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24時間365日のつきっきりも実現する
あなたの知らない重度訪問介護の世界

ー第1回(全6回) 重度訪問介護の制度ってなんだー

大野 直之全国障害者介護保障協議会) 2020/01/15

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last update: 202000616


医学書院『訪問看護と介護』2020年1月号p72-75掲載
大野直之さん全国障害者介護保障協議会)の提供により連載(全6回)のうち第1回、第2回を掲載いたします



◆2020/01/15 大野直之 「24時間365日のつきっきりも実現する あなたの知らない重度訪問介護の世界 ー第1回 重度訪問介護の制度ってなんだー」,『訪問看護と介護』2020年1月号,医学書院
*連載第二回はこちら



長時間の見守りを含み、介助の内容が限定されない「重度訪問介護」。
本制度を有効活用すると、どのように暮らしは変わるのか。
知っているようで知らなかった、重度訪問介護の世界をのぞきます。

全国障害者介護保障協議会
大野直之



■目次

重度訪問介護の制度ってなんだ 序文
「知られていない」ために、利用されていない
重度訪問介護の知識をもつのは当事者
全国障害者介護保障協議会はサービス活用の働きかけをしています
重度訪問介護で、地域での自分らしい生活も叶えられる
「重度訪問介護」制度によくある誤解
重度訪問介護を活用する人 鹿児島県与論島の鵜木さん[離島&ALS]
キーワード解説
重度訪問介護の対象
ご相談は「全国障害者介護保障協議会」まで


■ 第1回 重度訪問介護の制度ってなんだ

2019年7月、ALS患者と重度障害者の国会議員が誕生しました。それにより、全国メディアで「重度訪問介護で24時間のサービスを受けて生活する人がいる」ことが取り上げられたのは記憶に新しいのではないでしょうか。

このニュースを聞いたとき、「『重度訪問介護』なんて、東京という特殊な地域に住む特殊な障害者の事例でしょう」と思った方はいませんか? そんなことはありません。どんな過疎地だろうと、利用することができる制度です。むしろ過疎地のほうが利用しやすい場合さえあります。


■重度訪問介護はこんなサービスです

「重度訪問介護」とは、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスのうち、長時間の利用を前提とし、介助の内容が限定されない制度です。この制度を使うと、利用者はゼロないしは少しの自己負担金で、月当たり744時間以上をヘルパー数人に交代勤務してもらえます。つまり1日24時間365日つきっきりの支援が可能になる訳です。ヘルパーで24時間のシフトを組むことができれば、家族による介護を必要とせず、1人暮らしも可能になります。

本制度の対象は、「重度の肢体不自由者又は重度の知的障害若しくは精神障害により行動上著しい困難を有する者であって、常時介護を要する障害者」です。重度の障害者のみが利用できる制度であるため、知名度は高くはありませんが、東京や大阪などの大都市部では実際には数千人単位の利用者がいますし、人口の少ない都道府県にも利用者はいます。近年では、地方の農山村地域や離島においても利用者が出てきているところです。


■「知られていない」ために、利用されていない

とはいえ、本制度はまだ十分に知られてはいません。国もこの制度の有用性を認め、推進していますが、現場レベルの市町村自治体の障害福祉課や介護保険課職員、または医師をはじめとした医療者の多くが本制度をきちんと理解していないために、利用者が数人にとどまっているという自治体も多くあります。この「きちんと知られていないために利用されていない」というのは課題であると考えています。

たとえば、ALS患者の場合、障害の進行で呼吸が苦しくなったとき、病院では「気管切開して人工呼吸器にすると、24時間の介護が必要になる」という説明を受けると思います。確かにその通りで、24時間の介護は欠かせないでしょう。しかし、このとき、「重度訪問介護というサービスがあること」をセットで教えてもらえていないことは多く、ALS患者とその家族が「家族が介護するしかない」と思い込んでいるケースも少なくありません。

そうした中、「家族で介護するのは難しい」「家族に迷惑をかけられない」といった生活上の不安を抱え、呼吸器をつけずに死ぬことを選ぶALS患者(ALS患者の約7割の方が呼吸器をつけずに死ぬことを選んでいます)。または、家族でなんとか介護しようと考え、呼吸器をつける選択をしたけれど、24時間目の離せない介護が続く中で家族が睡眠不足や介護うつになり、家庭崩壊してしまう患者・家族。そうした人々とも、私たちは少なくない数、出会ってきました。もし重度訪問介護という制度を使っていたなら、違った生活が存在しただろうと思うのです。そもそも、生活の安心を保障されなければ、生きていこう、暮らしていこうという思いは湧きません。

