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「一時金支給法成立から1年にあたり、国に対し同法の改正等を求める弁護団声明」

全国優生保護法被害弁護団 2020/04/24


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last update: 20200429


■本文

「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」(以下「一時金支給法」という)が成立し、施行されてから本日で1年である。

同法の対象となる被害者は約2万5000人であるが、支給認定は529件にとどまっている(2020年3月末日現在)。また、認定の前提となる相談件数も3840件、請求受付件数も890件にとどまっている(同年4月5日現在)。

弁護団は、一時金支給法の成立前から、被害申告が難しい現状等を指摘し、被害者のプライバシーに配慮した通知等の検討を求めていた。

すなわち、国が、麻酔薬の施用、欺罔等の手段を用いて不妊手術をしてよいと指導していた(厚生省発衛第150号)ことから、被害者の多くは、不妊手術をされたことさえも認識しておらず、自身が一時金の支給対象であることの認識がない。

しかし、国は、被害者への通知を自治体に委ね、一部自治体による通知はなされているものの、大半の被害者は、自分の被害を知る機会さえ得られていない。

また、旧優生保護法が優生手術の対象となるのは「不良な子孫」であるとしていたことから、優生手術被害者及びその家族は、国から「不良な子孫」という認定がされたことになっている。しかし、一時金支給法には「国の謝罪」が明記されず、また、同法21条で行うとされている旧優生保護法に基づく優生手術等に関する調査も実施されていない。このような現状で、国からの「不良な子孫」という「スティグマ(烙印)」は、被害者及びその家族が旧優生保護法による被害を申し出ることができない大きな原因となっている。

以上のとおり、被害を申し出ることができない理由が国にあるにも関わらず、申請がないという理由で、被害回復に不十分な一時金でさえも被害者に届かない現状は早急に改善すべきである。

一時金支給法は、延長がなされるべきではあるが、現状5年間の請求期限があり、また、何度も指摘している通り、被害者の多くは高齢である。

少しでも多くの被害者に一時金が届くよう、国は、施行から1年間の申請状況、認定状況等を調査したうえで、法律の改正及び運用の改善を検討すべきである。

また、仙台地方裁判所は、昨年5月28日、被害者らへの賠償は認めなかったものの、旧優生保護法について憲法13条に違反すると判示した。国は違憲判決に向き合い、一時金支給法21条の「調査」を行うとともに、国から独立した十分な検証を行うべきである。また、違憲の法律に基づく被害への回復としては極めて不十分な一時金の金額についても再度検討すべきである。

現在、新型コロナウィルスの影響により、様々なやむを得ない人権制限措置がとられている。しかし、過去の人権侵害行為に誠実に向き合えない国による人権制限措置は、国民の不安と懸念を増大させるものである。今だからこそ、国は、旧優生保護法問題について誠実に向き合うべきである。

当弁護団は、旧優生保護法による被害は、一時金支給法が成立したことによって解決していないことを再度確認し、国に対し一時金支給法の改正等を求める。


2020年4月24日
全国優生保護法被害弁護団
共同代表 新  里  宏  二
同    西  村  武  彦


■原文

全国優生保護法被害弁護団、2020年4月24日、「一時金支給法成立から1年にあたり、国に対し同法の改正等を求める弁護団声明」 [PDF]




*作成:岩ア 弘泰
UP: 20200429 REV:
感染症:Infectious Disease  ◇全文掲載  ◇全文掲載・2020  ◇全国優生保護法被害弁護団 
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