「マザリング[Mothering]の現在――をめぐる議論と実践の動向」
第15回:「母体・ケア・自然――時間的・空間的・生命的連関」(2020/01/17)
――で提示した要点のまとめ
◇「出産」=「死」の経験/時間/世界
◇「母なる経験」とは:「あたたかで安定感のあるものではなかった。もっとラジカルで、不安定で、生の裏側から「この生」を眺めるような、自分がこれまでいた場所が夢かなにかだったのではないかと、世界が崩れ去るような経験だった。」(p.160)――この世界とは(地続きだが)別の秩序
◇身体の予兆/変化によって現出する「〔現代の世の中では潜在的に〕隠されている」「女性性」:現代/文明が疎外しているものを明るみに出す
◇[健康・健全・正常(な身体・精神)]=[管理・統制・抑圧(する文明・社会)]に対する違和感・怒り・叫び:女性の「不安定」さ・「爆発」――に変革の可能性を見出す
◇「「母」を社会的、政治的役割から解放してあげたとき、これまで見てきたように、「母」とは非常にラジカルな概念であるのではないか。」(p.176)――意味・機能の転用・活用
◇「まだ語られていない身体性、まだ語られていない女性性、あるいは現代社会がとりこぼし、忘却することで成り立ってきたものを思い出すこと、呼び戻すこと。現代が疎外しているものは、何かを感じとること。|弱い身体を抱えて、打ちつけてくる波に身体がたえず揺られている人たち。生きにくさを感じているのなら、死のうとするのなら、声をかけ続け、呼び戻し、こちら側に、世界がもう一つあることをしらせたい。|もうそれは「母性」という言葉ではないかもしれないが、それでも私は、「母」であることは、生きていて欲しいと願うことだと信じたい、というよりも、そうでありたいと思っている。生命のあらゆる姿形を受け容れるものだと。」(pp.176-177)――人間社会/中心の生命観に対するオルタナティブ:生命の多様性・可変性・共同性 cf.「アース・デモクラシー」
◇「この「母」を経験してきた名もなき無数の女性たちの想いが、私をとおして糸をつなぎ、結びめを作り、つないでつながれていった先に、この静かな地平までたどりついた気がしている。」(p.177)――生命体系の再生産=サブシステンスの営み:エコフェミニズム(Ecofeminism)
中村佑子さんの『すばる』誌連載「私たちはここにいる――現代の母なる場所」の最終回(1月6日発売の2月号掲載)の内容を、マザリングをテーマにした私の授業の最終回(1月17日)で紹介することができました。一応なんとか、最後まで「伴走」できた……ような気がしています。
http://www.arsvi.com/d/2019cafs.htm#15
[2020年1月20日23:37