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筋ジス病棟の実態に関するアンケート中間まとめ報告


油田 優衣 2019/11/24
筋ジス病棟の未来を考えるプロジェクト始動,第8回DPI障害者政策討論集会分科会発表原稿 於:戸山サンライズ

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こくりょう(旧国立療養所)を&から動かす

〈調査の概要〉
目的:「筋ジス病棟の未来を考えるプロジェクト」を進めるにあたって、全国の病棟の実態調査をする
対象:筋ジス病棟に入院中の人と退院した人
方法:(ベッドサイドまで行っての)対面での聞き取り調査、およびインターネット回答によるオンライン調査
調査期間:2019年2月?現在まで継続中
本報告:2019年2月までにデータ処理できた36件の事例から(聞き取りが18件、オンラインが18件)
ジェンダー比:男性29人、女性7名
疾患の種類:筋ジスの方が58.4%。その後に、ALS(筋萎縮性側索硬化症)やSMA(脊髄性筋萎縮症)、ミオパチーが続く。

〈実態調査から見えてきたこと〉
 筋ジス病棟と一口に言っても、病院によって制限や待遇には大きな違いがありますが、今回は、寄せられた回答のうち、特に「ひどい」実例をいくつか紹介したいと思います。

(スライドより)――――――――――

【制限が多く、抑圧的な病棟の実態】
 ナースコール:長時間待たされる、押しても来ない、看護師の顔色を窺ってコールするのをためらう、ボタンを手の届かない所に置かれる
 トイレ:長時間待たされる、後片付けをすぐにしてもらえない
 お風呂:一回の入浴の制限時間がある、洗い方への不満、入浴そのものの制限
 ネット利用:時間制限がある、セッティングに時間がかかると看護師の都合で後回しに
 移乗・外出:ドクターストップやマンパワー不足による制限、家族同伴でなければ外出禁止
 虐待:言葉の暴力、身体的な暴力・乱暴な介助、長時間の放置・無視
 外出・地域移行:(→次のスライドで詳説)

 このように、制限が多く抑圧的な病棟の実態というものが、アンケートから見えてくるのですが、このような問題は、何も「病院が悪い!」という話(だけ)ではありません。この問題の背後には、看護師の人員削減(←2005年頃自立支援法に制度が変わったことの影響)による人手不足や、それによる業務の効率化・安全管理強化が図られたこと、といった構造的な問題があると言えます。

【アンケート集計をしていて感じること】
・感覚のマヒ:例えば、アンケートの回答の中には次のようなものがあります――「トイレに行きたいと思ってナースコールをしたら、10分で看護師さんが来てくれる。10分で来てくれるのだから、別に私は待たされてはいない」。私たちの感覚からすると、トイレに行きたいと思ってから10分も待たないといけないというのは、「待たされている」状況だと感じるし、ここにいる多くの人もそのように認識するのではないでしょうか。しかし、10分待たされることが常態化してしまっている患者さんにとっては、10分「待たされる」状況は、「別に待たされてはいない」状況なのです。
このように、制限されることが"当たり前"になっていて、私たちの感覚からすると「制限」だと感じられることも、患者さんにとってはそうてはなく、もはや「制限」されていると認識できない、ということもアンケートから垣間見ることができます。
・特に障害の程度が重い程、ドクターストップを過度にかけられたり、必要な介助が受けられず、規制が強くなる傾向

【退院と地域生活の希望】(深田耕一郎さんが詳説)

