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女性入院患者の困難について

地域移行のジェンダー格差と入院生活中の性的被害

筋ジス病棟の未来を考えるプロジェクト 2019/11/24
筋ジス病棟の未来を考えるプロジェクト始動,第8回DPI障害者政策討論集会分科会 於:戸山サンライズ

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こくりょう(旧国立療養所)を&から動かす

 私からは、女性入院患者の困難についてお話ししたいと思います。具体的に言うと、生き方を選択するということのジェンダー格差について、そして、性的被害についてです。アンケート結果から統計としてちゃんと読み取れるところまでは行っていないのですが、女性入院患者の記述や女性患者から受けた相談から言えること、懸念していることをお伝えします。
 筋ジス病棟の入院患者の多くは男性です。先ほどの中間まとめによるアンケート回答者も、8割が男性でした。実際に繋がる地域移行者も圧倒的に男性中心で、私が京都で女性の入院患者と繋がろうと思ってもなかなか繋がれていません。しかしこの男女の差は単なる入院患者数の差だけではなく、男性とは違う女性患者だからこその困難のせいでもあるように思います。
女性の方が、医療者からも親兄弟や親類からも、力のない存在とされてしまい、保護してあげる対象とみられがちです。施設や病院内でおとなしく過ごすべきという圧力を受けやすいです。このようなジェンダー格差は、障害の有無問わず世間一般で今も見聞きすることですが、女性患者は、女性、重度障害者、医療的ケアが必須 という三つのもと、より大きな複合差別、つまりより分け隔たれた状況に置かれているように思います。こんな状況では、自分の人生を切り開く意欲どころか、自分の希望する未来をちょっと想像してみるという発想さえ奪われてしまっていても不思議ではありません。私が京都で、女性の入院患者と何か繋りにくさを感じ、女性の地域移行者を見聞きしないのも、多分このような状況で女性がより声を出しにくいからではないかと思います。
 次に性的被害についてですが、女性患者が何らかの性的な被害を受けていたとしても、そんな抑圧下では誰かに相談することがとても難しいです。入浴や排泄介助を男性職員にされるのが本当は嫌という意見が、何人かの女性入院患者からありました。DPI女性ネットの2012年の調査報告書にもまったく同じ語りがありましたが、病院によっては今でも当たり前のように入浴排泄で異性介助が行われています。そしてこの背後には、同じように不快・苦痛に感じているのに、やめてと言えないでいる女性患者が複数存在しているのを感じます。
 これがさらにひどい性的虐待だったらどうでしょうか?内閣府の2014年の男女間における性暴力に関する調査によると、被害者の約7割の女性が誰にも相談しなかったというデータがあります。病院という巨大な権力の支配下で長期間生活してきた女性患者だと、なおさら誰にも言えない人が多いだろうことは、みなさんも十分すぎるほど想像できると思います。抑圧だけでなく羞恥心から、恐怖から、自己嫌悪から、絶望から、誰にも言えず、問題化できず、人知れず悲痛な状態にとどめ置かれ、力を奪われ続けると考えられます。この危機感をどうか皆さんも共有してほしいです。
 また、私自身も言えない苦しみの中にいます。性的被害が過去にあったといくつか耳にしても、公にはしないでと当事者たちが言います。告発したら病院内で周囲から何を言われるか分からない、針のむしろになるのではないか?逃げ場がない、今すぐ退院して地域で生きられるわけじゃないのに…と。知っても今すぐにはどうにもできないこの現状がとても辛いです。
 この現状を変えるために、誰にも言えずに苦しんでおられるかもしれない人と繋がるために、どうかみなさんの力を貸してください。ただ待っていてもその声はキャッチできません。(彼らの可能性を含め)彼女らを苦痛の日々の中に放置し続け、問題は闇に葬り去られるだけです。そうさせないために、みなさんもこちらから彼女らと積極的に繋がりを作っていってください。
 以上、地域移行のジェンダー格差と女性患者が性的被害の危険にさらされやすい懸念についてお伝えしました。筋ジス病棟の中で女性をからめ取るこのような問題を考えることなしには、女性の地域移行や入院生活の現状は良くなりません。これにはどのような制度化が必要なのでしょうか。みなさんと考えたいです。


UP:20191202 REV:
こくりょう(旧国立療養所)を&から動かす  ◇生を辿り道を探る――身体×社会アーカイブの構築  ◇病者障害者運動史研究 
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