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「新型コロナウィルス感染症対策本部ニュース No.2」

日本ALS協会新型コロナウィルス感染症対策本部、2020年4月17日付。

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last update: 20200422


■本文

厚生労働省に皆さんから寄せられた要望、ご意見をもとに緊急要望書をまとめ4月15日に厚生労働省に提出しました。併せて日頃お世話になっている議員、学会などにも、ご協力ご支援をお願いしました。

<緊急要望書>本ニュースの最後に張り付け紹介しています。また、協会ホームページ http://alsjapan.org/2020/04/16/post-2918/にも公開しております。



新型コロナウイルス感染と人工呼吸器の使用に関して山本真先生(大分協和病院 院長、たん自動吸引装置開発主任者)に聞く

今回、皆さんから寄せられている質問 の中で、人工呼吸器に関しての質問がありましたので、大分協和病院院長の山本真先生にお答えしてもらいました。

先生は呼吸器療法を専門としておられ、これまで当協会の機関誌に呼吸器ケアについて紹介して頂いており、夜の頻回な痰吸引に疲れている 家族を見られて、痰自動吸引装置を共同開発されました。現在、装置は1000台以上が使用され、好評と聞いています。

Q1.医療崩壊における人工呼吸器の不足対応準備が必要との声がありますが、その人工呼吸器とは現在、在宅で主治医からレンタル提供されている気管切開者が使用している人工呼吸器も含まれるのでしょうか?
 ICUでは在宅で使用されている人工呼吸器は使われないとの声も聞かれます。

A1.現在不足している人工呼吸器は、肺がARDS(*1)という深刻な状態に対応できる人工呼吸器ということになりますので、現段階でALS患者が使われている在宅用の人工呼吸器は該当しないと思います。
 しかし、今後患者が激増して対応困難となってきたら、在宅用でも比較的高機能の機種は使用される可能性は高いと思います。
 例えばアストラルとかモナールという最新の機種です。

Q2.感染者が使用していたその後の呼吸器の扱いはどうなるのか?

A2.この問題について、付き合いのある在宅人工呼吸器ディーラー5社に確認しました。
 全ての会社で、外部のクリーニングはしているが、内部の消毒はしていないし、できないということでした。
 感染症患者に使われた場合は、最低10〜1ヶ月(社によって違いがあります)使用せず保管してウイルスの失活を計るようでした。

Q3.今後の在宅人工呼吸器(気切)及び鼻マスクの不足の可能性は考えられるか

A3.感染の拡大状況次第としか言えません。

Q4.人工呼吸器などと併用して行われる酸素療法機材が不足する可能性は?

A4.マスクのような全国民対象の予防用途の物資ではないサプライ製品ですから、不足は考えにくいと思います。

Q5.ALS等在宅人工呼吸器療法している患者、家族、医療者、介護者が今回の新型コロナウイルス対策で特に注意を喚起したい事項があれば、

A5.自らが感染を受けるような機会を減らすことしかないでしょう。介護者も同様な注意が必要でしょう。

Q6.当協会で「今後の必要な人工呼吸器の整備」と「必要な介護体制の維持に必要な措置」などを中心に、近々、厚労省に要望書を出すことを検討中です。【4月15日提出済】これまでのご経験から当事者団体として要望したらよいことがあれば、アドバイスをお願いします。

A6.我々のかかわる分野からいえば、ヘルパーや訪看体制の減弱が予想されるため、児童吸引装置の早期承認と、購入のための補助金給付はいかがでしょうか。


大分協和病院 山本 真

*1.ARDSについては日本呼吸器学会のHPに説明があるのでご参照下さい。(対策本部付記) https://www.jrs.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=36



「新型コロナウイルス感染症に関するALS等神経難病患者対策の緊急要望」



令和2年4月15日


厚生労働大臣
 加藤 勝信 様
厚生労働副大臣
  橋本 岳 様
  稲津 久 様


一般社団法人 日本ALS協会
       会長 嶋守 恵之
〒102-0073 千代田区九段北 1-1515 瑞島ビル1F
電話 03-3234-9155 FAX 03-3234-9156


