、改善等を国や病院機構にたいして改善の要望をする予定です。
それとは別に、今回緊急で要望する内容は病棟におけるインターネット環境の向上です。実態調査の結果から、多くの病棟では、各ベッドにインターネット回線、LANケーブル、パソコンモニター、ウエブカメラなどを設置されている場合もあれば、交流室等にある共有パソコンを使用している様子も分かります。しかし同時に、インターネット環境はあっても、病棟によっては入所者がパソコン等を利用することに非協力的な場合も分かってきました。車いすに移乗して共有パソコンの部屋まで連れていく、ベッド上でパソコン、カメラ、マウス、周辺機器のセッティングをするなどの介助が十分に受けられていません。神経筋疾患の障害をかかえる人はミリ単位での体位調整が必要ですが、忙しく立ち回る看護師に伝えることは非常に困難です。結果、外部との交流を制限され、365日24時間、毎日をベッド上で過ごし続ける人たちが現にいるのです。人としての当たり前の権利が保障されていません。
昨今新型コロナウイルス対策のため、ほとんどの筋ジス病棟では面会の制限措置が実施されました。家族や支援者の立ち入りさえ許可されなくなりました。この状況下ではインターネットを利用したオンラインのやりとりしか手段はありません。病棟の外の世界ではインターネットを利用した遠隔コミュニケーションが進められています。病棟の中でも同じような機会の保障がされるべきです。自粛するには代替手段を保障していただきたいです。
そもそも新型コロナウイルス禍がなくても、これらは入所者にとって数少ない外部と連絡をとる手段でした。人は誰しも外の世界の誰かとつながって、動揺し、変化し、成長し、葛藤し、生きていくことができるのではないでしょうか。そのような機会を奪うことなく、支援してください。遠隔コミュニケーション手段のアクセス権利は、筋ジス病棟においては他者とつながる権利に等しいです。筋ジス病棟で暮らし希望する誰もが、遠隔コミュニケーションの手段に自由にアクセスできるよう改善を要望します。