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「熊本地震被災者支援事業で共に働く発達障害当事者――合理的配慮のジレンマと可能性」

山田 裕一 2018/11/17〜18 障害学会第15回大会報告一覧,於:クリエイト浜松

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last update: 20181101

キーワード:発達障害、熊本地震、合理的配慮

報告要旨

 2016年4月16日未明。最大震度7の地震が襲った。一度目の最大震度7の地震から2日もたたず、さらなる巨大地震が襲ったことは前代未聞であり、「前例がない」「予測ができなかった」と多くの人々が口にし、そのような中で、熊本県発達障害当事者会Little bitのメンバーを初め、多くの発達障害当事者は以下のような状況に陥っていた。

1.悩みや苦しみの内容が「感覚過敏」「情報の適切な取得」「コミュニケーションエラー」「ルーティン維持の困難性」等に起因しているため、深刻な問題と認識されにくく、話したとしても共感されにくい。
2.普段利用していた病院をはじめとしたケアを行う場所も被災し、利用ができないかより支援の優先順位を表現できる当事者のケアが優先されがち。
3.相談支援専門員等は担当利用者の安否確認にも数か月を要するような状況であっため、福祉サービス等を普段から利用していない当事者の相談する場所が更にない。
4.避難所では、感覚過敏やコミュニケーションの課題などで、大きなストレスを抱える上に、ストレスを自覚しにくく、いきなり倒れてしまうことも少なくない。
5.
 以上のような状況の中で、自らの苦悩を「どうせ話しても無駄」と口をつむぐようになり、自傷行為等によってかろうじて自分を保っていた 。そんな状況下に更に追い打ちとなったのは周囲の人々から聞こえてくる発達障害当事者に対する以下のような認識を持つ者が少なからずいた。
1.もっと大変な状況にある人がいるのに、よくわからない内容のつらさやきつさを訴え、わがままな要求を周囲に求めている。
2.身体的な健康状態は問題がないのにもかかわらず、役に立たたず、周囲に負担をかける存在になっている。
3.避難所等で一緒にいると騒いだり暴れたりするのではないか。

そんな中、熊本県発達障害当事者会 Litte bitは共助活動を開始する。その延長線上の活動としてよか隊ネットと協力しながら、車中泊調査・炊き出し・夜回り相談への参加
・「聴いてもらう側」から「聴く側」になる体験
・障害者の○○さんではなく同じ目標を共有した仲間
発達障害の人って不思議だけど面白いという認識になる。
そのうち、みなし仮設の相談支援事業へと発展し、複数の発達障害者を相談員等として共に働く職場が誕生した。

特徴
1.こまめに休むことが許される
2.特性で苦手なことについての配慮をできるだけ考慮する上司
3.

しかし、必ずしも上司のトップダウンではなく、周囲の人々の以下のような意見に影響される。
1.なぜ障害者の方がより配慮されるのか
2.
3.

その間の葛藤がある。
私はその間に入って整理することを模索している。

 本報告では、
 なお、本発表を行うにあたり、プライバシーの保護、人権の尊重等の倫理的配慮を行っている。

1 山田裕一(2016)「合理的配慮の再検討―熊本地震における発達障害当事者の苦悩と社会的排除の構造から考える」障害学会第13回大会の内容を加筆修正



*作成:安田 智博
UP: 20181101 REV:
障害学会第15回大会・2018 障害学会  ◇障害学  ◇『障害学研究』  ◇全文掲載
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