難病患者や重度障害者と家族の心中事件、家族による患者殺人といった報道に記憶がありませんか。決して遠い世界のことではなく、訪問看護の現場で出会うご家庭にもその予備軍はいるかもしれません。訪問看護師の方にも重度訪問介護という制度を知ってもらい、必要に応じて情報提供をしていただきたいと思っています。


■ 重度訪問介護の知識をもつのは当事者

では、重度訪問介護という制度を使おうと考えたとき、誰がその中身をわかっていて、尋ねるに足る人なのでしょうか。

いちばん専門知識を持っているのは、その制度を実際に利用している障害当事者たちです。ですから重度訪問介護が必要になったときは、当事者や、全国の当事者たちとつながりの深い全国障害者介護保障協議会や自立生活センターなどの障害者団体に問い合わせていただくと、正確な知識が身に付き、スムーズに利用まで至れると考えます。

「いやいや、支給決定を担う自治体の障害福祉課に問い合わせれば、差し当たっての情報は得られるでしょう」とお思いになった方もいるかもしれません。確かに手続き上、彼らは不可欠です。しかし残念ながら、市町村の障害福祉課の窓口に問い合わせても、「24時間の重度訪問介護を受けられるという情報を得られない(ことがとても多い)」という実態があり、障害福祉課の職員から重度訪問介護の利用を強く勧められることはほとんどありません。

そこには無理からぬ事情もあります。なぜなら全国1800市町村のうち、重度訪問介護による24時間ヘルパー派遣の事例があるのは1割前後。自地域での前例がないことは珍しくなく、他地域での前例や情報を得る機会そのものが少ない。また、仮に制度を知る職員がいたとして、行政は平均2年で人事異動があるので、その(マイナーな)知識がきちんと引き継がれていることは稀なのです。

さらにいうと、運用面で勘違いされているケースも非常に多いので、注意が必要です。たとえば、参考として提示されている市町村ごとの支給決定基準(最重度の障害支援区分6で重度訪問介護利用なら月200〜300時間程度など)といういわば「目安」があるのですが、それを制度の「上限」と勘違いして説明している行政職員とは本当によく出会います。実際は“支給決定基準で必要な介護がまかなえないような事例の場合、「非定形」という形で、上限なしに必要なヘルパー派遣の時間数を支給決定するように”と厚生労働省が通知していて、本来なら融通のきく制度ですが、窓口で出会う人がきちんと理解していないために結果的に利用に至らない、ということもあるのです。

重度訪問介護の周辺にはそんな状況があるので、各現場で、申請する側の人が、制度をよく理解していない自治体に対して説明し、支給の可否やトータルの支給量を増やすための働きかけをしなければならない現象が起こっています。


■ 全国障害者介護保障協議会はサービス活用の働きかけをしています

全国障害者介護保障協議会(以下、当会)は、長時間の介助を必要とする全身性障害者を中心に構成された団体です。全国の市町村に重度訪問介護をはじめとした介護の仕組みをつくることを目的に、市町村と交渉を行なっている障害者・家族に対するノウハウ提供や、フリーダイヤルおよび月刊誌を通した情報提供を行なっています。

これまで、北海道から沖縄県のほぼすべての都道府県で、24時間重度訪問介護利用にあたっての申請や市町村との話し合い・交渉のサポート、ヘルパーの確保などの利用のサポートを、直接的・間接的に行なってきました。近年では長崎県や鹿児島県の離島、徳島県・長野県・富山県・石川県で、各県内初めての事例となる24時間介護の介護体制の立ち上げサポートも行なっています。


□ 自治体と交渉しています

当会がサポートに関わるポイントはさまざまです。たとえば、「重度訪問介護の支給を受けるまで」。私たちの関わったケースの多くも、市町村からは当初「介護保険だけで我慢してください。重度訪問介護は使えません」「支給決定基準の1日8時間がこの市の上限です」などと言われて困っていた方々でした。私たちが交渉・話し合いに関わったことで、半年〜1年の時間をかけた末に月700〜900時間台の重度訪問介護の支給決定に至ったケースも多々あります。


□ 「人材がいない」にも対応します

また、「介助するヘルパーを見つける」という点でも、私たちはサポートに入ります。地方では、支給決定が出ても、重度訪問介護のヘルパーを24時間派遣する事業所がほとんどない、という課題があります。そのため「事業所がないから、重度訪問介護の利用をあきらめる」という判断がされてしまいがちです。

