障害者の自立支援活動に従事した経験を持つ、茨城県CILほにゃら・いろはの障害当事者スタッフ3名のグループは2017年度(第37期)ダスキン障害者リーダー育成海外研修派遣事業(ミドルグループ)の助成を受け、同年11月11−24日にニュージーランド(以下、NZ)の3都市を訪問し、約20団体(障害者団体・政府機関(障害局)・人権委員会・事業所・学校等)話を聴いた。また特に制度改革設計に参加した障害当事者の一人からここ20年ほどのNZ障害者施策の変化を踏まえたライフ・ヒストリーを5時間かけて聞き取り、クライストチャーチ他で2012年からモデル事業が行われているEnabling Good Lives(EGL)という複数の省庁にまたがる自立支援プログラムを含む制度改革の取組み(システム・トランスフォーメンションと呼ばれる)の動向について学んできた。
ニュージーランドは2014年に第1回目の「建設的対話」(政府審査)を終えており、独立したモニタリングの仕組みを担う三機構の一端を障害者団体のネットワークが担っている(他の2つは人権委員会とオンブズマン)など障害者団体の政治的参画において最も先駆的な国の1つと思われる。本報告は小野浩編著(2013年)『障害のある人が社会で生きる国 ニュージーランド:障害者権利条約からインクルージョンを考える』(ミネルヴァ書房)が伝える以降の障害者施策の動向を障害当事者の視点を通して広く伝え得る貴重な機会になると考える。