新型コロナウイルス感染症に関するALS等神経難病患者対策の緊急要望

平素より、難病対策にご尽力いただき心より感謝申し上げます。

新型コロナウィルス感染防止のため7都道府県に「緊急事態宣言」が出され、更に全国的に急速な感染拡大が進行しており、医療体制の崩壊が危惧されております。

このような状況下において進行性神経難病であるALS(筋萎縮性側索硬化症)等の人工呼吸器を装着した重症の患者、家族などから以下の要望が寄せられております。

つきましては、迅速な対応措置を講ずるよう、お願い致します。


1.在宅での人工呼吸器使用患者等がたん吸引時に使用するエタノール液やアルコール綿等の衛生材料の供給不足が続いており、必要な者に提供できるようにして下さい。

通常は医療保険の在宅療養指導管理料に基づき 主治医の指示により必要な衛生材料が支給されております。また3月13日には貴省関係課より「医療的ケアを必要とする児童等を支援する事業所等における手指消毒用エタノールの優先供給について」(医政局他事務連絡)が自治体に発出されています。

しかしながら全体的な品不足から 、自費購入による入手も難しくなっており、 患者、家族は今後の医療衛生管理に強い不安を抱いています。早急に在宅医療に必要な衛生材料の生産確保と必要な患者への支給をお願いします。


2.在宅療養中の重症患者やその家族が感染した場合の入院先等を確保して下さい。

現在、患者、家族や出入りの医療、介護関係者は必要な感染防止を行っていますが、万が一、患者や関係者に感染が生じ、在宅療養が困難になった場合には緊急入院先等を確保する必要があります。そのために現在の神経難病拠点病院(領域的拠点病院)、協力病院、難病医療コーディネーターなどの地域支援が不可欠です。それらの支援体制が全国的に機能するよう、関係者への周知をお願いします。また、患者が感染し入院する場合意思疎通方法を工夫するように、医療機関に指導願います。

また、ALSは進行性であり気管切開による呼吸器装着や胃ろう手術などはタイムリーな医療措置が必要となります。その場合に入院措置できる病院を確保して下さい。


3.在宅等で人工呼吸療法を必要とする患者への人工呼吸器の確保を行って下さい。

医療崩壊の一つとして人工呼吸器の不足が言われています。ウイルス感染による重傷者が集中治療室(ICU)で使われる人工呼吸器は神経難病患者等が在宅で使用している機種とは異なると医療者関係者から聞いておりますが、場合によっては在宅呼吸療法に使っている人工呼吸器の品不足の事態も考えられます。そのために国産の人工呼吸器の増産を図るなど、神経難病患者の生きる権利が脅かされることのないよう迅速な措置を講じてください。

また、現在、使用中の人工呼吸器のメンテナンスや交換部品の供給が滞ることのないよう、関係機器を取り扱っている会社と十分な対策を講じて下さい。


4.緊急事態宣言の下での介護・福祉サービスの継続的利用の支援を行って下さい。

緊急事態宣言により外出自粛や事業制限が行われ、在宅の重症患者への訪問診療、訪問看護および訪問介護が制限され、患者へのケア体制が低下しないように指導して下さい。

特に地域での感染拡大により介護事業所などのヘルパー派遣サービスが少なくなり、独居者や配偶者などの介護体制で療養している患者と家族に過度の負担が生じないよう必要な措置をお願いします。地域関係機関から介護事業所への指導、協力要請をお願いします。

また、今回のウイルス感染との闘いは長期にわたるとの専門家の声が聞かれます。介護者不足が続いており、重度訪問介護者等の痰吸引等の研修(特に3号研修)においては違法性阻却措置の周知やWeb受講など弾力的な運用の配慮をお願いします。


5.指定難病の医療扶助成に必要な医療受給者証の更新の有効期限を1年延長して下さい。

更新手続きに必要な受診検査及び臨床個人調査票、医師意見書の依頼や入手等の各種手続きを行うことは、感染リスクを大きく伴います。

感染症に対する「異常事態宣言」も全国的拡大傾向が見られており、特別な措置をお願いします。


以上


■PDFファイル

日本ALS協会新型コロナウィルス感染症対策本部 2020/04/17 「ニュース No.2」 [PDF]


■関連ページ

日本ALS協会会長 嶋守 恵之 2020/04/15 「新型コロナウイルス感染症に関するALS等神経難病患者対策の緊急要望」 [PDF]




*作成:
岩ア 弘泰
UP: 20200422 REV:
感染症:Infectious Disease  ◇日本ALS協会  ◇嶋守 恵之  ◇全文掲載  ◇全文掲載・2020 
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