〈外出・地域移行を阻むもの〉
 ここまで深田さんに、退院と地域移行の希望に関するデータについて、詳しく説明していただきました。ここからは、本人が「退院したい、地域移行したい」と言っているのにもかかわらず、それを拒む状況の背景にどのような問題があるかについてお話ししていきます。
筋ジス病棟から地域移行する際の困難が大きいことには、大きく分けて「制度上の問題」と「病院側の問題」、ヘルパー不足などの「地域の資源不足」(これは筋ジス病棟からの地域移行に限った話ではありませんが……)に分けて考えることができる、そしてそれらは相互に関連しあっているのではないかと思われます。
 「制度上の問題」として、まず一つ目に、重度訪問介護が入院患者さんにとっては使いにくいという問題があります。
重度訪問介護は、入院している患者さんも使えるには使えるのですが、それには条件があって、あくまで、病院からどこかへ外出する際にしか使えません(※重度訪問介護は入院中、「コミュニケーション支援」という名目でも使えるが、筋ジス病棟に長期入院されている方にとっては、この名目での使用はそもそもほぼ不可能)。しかし、先も述べたように、病院側による外出制限が行われるケースが現実には沢山あります。外出が制限されると、その時点で重度訪問介護というサービスが使えません。そのことによって、地域移行に向けた様々な準備ができないという問題に繋がります。なので、外出まで制限されてしまうと、制度にアクセスできないし、それによって地域移行への道も狭くなってしまいます。
 また、「制度上の問題」の二つ目として、3号研修が病院・施設では実施できない(とされている)という問題があります。この点について次のスライドで詳しくお話します。
 3号研修について、現在では、「特定の者」(施設や病院などの不特定の関係ではなく、重度訪問介護のように特定の関係の中で喀痰吸引を行う者)の喀痰吸引等の研修(3号研修)は、在宅の制度であって、病院で介助者は研修を受けられない、と多くの地方自治体が誤解している。
 しかし、もともとは、厚労省の中でも、長期療養してる人に対してできるようにという制度設計でした。喀痰吸引等の法制化当初は、「特定の者」の研修(3号研修)は、「特定の関係」という実態があれば、施設でもできるという話だったのです。
 それが、この議論が忘れられ、解釈が変わって、施設での実施がダメになってきた……ということなのですが、厚生労働省の通知は、当時の痕跡をとどめて残っており、入院中の人が喀痰吸引等の研修を介助者にすることを「許可」すると解してよい、と言っています。そして、当初の制度設計の趣旨やこの厚生労働省の通知のとおり運用している自治体もあって、それが資料に載せている島根県の例になります。
 つまり、厚労省の解釈では、本当はできる!ということなのです。これを病院や地方自治体に広めて行かねばなりません。
 さて、スライド戻りまして、次に「病院側の問題」についてお話します。
 病院側の問題としては、本人が外出や地域移行を希望しても、病院側がそれを認めてくれないという問題があります。そこには、「この患者にはできない」という無理解や無知があったり、また、安全管理やリスク回避を理由という名のもとでの制限、本人の自由の侵害という問題があるわけです。
 が、病院側のこのような問題は、制度の問題、制度が整っていないことにも起因しているとも考えられます。
 筋ジス病棟から地域移行するという制度的なルートが整ってないために、病院側も、地域移行に「慣れていない」ゆえに、ある患者さんが病院を出て地域で生活するというのを想像できず、無理解や無知による抑圧が起こってしまうと思われます。
 そしてこれらの相互に絡み合った「制度上の問題」と「病院側の問題」がどのように当事者に降りかかってくるか、ということについてですが、
 まず、制度にアクセスしにくい遮断された状況にある中で、「障害があっても地域生活が可能だ」という情報が全く届いていません。
 また仮に、地域の資源に関する情報が入院されている方に届いたとしても、外出や地域での生活が、患者さんにとってはもはや現実的ではないと感じられるようになってしまっていて、「私なんかに地域での生活は無理…」といった反応が返ってくることも多々あります。
 以上がアンケートの中間報告まとめになります。筋ジス病棟の実態調査は、今後も引き続き行っていきます。現在、アンケートを修正中でして、完成版・修正版ができ次第、アンケート実施の協力のお願いをさせていただくことになるかと思いますので、ぜひとも力を貸していただけましたら幸いです。
では以上で「筋ジス病棟の実態に関するアンケート中間まとめ報告」の発表を終わります。


UP:20191211 REV:
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