しかし人材確保の点でもハウツーがあり、たとえば、先に支給決定を取り付けてしまい、その後で無資格未経験者を常勤のヘルパーとして求人するという方法が取れます。この方法で、これまでの経験上、全国どこでも人材確保はできています。ちなみに、だいたい200時間の支給決定を受ければ、1人の常勤ヘルパーを雇える分にはなります(24時間体制が必要であれば、4〜5人の常勤を雇い、シフトで毎日を回す仕組みを整えます)。


□ 養成研修等もしています

このほか、当会では、採用したヘルパーが自己負担なく、東京や関東近郊で当会関係団体の重度訪問介護ヘルパーの養成研修を受けられる体制を作っています。さらに、利用者自身で人材を確保してヘルパーとして育成し、その育成費用を事業所が助成する「自薦ヘルパー方式」を行う介護事業所の全国ネットワークも作っています (次回に詳細あり)。このネットワークでは、過疎地で最重度のALS等の患者や重度障害者などに24時間対応する事業所を作りたい方へのサポートも行なっています。


■ 重度訪問介護で、地域での自分らしい生活も叶えられる

本連載では「重度訪問介護という制度がある」と知っていただくことを狙っています。そして、私たちが活動を通して出会った人たちの例を交えながら、いかにサポート体制が整ったのかという経過と、重度訪問介護の活用によりいかに自分らしい暮らしを実現しているのかを知っていただこうと考えています。

重度訪問介護の利用に際しては、ぜひ全国障害者介護保障協議会までお声がけください。手続き上の助言、交渉に際してのノウハウがありますし、地域の実情や個別の事情も踏まえて相談に乗ることができます。


■ 「重度訪問介護」制度によくある誤解

□「都市部でしか使えないですよね?」

⇒いいえ、どのような地域・自治体でも使えるものです(過疎地のほうが整えやすい場合すらあります)。


□ 「近隣に24時間派遣するヘルパー事業所がないので、利用は難しいですよね?」

⇒いいえ、既存の事業所がなくても大丈夫です。人材に関しては、これまでの経験上、工夫をすることでどんな地域においても確保できています


□ 「同制度の情報は、自治体窓口に行けば案内してもらえますよね?」

⇒いいえ、市町村自治体の障害福祉課、介護保険職課職員も十分に理解しているとは言い難い状況があります


□ 「『支給決定基準の1日8時間が上限です』などと自治体に言われました。私の住む自治体ではこれ以上の支給は望めないですよね?」

⇒いいえ、融通の効く制度で、上限はありません。自治体が運用面で勘違いしていると思われるケースのため、交渉が必要です


■ 重度訪問介護を活用する人

□鹿児島県与論島の鵜木さん[離島&ALS]

気管切開し人工呼吸器を利用。家族同居。365日24時間の重度訪問介護を利用。写真左端が重度訪問介護ヘルパー。近所に住む孫も家に遊びに来てくれる。鹿児島の離島では与論島を含め2つの島で24時間の支給決定が出ている。



■キーワード解説

□*1 重度訪問介護

常時介護が必要な重度の身体・知的・精神障害のある人がサービスの利用対象。長時間を前提とし、「見守り」(利用者から目を離さず控え、利用者の指示で始動する介助)を含め、排せつや入浴、食事などのサービス利用が可能(制度的には下の枠内の文言で説明される)。2006年施行の障害者自立支援法では重度の肢体不自由者のみが対象だったが、2014年施行の障害者総合支援法により知的障害者・精神障害者も加わり、対象が広がった。


■重度訪問介護の対象

◆重度の肢体不自由者又は重度の知的障害若しくは精神障害により行動上著しい困難を有する者であって、常時介護を要する障害者

→障害支援区分4以上に該当し、次の(1)又は(2)のいずれかに該当する者
(1)二肢以上に麻痺等がある者であって、障害支援区分の認定調査項目のうち「歩行」、「移乗」、「排尿」、「排便」のいずれもが「支援が不要」以外に認定されている者
(2)障害支援区分の認定調査項目のうち行動関連項目等(12項目)の合計点数が10点以上である者




この文章は、医学書院と大野直之さんの提供により掲載されています。
連載の続き(第3回以降)は 『訪問看護と介護』をご覧ください。




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*作成:中井 良平
UP: 20200608 REV: 20200609, 12, 16,
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